2020年10月11日日曜日

The Ballad (2020-09-27)

エア・ウィーヴは最高(ヤクブーツはやめろのフロウで)。家に欲しい。毎日エア・ウィーヴで寝たい。とぽすのプレミアム・ルームに採用されているエア・ウィーヴ四季布団。家の布団で寝たときよりもスッキリした目覚めを得られる。泊まる度にそう実感するから偶然や思い込みではない。検索してみたら約十万円。間違いなく値段分の価値はあるが、在籍する会社による素晴らしいコスト(人件費)削減の影響を真正面から食らっている今、おいそれと買うわけにはいかない。

朝の大浴場を堪能。チェック・アウト。仙台駅。新幹線。改札内のコンヴィニエンス・ストアでレーコーを購入。近くのソファで飲む。BOOK EXPRESSで石井遊佳さんの『百年泥』を購入。移動中に読む。仙台9時5分発、新青森10時52分着。人生で最初で(十中八九)最後の青森県。事前にジョルダンで検索したかぎり、新青森駅から宿とコンサート会場がある青森駅までは在来線で5分で行けるはずだった。が、本数が異常に少ないらしく、今の時間だと千何百円もする特急しかない。バスに乗る。バスもそれを乗り過ごすと当分なさそうだった。ふるかわという停留所で降りるまでほぼ老人と病院しか目にしなかった。たまたまバス停のすぐ近くに今日の宿があった。まちなか温泉 青森センター・ホテル。荷物を預ける。

11時半頃、今日の会場、リンクモア平安閣市民ホールの場所を把握。さて、昼食。のっけ丼というのが名物らしい。好きに具を乗っけられる海鮮丼。株式会社青森魚菜センター本店というのがのっけ丼の拠点のようだ。一度は並んだ。観光客的な人がこぞって来店している雰囲気があったのと、中を覗くと具を乗っけるときに毎回色んな紳士と対面して頼まないといけないっぽい(実際のところは分からない)のとで、億劫になってやめた。朝市寿司という店に入りかけたが、Googleのレヴューで評価が異常に低い。いくつか読んでゾッとした。ふらっと入らなくてよかった。最終的に居酒屋弁慶に入った。弁慶海鮮丼1,480円とサッポロ黒ラベル(瓶)480円。税込み2,156円。高すぎず、味も悪くはなかった(※1)。

私は青森県を訪れることに少し不安があった。お隣の秋田県では他県からのお客様お断りという貼り紙を出している飲食店が多いらしい(※2)。政府がGO TOキャンペインで全国的に旅行を促進しているにも関わらず。呪術信仰に頼って生きているような人々が、2020年の日本にもまだ一定数はいるのだろう。そうでなければそのような貼り紙を掲示するという発想には至らない。Twitterを見るかぎり、田舎ほどコロナ・バカ騒ぎとの親和性が高く、神経質になっている人が多そうな印象。仮に秋田県ほどではないにしても、よそ者が行ったら白い目で見られるのではないか。コンヴィニエンス・ストアで支払いの際にPASMOでと口を滑らせようものならその場で地元民に取り囲まれ、殴る蹴るの暴行を加えられるのではないか。

それは杞憂だった。他県民を排除する飲食店は見当たらなかった。通行人のほぼ全員がマスクを着けてはいるものの、ストリートには刺々しい雰囲気はなかった。青森駅前のパサージュ広場ではバンドの生演奏を無料で観覧できる催しが開かれていた。コンヴィニエンス・ストアでPASMOを使っても殺されなさそうだ。秋田は知らん。

開場:13時 開演:13時45分

青森公演に出演するメンバーさんは

  • 石田亜佑美さん
  • 森戸知沙希さん
  • 小野瑞歩さん
  • 西田汐里さん

これまでのバラード・ハロ・コンは8人が標準だった。4人となると、単純に考えて一人あたり倍の出番が期待できる。人数が減ったからといってコンサートの尺が半分になることはないだろう(※3)。コンサートにおける小野瑞歩さんの密度が12.5%(8人のうちの1人)から25%(4人のうちの1人)になるということだから、マジ興味ある。さすがに埼玉から青森までこのために移動するのは躊躇するが、前日に仙台に行ってそこから移動すれば効率がいいのではないか。ついでという感じで(※4)。そう考えて仙台と青森の公演に申し込んだ。

昨日の仙台公演を鑑賞して痛感したのは、とにかく単純に歌が上手なメンバーさんが何人かいないと成立しないということ。曲はバラード。歌うのは一人。演出は最小限。生演奏ではなくカラオケ。歌一本の勝負。昨日は井上玲音さんの歌声には何度か唸らされた。彼女がいなければどうなっていたことか…。その意味で、今日は西田汐里さんがいるのが楽しみだった。私は彼女を2017年の演劇女子部『僕たち可憐な少年合唱団』で初めて知り、その声と歌に魅了された。そのときに私はこう書いた

彼女が一人で歌うとそこは西田汐里ワールドになる感じがした。

そこなんだと思う。歌が上手なとさっき書いたけど、より正確に言うと、歌で自分ワールドを作れる人。それがソロ歌唱のコンサートで輝けるメンバーさんの条件。音程とかリズムとか声量とかはもちろん大事だけど、もっと大事なのは、歌を通して自分のヴァイブスを表現し、会場中を包み込むこと。文章でもさ、誰々節ってのがあるわけじゃない。同じ内容や題材を書いたとしても。歌にも近いことがあると思う。

今日の出演者では、西田汐里さんが自分のワールドで会場を満たせる唯一のメンバーさんだった。声ひとつで、歌ひとつで観衆を引き込む強さは井上玲音さん以上かもしれない。ハロー・プロジェクトのメンバーさんが皆それぞれ魅力的なのは言うまでもない。しかし殆どのメンバーさんにとって、歌一本のショー・ケースというのはその魅力を存分に発揮できるフォーマットではない。かなりのハンディキャップを課せられた状態。ハロー・プロジェクトはみんな歌が上手いと言っても普段は集団で踊りながら細切れに歌っている。それぞれがプロのソロ歌手として訓練されてきたわけではない。

西田汐里さんは冒頭のコメントで、今日の四人では私以外の三人が昨日の仙台公演に出演していた。私だけ仲間外れ。ずるい的なことを言って笑いを誘っていた。が、すぐに歌だけでなくトークでも機転の効いたコメントを連発し、存在感を示した。ステキだったのは他のメンバーさんの歌唱を褒めていたこと。森戸さんの裏声が好きで、私も出来るようになりたいだとか(出来てます、と森戸さんは恐縮していた)、小野さんは歌うときに表情を作っているから私も見習って顔を動かしたいとか。

昨日は石田亜佑美さんが務めた司会進行役が今日は森戸知沙希さん。いい味を出していた。何度も噛みまくって、あわあわしている感じの仕草。和む。青森のことを調べてきたという森戸知沙希さん。地元の人に挙手を呼びかける。少数…。と笑う。ピラミッドがある。工藤さんが多い。イギリス・トーストが有名。それを作っているのも工藤さん。200種類以上。他にも調べたがブログに書く。

一人四曲になって私が嬉しかったのは、小野瑞歩さんの『カブトムシ』を聴けたこと。私はそこまでジェイ・ポップを知らない(それも私がこのコンサートをさほど楽しめない一因かもしれない)が、aikoさん、椎名林檎さん、宇多田ヒカルさん、Dragon Ashさんが世を席巻していた頃は追っていた。コンパクト・ディスクをよく買ったり借りたりしていたし、やまだひさしさんの『ラジアン・リミテッド』(TOKYO FM)を聴いている時期もあった。その後はヒット・チャートの世界から離れ、日米のヒップホップをディグった。aikoさんのことはデビューから『暁のラブレター』くらいまでは追っていた。オールナイト・ニッポンは初回から毎週聴いていた。『カブトムシ』は私がリアル・タイムでよく聴いた数少ないジェイ・ポップ曲なので、2020年になって小野瑞歩さんに歌ってもらえるのは感慨深かった。…って、書いて気付いたけどそれがまさに私が揶揄していた接待カラオケやんけ。

トーク・セグメントでは昨日の二公演に続いて今日も秋の味覚の話だった(※5)。飽きた。聞くのがきつかったので、メンバーさんには出来れば口を滑らせておちんちんと言ってほしかった。今日のメンバーさんだったら誰が言っても嬉しかったな。西田汐里さんはそういうの得意そうだよね。コラー、それは違うでしょ。たしかに口に入れるものではあるけど(※6)…と誰かが突っ込むまでの流れを定番にすればいい。そういうお笑い芸人さんでいう営業ネタを仕込んでもいいんじゃないか。そうでもしないとさ、寝ちゃうよこのコンサートは(※7)。見方によっちゃ、アイドルさんの子守唄で眠れる稀有で贅沢な場ではあるけど。

小野瑞歩さんがこういうことを言っていた:このツアーを通して、自分の想像力のなさを発見した。割り当てられているのが恋愛の曲ばかり。同じ好きという言葉でも色々な意味がある。普段は、歌詞を解釈するときはつばきのメンバーと話して(メンバーが言うことに)そうだよねと言っている。いざ自分で考えるとなると難しい。もっとたくさんドラマや映画を観た方がいいのかなと思った。

ーこのコメントはちょっと可笑しかった。なぜなら他のメンバーさんは恋愛を経験済みだけど自分(小野さん)は未経験だから分からない的な含意が感じられたからである(おそらくご本人にそういう意図はなかっただろうが)。

ファミリー・マート青森駅前店でアイス・コーヒーを買い、駅前の広場に腰掛けて飲んだ。夜公演まで時間があったので商店街を散策していると、ふとパサージュ広場から流れてくる音楽が気になった。広場に入ってしばらく聴いていると、どんどん引き込まれていった。50代、60代とおぼしき紳士たちの4ピース・バンド。V-projectさん。木訥な津軽弁の曲紹介。淡々と繰り広げられるドープな演奏。思わず身体を揺らす私。さっきまでのバラード・コンサートになかったグルーヴ。ハロー・プロジェクトよりもドープなプロジェクトをまさかココで見つけるとは。おかげで目が覚めた。夜公演を堪えるだけの活力を補給することが出来た。楽器が弾けるジイさんはカッコいいよなあ。

開場:16時半 開演:17時15分

係員の若者によるアルコールのスプレイ噴射が雑で、服にかけられてイラッと来た。服にかけんじゃねえよと声に出そうになったが、みっともないので抑えた。我々は常に、いい歳をして遠方まで少女を観に来ているという弱みを握られている。

森戸知沙希さんが喋りで醸し出す独特の空気は夜公演でも健在。みなさんびっくりしましたか? 私こんなんなんですと彼女が言うと、ヘッズはさらにドッと笑った。彼女が笑いを堪えながら披露した石田亜佑美さんに関するちょっとしたエピソードが面白かった。曰く:(おそらく昼公演と夜公演の間に)今日の四人で買い物に行った。青果市場のりんごが東京で買うよりも安い。まあ私は東京の人間じゃなくて栃木の人間なんですけど。私は三つくらい買ったんですけど、石田さんは五個も買った。五個で420円。石田さんは煎餅のみみも買っていたけど、煎餅は買っていなかった(※8)。

西田汐里さんはつばきファクトリーさんのYouTubeチャネルにドロップされた小野瑞歩さんの『I LOVE YOU』を寝る前に聞くことがあるので、生で聴けてよかったと言っていた。小野さんはそれを聞いてとても喜んでいた。

9月29日(火)に二十歳になる小野瑞歩さんにとって、十代最後のコンサートだった。小野さんがそう言うのを聞いて、そういえばそうだなと私は気付いた。彼女の十代の終わりをこうやって見届けることが出来たという点において、青森まで来た意味はあった。というか、そう自分に言い聞かせる。当然、お誕生日当日のバースデー・イベントも観覧する。

私の前にいた五十代前半くらいの紳士がペン・ライト二本を持ってコンサート中ずっと妙な手首のスナップを利かせた指揮者的なキモい動き(なおリズム感ゼロ)をやり続けていて気が散った。こいつもそうだけど、中には両手で計8本のペン・ライトを掲げているキチガイもいた。メンバーさんの色に光らせたペン・ライトを振る以外の音楽の聴き方を知らないんだろ。だからバラードだろうが何だろうが常にペン・ライトを振るし、ペン・ライトの数は多ければ多いほどいいという単純な思考しか出来ない。手に負えない紳士たち。短髪、ペン・ライト複数本所持、小太り、フィーチャー・フォン利用者。というかさ。メンバーさんはこのコンサートでヘッズが自分の色のペン・ライトを光らせてくれるのは表向きには嬉しいと言うじゃん。別にその言葉に嘘もないだろうとは思う。けど、リズムを取る上で邪魔じゃないのかな? 田村芽実さんのコンサートだと、ペン・ライトは禁止なんだよね(※9)。歌を聴かせるというコンセプトとは相性が悪いんじゃないだろうか。

夜公演後の夕食は、この遠征を締めくくる意味でもいいモンを食おうと思って南大門という焼肉店に入った。食いながらiPhoneでDAZNを開き、19時キックオフの柏レイソルさん対横浜F・マリノスを観た。


※1 後から海鮮丼の写真を見返して、私がアレルギーのある鯛が入っているのに気付いた。普通に食べてしまった。

※2 もちろん、統計データとしてではなく、個別の例としてそういう報告を見ただけなので、全体としてどうなのかは分からない。

※3 公演の数日前には各メンバーさんが4曲ずつ(8人のときの2倍)ソロで歌うことが明らかにされたが、ファンクラブ先行受付時点では発表されていなかった。

※4 日本地図を見れば分かるが、ついでに移動する距離ではない。

※5 石田亜佑美さんはサツマイモが好きで、味噌汁に入れるのが好き。サツマイモや里芋が入ったサツマ汁が好き。西田汐里さんは炊き込みご飯。おこげが好き。全部おこげになってほしい。小野瑞歩さんは梨が好き。夏から食べていたけど秋が旬なので秋の梨をたくさん食べたい。

※6 昔のくりぃむしちゅーさんのオールナイト・ニッポンで、ニコチンとポコチンの違いは何ですか? というリスナーからの質問に上田晋也さんが答えようとして、ニコチンは口に入れる…いや、ポコチンも口に入れるな。ニコチンは中毒性がある…いや、ポコチンも…となったのが面白かった。

※7 昼にビールを飲んだせいもあるのか、昼公演はちょっとだけ寝た。

※8 可笑しさを理解するには、石田亜佑美さんが倹約家として有名である点と、森戸さんにとって石田さんは先輩であるという文脈を知っておく必要がある

※9 田村芽実さんは以前Instagramのストーリーで、申し訳ないけど私のコンサートでペン・ライトはやめてほしい的なことを書いていた。で、その効果もあるのか実際に彼女のコンサートでペン・ライトを振る人はいない。