2017年10月15日日曜日

LIVE AROUND 2017〜World Tour→J=J Day Special〜 (2017-10-10)

吉越浩一郎さんが『「残業ゼロ」の仕事力』『デッドライン仕事術』をはじめとする多数の著作で訴えていたのが、仕事に期限をつけることの重要性である。これは又聞きだが、吉越社長から残業を禁止されたトリンプ・インターナショナル日本法人の社員たちは家に仕事を持ち帰っていたらしい。一部の社員がそうしていたのか、それが普通だったのかは分からない。でも現実は彼が本に書いていたほどにきれいには行っていなかったであろうことは想像に難くない。ビジネス書の著者によるボーストを額面通りに受け取ってはいけない。ある経営者は、私には短時間の面接でも応募者がウチに向いているかどうかを見抜く野生の勘があるなぞと本に書いていた。私は彼の最終面接を受けて入った会社があまりにも合わず、一ヶ月で辞めた。節穴しか付いていないのに俺には野生の勘があると大ボラを吹いて、それを出版物として世にばらまいて恥じないくらいの神経じゃないと、事業の運営なんぞは務まらない。奴らが本で言うことには偶然と必然の区別がない。個人的な体験と法則の区別もない。所詮、その程度の頭しか持っていない。それはともかくとして、明確な時間制限があった方が仕事を速く進めやすいというのは、一般論としては正しい。

ご存じのように10月10日はJ=J Dayである。10月10日だから、じゅう、じゅうでJuice=Juiceの日。9月10日に℃-uteがやっていた℃-uteの日のように、語呂合わせから生まれた記念日である。私は昨年、一昨年に続いて三回目の参加となる。今年の10月10日は、三連休の翌日である。休みの取得や早退が難しい日取りだ。しかしこちらの事情は関係ない。我々が合わせなければならないのである。私は、この日にやっておかないとまずい仕事があった。午後半休を取得していた。12時すぎに会社を出る必要があった。タイム・リミットの効果もあって気が引き締まり、時間までに懸案を片付け、事なきを得た。店に入って昼飯を食っている時間はないので、ローソンでLチキ旨辛(レッドから改名して分かりにくくなった)とLチキ用のバンズと一本満足バーとGRAND KIRIN IPAを買って、電車で飲んで食った。周りが素面で日常生活を送っている中、自分だけが酒を飲んでいるのが愉快だった。本(“Brave New World”。14年間の積ん読を経てついに読み始めたが、面白くない)を読むつもりだったが、寝てしまった。

たどり着くべきなのが東京テレポート駅であることはMC松島さんのEP『セルアウト』の一曲目『東京テレポート』で知っていたし、「Zepp Tokyoと Zepp Diver City Tokyoは まったく別物 だから気を付けろよ」というストリートの知識も二曲目“Zepp Tokyo”から得ていた。だから一切の迷いなく、Zepp Diver City Tokyoに着いた。近くにあったガンダム像の前で、東京都に住むギャンブル依存症の無職・中島(仮名)と合流した。今年に入ってから彼を何度かHello! Projectの現場に招待している。私が彼を呼ぶのにはいくつか理由がある。一つだけ言うと、私は彼の文章が好きだし、私とは視点が異なるので、彼が口頭で、また文章で語るHello! Projectに興味があった。私の脳内にあるHello! Projectと、彼の目に映るHello! Projectは違う。彼には私が言えないことが言えるし、私が書けないことが書ける。それが何なのかを確認したいという願望があるのだ。

開場が17時半、開演が18時半なのだが、グッズ販売は14時半に始まる。それが多少の無理をしてでも12時に退勤した理由である。日替わり写真はどうしても買っておきたい。これを書いている10月15日の最高気温は16℃くらいだが、10月10日は10℃くらい高かった。半袖一枚で十分だった。日差しを浴びながら、なかなか進まない列に並んだ。日替わり写真の宮崎さんと宮本さん、ツアーTシャツ、コレクション生写真4枚を買い終えたのが16時24分。2時間近くかかった。この間、話し相手がいるのは助かった。中島と、刑務所にポルノの差し入れは可能だが女子高生モノは没収されるらしい(参照:井川意高、堀江貴文『東大から刑務所へ』)、長野刑務所のメシはうまいらしい(参照:収監中の堀江貴文さんのメルマガ)といった知的な会話に興じたり、Twitterのタイムラインをさすったり、アイドル見るのが呼吸さんの最新記事を読んだりして過ごした。日替わり写真はこの場でしか買えない。それ以外は通販で買える。日替わり写真さえなければこんな行列に長時間並ばなくて済むのだが…。地下のコイン・ロッカーはまだ大半が空いていた。持参してきたピンクの宮崎Tシャツと買ったばかりのツアーTシャツのどちらを着るのがいいと思うかと中島に聞いたら、いやこっちでしょうと宮崎Tシャツを指し示した。「そっち(ツアーTシャツ)という選択肢はないでしょう」。

セブン・イレブンでサントリー角ハイボール缶<濃いめ>500mlを買って、ガンダムの前で座り込んで、飲んだ。アイドルさんがあのガンダムくらい大きければみんな見えるし、飛んでいる奴が多少いても気にならないよね、という話をした。いい感じにアルコールが回ってきた。目の前のフード・コートに入って、梁の家という韓国料理屋のスンドゥプ・チゲ定食850円を頼んだ。定食というわりにご飯とキムチの切れ端がちょびっと付いているだけだったが、フード・コートにしてはチゲが随分とおいしかった。

トレイを下げて会場前に戻ったのが17時35分。呼び出されている番号はまだ170番までだった。私たちの番号は1,370と1,371。番号の進み方もゆっくりだったので、まだまだかかりそうだった。私は芝生に寝っ転がった。Zepp Diver City Tokyoは付近の空間にゆとりがあって、ストレスを溜めずに待てる。気持ちよい。このまま寝ていたい気分だった。この程度で酔ってるんですか、という感じで中島は笑った。アルコール依存症の彼にとって、空っぽの胃に流し込むアルコール9%のハイボール500mlは水と同じだった。17時56分時点で、1,000番までと2階席の全員が呼び出されていた。私にとってZepp Diver City Tokyoは初めての会場だった。ステージがあって、フロアに段差があって、段の区切りごとに手すりがあって、というライブハウス(和製英語)のつくりだったが、ライブハウス(和製英語)では体験したことのない広さと開放感。あれだけ広い空間にみんなが立っているのは野外フェス的な雰囲気があった(私は野外フェスには行ったことがない)。

当然ながら、約1,369人が入った後だったので、もう後方しか空いていなかった。人の間に隙間はあったので、強引にかき分けて前に行くことも出来なくはなさそうだったが、それはHello! Projectの現場ではお行儀がよくない。私は紳士なので、それはやりたくなかった。後ろから3割くらいの位置に立ってみた。悪くはないが、しっくりこない。中途半端だ。かといって前方に陣取るのは望めない。じゃあどうする? 私が出した結論が、いちばん後ろに行くということである。鑑賞コンセプトの絞り込みが肝要なのである。我々はアイドルさんの技量についてエラそうに語るが、我々も楽しむ技量が試されているのを忘れてはならない。それは席が後ろのとき、整理番号が大きいときにこそ問われる。実は昼にビール、開演前にハイボールを入れたのも今日の整理番号を見ての判断だった。今日はアルコールを入れて、いちばん後ろで飛びまくって、叫びまくって、多少ヤケクソになって楽しむ。自分から楽しみに行く。そう決めた。

その判断は、大正解だった。なるべく前に行こうとして中途半端な位置から観るよりもコンサートを何倍も満喫できたと思う。曲中は各メンバーさんのソロ・ラインに合わせて「ゆかにゃ!」「朋子!」「紗友希!」「佳林!」「あーりー!」「瑠々ちゃん!」「やなみん!」をほぼ全部叫んだ。トークのセグメントでも、普段よりもためらいなく「エー?」「フー」「オー」といった声を出したし、よく笑った。2016年6月26日を思い出す。あのときも同じように番号がよくなかったので、酒を飲んで、いちばん後ろで飛びまくった。ここで何をやっても何を言っても、演者には聞こえないしまともに見えない。だからこそためらうことなく好き勝手やれた。あといちばん後ろは他の場所と比べて観客が少なくて、動いても周りにぶつかる心配がなかった。ある程度、身動きが取れた方が楽しさを身体で表現できる。この位置から飛んで一瞬だけ見える、びっしり客が埋まったフロアとステージ。その光景は爽快感があった。

中島も、Juice=Juiceのコンサートが二度目にも関わらず、ためらうことなく声を出せていた。二回目であれだけ出来れば言うことはない。彼はそれに加えて海外ツアーの思い出を語るトークのセグメント中に「それはそう」「そんなことないよ」等、Twitterの馴れ合いのような合いの手を入れていた。

ステージとの距離は遠かったが、Juice=Juiceは会場の前にそびえ立つガンダムのように大きく見えた。と書いたら文章としてはきれいだが、さすがにそういうわけにはいかなかった。肉眼(+メガネ)では誰がどこにいるかが分かる程度で、細部は分からなかった。その分、ステージの後ろに設置してあるモニターが巨大かつ高精細で、非常に助かった。メンバーさんの名前をシャウトする際には誰が歌っているかをモニターで確認することが多かった。ただ、会場の印象としてはモニターがあるのを除けばあくまで大きなライブハウス(和製英語)だった。座席のある会場でのJuice=Juiceコンサートと比べて、演出は簡素であった。

こんなに大人数が入る立ち見の会場は私にとって初めてだったが、Juice=Juiceの皆さんにとっても同じだった。彼女たちは口々にステージから見る観客の多さへの驚きを表していた。開演前にフロアの様子をモニターで見ていたという植村あかりさんは(「どアップじゃないから安心して」と付け足す)、(1、2、3…と数えて)10列毎くらいに映ってから全体が映っているのを見て、こんなにいるんだとびっくりしたとおっしゃっていた。

地団駄ダンス』が完成されていた。私は4月1日の福岡公演で単独コンサートでの初披露に居合わせたのを皮切りに、この曲を結構な回数、観てきた。ハロコンでも観たしね。今日がいちばん熱く、会場が一体となっていた。ステージとフロアの温度差がなかった。もちろん披露回数を重ねたことでJuice=Juiceと我々の双方にオートマティズムが生まれたのが最大の理由だが、メンバーさんたちが法被を着たことの効果はでかい。お祭り感が強調される。空間がパッと華やぐ。私は福岡で初めてこの曲を体感して、こう書いていた。
…次にJuice=Juiceが目指すのは単純な拡大路線ではなく、表現の幅を広げるために今までとは毛色の違う楽曲に挑戦していくことなんだな、と合点した。夢を叶えて目標を喪失し、次にどこに向かえばよいのかよく分からなくなると終わりの始まりだ。彼女たちが常に何かしらの難しい課題に向き合っていくのは好ましいことだ。植村あかりさんは『地団駄ダンス』をもっと盛り上がるように育てていきたいと言っていた。彼女たちならきっとこの曲をRakimのようにMove the Crowdするまでに高められる。ついて来られるのか試されている我々。理解できないフェイク野郎はバレバレ。
MISSION 220という数値的な目標を達成した彼女たちは、次は質的な課題と向き合っているのだと私は解釈していた。今日のJuice=Juiceは紛れもなく『地団駄ダンス』でMove the Crowdしていた。彼女たちはこの半年間でこの曲の表現を磨き上げた。私たちはついて行った。10月10日、2,000人がこの曲で一つになった。この日にこの曲でぶち上がった観客は、自らがリアルであることを証明した。MISSIONは大成功である。

今日の私がどれくらい乗っていたかというと、“Magic of Love”の恒例チャント「ここだよ朋子!」の前に「せーの!」と叫び周囲のチャントを誘導するほどのリーダーシップを発揮した。『地団駄ダンス』では某最前おまいつがハロコンで発したとされるチャントのように「上を見て 下を見て」の箇所で「オレを見てー オレを見てー」と叫びたくなった。

Wonderful World”をみんなで歌えたのが嬉しかった。この曲が合唱付きで披露されたのはもしかして昨年11月の武道館公演以来じゃないか? 8月31日の宮本佳林さんの復帰試合でも一曲目に追加されていたけど、そのときは我々の歌唱パートがなかった。来月の武道館でもセットリストに入るかな? また武道館で歌いたい。今日はリリックの一番が日本語、二番が英語で、ワールド・ツアーの日本公演という特別感があった。アンコール明けの3曲目となったこの曲がコンサートの最後かと思ったら、『未来へ、さあ走り出そう!』が始まった。“Wonderful World”で終わっていた方が、収まりはよかったと思う。

コンサートの中盤に、海外公演の思い出を写真で振り返るセグメントがあった。今日の公演はいずれ円盤に収録されるだろうからその詳細を思い出してここに記録する意味を感じないのだが、「スケベ!」と「100キロ以上太るのは才能。普通はそんなに太れない」が印象に残った。前者は、フランスでの写真。Juice=Juiceに並んで写り込む淑女。関係者かと思いきや、撮影中にも関わらずガツガツ話しかけてきた現地のおばさんだという。こんな可愛い子たちがいるのが信じられないと言っていたが、膝を出し過ぎだと苦言を呈してきた。「膝を出すのやめようかな」と誰かが言うと、当然ながら私たちがエーイングを浴びせる。そこで高木紗友希さんが見せた切り返しである。「膝まではよしとしましょう」と金澤朋子さんは言っていた。後者は、ドイツでの一枚。Juice=Juiceと一緒に集合写真に入った中に、ふくよかな少女。体重が100キロ以上ある。本人が言っていたという。そこで宮崎由加さんが残したのがこのパンチライン。

Juice=Juiceの、コンサートを通しての力配分と緩急の付け方に感嘆した。以前、何かのインタビューで、サッカーの井原正巳さん(当時、横浜マリノスに所属)がフォワードは89分ダメでも残りの1分で点を取ればヒーローになれるが、ディフェンダーは89分守り抜いても最後の1分で点を取られれば戦犯になるという旨のことをおっしゃっていた。そういう、押さえるべき勘所というのはポジション毎にもあるだろうし、競技毎にもあるんだろうと思う。私が従事する賃金労働でも、職種によってそういうのはある。今日のJuice=Juiceは、コンサートという土俵で、勘所を完璧に押さえている感じがした。自分たちの動きだけではなくて、我々の反応も含めて、コントロールしているというか。コンサートが身体に染み付いているというか。そういう頼もしさを彼女たちから感じた。

終演してから会場の建屋を出るまでに私は水500mlを飲み干した。ZEPP DIVER CITYと東京テレポート駅の中間くらいにある、自販機が併設されたベンチでしばらく中島と歓談した。そこでも水500mlを飲んだ。ベンチから見えたSUNTORYの本社とおぼしき建物は、21時くらいになってもまだ半分くらい電気が付いていた。「来年の10月10日も空けておいてください。前後に大阪もあるかもしれないし。分からないですけど」と高木紗友希さんはおっしゃっていた。一年後の今日は水曜日だ。私はJuice=Juiceを観るために仕事を調整しているだろうし、SUNTORYの奴らはコンサートが終わっても会社にいるんだろう。