2020年10月10日土曜日

The Ballad (2020-09-26)

百五十万円。これは2020年にコロナ・バカ騒ぎ(※1)による業績悪化を理由に勤め先が実行した休業、賞与の削減、残業禁止によって私がこれまでに失った収入である(※2)。年末には二百万円を超えるのが確実だ。仮にまったく同じ消費活動をしていれば銀行の預金残高が今よりも百五十万円多かった。そう考えると少しつらくなる。もちろん皆さんご存じのように根が浪費家に出来ている私にそんな堅実な貯金が出来ていた可能性は限りなくゼロに近い。理論的にはあり得たというだけの話である。しかし、好きな商品や娯楽に自分のお金を使うのと、そのお金がそもそも収入として存在しないのとでは大きな違いがある。コロナ・ヴァイラス自体には私も、親も、同僚も、知人の誰もが罹患していない。明らかな不摂生、不養生をしている者も含めてである。もういい加減、理解しないといけない。日本国民の殆どにとって問題はコロナ・ヴァイラスではなくコロナ・バカ騒ぎだ(※3)。ステイ・ホーム(笑)、自粛(笑)といった茶番に付き合わされている間に、多くの人々が職を失った。収入が減った程度で(今のところ)済んでいる私はまだ恵まれている。

悪いことばかりではない。コロナ・バカ騒ぎの副産物として、在宅勤務を今後も続けられることになった。これは大きな勝利である。通勤時間がなくなった。片道一時間半なので、一日三時間のゆとりが生まれた。朝は心ゆくまで寝られるようになった(もちろん一定の時間までには起きないといけないが、夜更かしをしなければ目覚まし時計は不要)。労働後のジムも格段に行きやすくなった。終業時点で会社にいるという物理的制約がなくなったからだ。

仙台と青森でのハロ・コン(後述する理由により今回のコンサートをそう呼んでいいのか分からないが)に申し込んだ。仙台はともかく、青森は日曜日。翌日は労働。日曜日のうちにお家に帰ってくるのは難しい(調べてみたら不可能ではなさそうだったが、ギリギリだった)。でもインターネットにつないでラップトップをいじれる環境があれば業務が成り立つ今の状況なら何とかなる。日曜は青森に一泊して、月曜の午前は新幹線で労働に従事することにした。新幹線は、通常であれば選択肢ではない。高すぎる。トク50とかいうキャンペインで半額になっていたから新幹線にした。宿はGO TOキャンペインで35%引きになった(※4)。ありがたいが、ここで得をした金額を遙かに上回る額の収入が減っていることを忘れてはいけない。

9月26日(土)
やまびこ(全席禁煙)125号
大宮(埼玉)(8:06)~仙台(9:38)
5,170円
駅前人工温泉 とぽす 仙台駅西口
[男性専用]プレミアムルーム
2,860円

9月27日(日)
はやぶさ(全席禁煙)5号
仙台(9:05)~新青森(10:52)
5,610円
まちなか温泉 青森センターホテル
[禁煙]シングル(ベッド幅110cm)天然温泉付ホテル
3,055円

9月28日(月)
新青森(8:29)~大宮(埼玉)(11:18)
8,360円

仙台には労働の出張でたまに来ることがあったが、ここ半年以上は足を踏み入れていなかった。コロナ・バカ騒ぎを受けて会社で出張が原則禁止になった。好きで出張をしていたわけではないので、それは別にいい。だが、仙台の街は少し恋しかった。何があるというわけではないが、駅前の商店街が好きなんだ。お気に入りのカプセル・ホテル、とぽす。お気に入りの飲食店、福光。前者はこの旅で泊まることが出来るが、後者は未だにコロナ・バカ騒ぎの余波で休業を続けている。この時期になってまだ開いていないのは心配になる。どうか廃業だけはしないでくれ。お宅の大冒険ハイボール、枝豆、ハラミをまた思う存分味わいたいんだ。

夏場はダニ(という確証はないが、たぶんそう)に苦しまされる。彼らに睡眠を妨げられることなくこの季節を乗り切ることが出来ない。毛布やシーツを定期的に洗濯し、ダニトリーゼを配備し、ナチューヴォを噴射してもなお、腕や脚に出処不明の赤みを帯びた跡が発生する。新幹線の切符は勢いで購入したため、時間の検討が不十分だった。5時半に起きないと間に合わないとジョルダンの乗り換えアプリで検索して知ったのが昨夜。しかも最近、寝付きが悪い。一抹(イチモツではない)の不安。眠れないまま布団で目を瞑る→もう朝かと思い起きると24時→また寝る→5時20分に正式な起床。酷い睡眠だったが、寝坊はせずに済んだ。

早めの時間に仙台入りした私は、とぽすに荷物を預け、タリーズ・コーヒー仙台中央通り店でアイス・コーヒーを飲み1時間半ほどダラダラした。(何だそれは。このために私は5時20分に起きたのか?)BIKINI TAPA+でモーニング(ここのホットドッグとお代わり自由のコーヒーが仙台で一番のモーニングだと思う)をと思ったが、同店舗が入居するエスパル仙台が短縮営業のため閉まっていた。10時からの営業。いくら仙台とはいえ、地方都市はまだ東京ほどには元に戻ってはいないのだろう(※5)。

昼食を摂る店を物色し商店街のいちばん奥まで歩いたあたりで、石田亜佑美さんのケツを追いかけて(※6)東京から駆けつけた紳士(金澤朋子さんのケツを最も熱心に追いかけてらっしゃる)が仙台に到着したとTwitterに投稿なさっていた。落ち合うことに。今野珈琲。色んな豆のコーヒーを出すこだわりの店。タバコ吸いながらコーヒーの香りが分かるんですか? 分かります。でもタバコと混じり合っていると思います。昼食はあゆみ書店の近くにあるハロー・ヴェトナム。私は牛肉の乗ったフォーを食い、ネプ・モイ(※7)を飲んだ。

開場:13時半 開演:14時半

いつものハロ・コンとは何もかもが違う。モーニング娘。さん、Juice=Juiceさん、つばきファクトリーさん、アンジュルムさん、BEYOOOONDSさんといった集団は登場しない。それらの集団に所属するメンバーさんが個人としてステージに立ち、ソロで歌を披露する。彼女たちが歌うのはハロー・プロジェクトではなくジェイ・ポップの名曲。ハロー・プロジェクトさんのメンバーさんが一堂に会するのではなく、8人もしくは4人ごとに分かれ、全国各地に散る。同じ日に複数の地方で公演が行われているので、すべての公演に入るのは物理的に不可能。今日、仙台に帯同しているメンバーさんは8人。

  • 石田亜佑美さん
  • 森戸知沙希さん
  • 佐々木莉佳子さん
  • 井上玲音さん
  • 浅倉樹々さん
  • 小野瑞歩さん
  • 高瀬くるみさん
  • 里吉うたのさん

私が仙台サンプラザ・ホールに来た理由である小野瑞歩さんは言うまでもなく、それ以外に『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)メンバーさんが一人もいない。もしハロプロ・ソートをやったら比較的上位に来るメンバーさんばかり。明日の秋田公演に関しては出演者が四人だけなので小野瑞歩さんを長い間観ることが出来そうだ。中高年のオジサンが主流を占める観客に対する接待カラオケと揶揄したくなるコンサートのコンセプトを私はあまりよく思っていなかった。ただ、ここまで本腰を入れてツアーを続けられると、最低でも一度は観ておかねばという考えが生まれた。一度も観ていないのに何かと理由をつけて避け続けるのはワックである。

私にとって仙台サンプラザ・ホールに入るのは初めてだった。何となく先入観として、中野サンプラザと同じようなつくりなのかと思っていた。名前が同じなので。そんなことはなかった。収容人数は中野サンプラザと同等らしいが、その割にこじんまりとしていて、後ろでも上の二階でも観やすそう。ステージとの距離感とか、何となく雰囲気として三郷市民文化会館に近い。

来場者数を絞るために一席おきにしかチケットが販売されておらず、人の密集を避けるためにグッズの販売もされていない。いつものハロ・コンらしい活況やお祭り感はなかった。この会場は三階まである。一階は(一席おきに)埋まっていたけど、二階にはやや空席があり、三階はせいぜい一ダースくらいしか観客がいなさそうだった。最大でも収容人数の半分しか観客を入れないように制限しているにも関わらず、その定員すら埋まらない。地元出身の石田亜佑美さんと佐々木莉佳子さんがご出演なさる公演の割に、少し寂しい客入りに思えた。

コンサートを実際に鑑賞すると、チケットが完売しないのも納得できた。二、三曲目くらいで、この感じがずっと続くのか…きついな、と思った。別に誰が悪かったとか、そういうことじゃない。メンバーさんそれぞれが、割り振られた曲を自分なりに一生懸命、表現しようとしているのは伝わってきた。それはよく分かった。よかったはよかった。でも、日頃いくら誰々の歌唱力がスゴいなんてファン同士で言っていても、実際にこうやって個人の歌唱を切り出して見せられると厳しいなというのが正直な感想。アイドルさんという下駄なしで一人の歌手として辛うじて聴けたのは井上玲音さんだけ。全体的に、右の耳から入って左の耳から抜けるような歌の連続だった。身体の中に入ってこない。心に届かない。(非常食としてなら拍手を送れる。何か事が起きたら大袈裟に報道されスケープ・ゴートにされかねない困難な状況でも何とかして公演を遂行するアップフロントさんの姿勢は賞賛に値する。)

森戸知沙希さんの二の腕と、高瀬くるみさんのいわゆる絶対領域(スカートの裾と靴下のてっぺんの間にある脚)を鑑賞できたのは数少ない収穫。衣装はご本人たちが選んだそうだ。この二人は理解(わか)っている。それ以外は…。基本的にどれもステージに映えない。その辺の仙台ストリートを歩く服としてはちょうどよさそうだが、一人でステージに立つ晴れ着としては冴えない。値段もお手頃そう。先述のお二人以外はほぼ肌の露出が皆無。かといって曲のコンセプトに合わせたわけでもなく。ファッション好きで知られる佐々木莉佳子さんがドレープのあるシャツとぶっとい半端丈パンツで雰囲気のあるシルエットを作っていたが、そういうのが好きなんだねという以上の感想がない。

数ヶ月前ならまだしも、世の中がだいぶ普通に回るようになりつつある今でもこのソロ歌手ごっこ巡業をありがたがっている人々は、ハロー・プロジェクトだったら何でもいいのかと思ってしまう。ごめん、ちょっと言い過ぎた。非難をしたいわけではない。純粋にどこがいいと思っているのか興味がある。おそらくこのツアーを心から楽しんでいる人たちは、ハロー・プロジェクトの見方が私とはだいぶ違うのだと思う。繰り返すが、何をいいと思うかはみんなちがって、みんないい。だが、今後ずっとこればかりをやられたら私は静かにハロー・プロジェクトさんから離れる。

小野瑞歩さんが歌った後にステージに残らないといけないのに間違えて左から捌けようとして、出てきた石田さんに止められ、さらに立ち位置を間違えて修正し、恥ずかしそうに笑っていた。間違えてやんのという感じで佐々木莉佳子さんが笑うという、普段はなかなか見られない心温まる交流があった。緊張せずに歌えましたと言おうと思っていたんですけど、緊張しました、と小野さんが言うと、それが曲と相まってよかったよと石田さんがパイセンらしく優しい言葉をかけていた。

最後の曲(本コンサート唯一のハロー・プロジェクト曲『ふるさと』)では私の席からだと高瀬くるみさんに隠れて小野瑞歩さんが見えなかった。その腹いせに私は高瀬さんの絶対領域を双眼鏡でひたすら凝視した。やられたらやり返す、倍返しだ。

終演後、石田亜佑美さんのケツを追いかけて来た紳士と合流。彼は序盤の数曲で寝てしまったという(※8)。これに何度も入る俺の異常性が分かったでしょう、と彼はどこか誇らしげに微笑んだ。私は頷くしかなかった。メンバーさんがまんこを見せてくれるわけでもないのにこんなつまらないコンサートに足繁く通うのは本物の好事家しかいない。タピオラというサテンでレーコー。先ほどの今野珈琲といい、石田亜佑美さんのケツを追いかける紳士の案内。よくまあ生活圏でもないのにタバコの吸えるサテンをいくつも知っているなと感心する。私が飲食店を探すとき卵や乳製品に神経を尖らせる(※9)ように喫煙者はタバコの吸える店や空間を血眼になって探すようだ。

開場:17時15分 開演:18時15分

せっかく二の腕を出している森戸知沙希さんだが、ワキを見せてくださらないのがさっきの公演では不満だった。しかしよく見たら最初の全員曲(『365日の紙飛行機』)で腕を何度か上げて見せてくださっていた。他には高瀬くるみさんが絶対領域だけではなくデコルテもふんだんに見せてくださっているのに今さら気が付いた。昼公演では見落としていた。

トーク・セグメントでは、昼もそうだったんだけど(※10)、秋の食べ物は何が好きかというお題だった。里吉うたのさんがサツマイモのことをおいもさんと言って、メンバーさんたちがざわめいた。その後に森戸知沙希さんと石田亜佑美さんもおいもさんが…と被せていた。石田亜佑美さんが、私は芋羊羹が好きだけど、変に砂糖で甘くしたのではなくサツマイモ自体の味が楽しめるのが好きだと言った。すると私の前に座っていた肥満男性がうんうんと頷いていた。私は思わず頭の中で突っ込んだ。いやいや、あんたは砂糖を控えとらんやろ。これは私にとってこの夜公演のハイライトである。

コンサートが半分を折り返したところで、まだ半分あるのか? と私は絶望混じりに驚いた。もうお腹いっぱい。終わりでいい。だんだん苦痛になってきた。ただ時間をやり過ごす。消化試合。評価しない。超場違い。わざわざ新幹線で赴いた仙台。交通費、チケット代、宿泊費を支払い。

メンバーさんは口々に、普段は一人で一曲を丸ごと歌うことがバースデー・イヴェントくらいしかなく、それは集団の一員として歌割りをもらい部分的に歌うのとは異なると言っていた。里吉うたのさんは、このツアーを通して歌うのが楽しくなったと言っていた。そういった感想を聞いて私がしみじみ思ったのが、彼女たちが日頃やっているのは歌手ではないんだな、ということ。田村芽実さんも8月1日(土)のインスタ・ラジオで言っていた。ハロー・プロジェクト時代に身に付けたワン・フレーズに命を込める歌い方では、最初から最後まで歌うとぶつ切れに聞こえてしまうと。どちらがいい悪いではなく、アイドル集団で歌い踊るのと、一人の歌手として歌うのは、別モン。違うことにチャレンジしているのだから、質が伴わないのは当たり前。今日に関しては井上玲音さんだけは声の乗り方からして違った。他のメンバーさんは、全然悪くはないんだけど、心まで掴まれなかった。

長いスカートの下で膝がガガガガッて震えていた、と里吉うたのさんは明かした。一人でステージに立ち、一人で歌と向き合い、最初から最後まで歌い切る。緊張と試行錯誤。それは今後の彼女たちの活動に生きるだろう。でもそれはこの期間に習得した個人の技能をモーニング娘。さん、Juice=Juiceさん、つばきファクトリーさん、アンジュルムさん、BEYOOOOONDSさんで生かしてほしいという意味であって、ソロ歌手になりたいという色気を出さないでほしい(セクシャルな意味での色気はどんどん出してほしい)。むしろ、それは自分の進むべき道ではないということに気付いてほしい。このツアーをアーティスト病の予防薬にしてほしい。アップフロントさんもこのジェイ・ポップ・バラード・コンサートがイケていると勘違いしないでほしい。イケていないから。

―お酒を飲んだくらいで観るのがちょうどいいですね。途中ちょっと寝るくらいで。

―そうですね。素面で真面目に観るのはきついですね。

仙台駅内の郷土料理みやぎ乃で、石田亜佑美さんのケツを追いかけて来た紳士と夕食。石田亜佑美さんは明日、青森での公演に出演するが、彼はそこまでは彼女のケツを追いかけず、東京に帰った。私はとぽすにチェック・インし、大浴場でゆっくりしてからエア・ウィーヴのマットレス(※11)で横になった。


※1 副島隆彦さんが『日本は戦争に連れてゆかれる』で付けた、この一連の騒動の呼び名。コロナ騒ぎ、あるいはコロナ・バカ騒ぎ。

※2 コロナ・バカ騒ぎがなくても賞与は水物なので正確な影響額を算出するのは難しい。対昨年比。

※3 小林よしのりさんの『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』を読みましょう。全員。

※4 楽天トラベルで予約したんだけど、執筆時点(10月9日)ではクーポン発行数が上限に達したとかでもう同サイトでのGO TO割引は終わったらしい。

※5 東京でもまだ一部の店舗が短縮営業中だけど、大型施設はおおかた平時の営業時間に戻っている印象。

※6 ケツを追いかけてはいるが、私の知る限り特に尻フェチではないと思う。(という注を公開した後に、ケツは結構好きだというご連絡をご本人からいただいた。)

※7 甘いナッツのような香りがするヴェトナムの焼酎。私は2018年2月11日(日)に郡山駅前のヴェトナム料理店で出会い、はまった。

※8 これを公開した後に、完全に寝たのは二公演とも4曲目と5曲目のみ、というご連絡をご本人からいただいた。夜も寝とったんかい。(追記:後から気づいたけど、「序盤の数曲で寝てしまった」という書き方が、序盤の数曲以外はすべて寝てしまったという意味に伝わってしまったようだ。たしかに紛らわしい。「序盤の数曲では寝てしまった」にするべきだった。)

※9 7月に受けた遅延型フード・アレルギー検査の結果、私は卵白、カゼインに強いアレルギーがあることが判明し、医者から摂取を禁じられている。他には鯛、エンドウ豆等。

※10 殆ど印象に残らなかったから書かなかったけど、里吉うたのさんがマスカットが好きだと言っていた。シャイン?と石田さんが聞き、それはたまにしか食べられないと里吉さんが答えていた。

※11 標準のカプセルよりも少し値段の高いプレミアム・ルームでエア・ウィーヴが採用されている。