2022年1月29日土曜日

Equal-イコール- (2022-01-22)

これは偏見だがスマイレージ/アンジュルム時代のめいめいを推していたとTwitterで表明する奴の九割五分はただ田村さんの名前を出すことで通ぶりたい層。彼らはHello! Project退団後の田村さんのソロ活動を追っていない。“Sprout”も『無花果』も聴いていない。リリース・パーティもソロ・コンサートも舞台も観に行っていない。せいぜいYouTubeで『お祭りマンボ』のカヴァー動画を観てシェア・ボタンを押すのが関の山。もちろんそんなのは各人の勝手。ただ、Hello! Projectメンバーさんという肩書きが消えた瞬間から興味をなくしたくせに退団後の活躍が耳に入ると漏れも昔は好きだったと言い出すのはワックだと思う。実際にどれだけいるのかは分からない。だが、昔めいめいが好きで……(とっくにもっと年齢の低いHello! Projectメンバーさんに乗り換え済み。これをロリコン・ループと言うらしい)的なtweetを目にすると頭の中で勝手にその手合いだと決めつけてしまう。ほらよくいるじゃんそういうヤツ。金髪頭に高級シャツ(K DUB SHINE feat. 童子-T、『そういうヤツ』)。私は田村芽実さんのソロ活動一発目の舞台から観劇し、ファンクラブに入会し、その後も細々とではあるがソロ・コンサートや舞台に足を運んできた。田村さんの『ひめ・ごと』クラウド・ファンディングには五万円を出した。同舞台が劇場で開催されたときに良席に招待してもらえるのが返礼。一定期間(三年だったか?)以内に実行出来なかったら五千円だけ返してくれるということだったと記憶している。それはやめてほしい。三年(?)経って五千円返すより十年後でもいいから実現させてほしい。信じて待っている。私は口だけのフェイク野郎どもとは違い、お金を払い、現場に行く。

あなたには私が見えない敵と戦っているように見えるかもしれない。いや、実のところそういうヤツらは私の敵ではない。悪くは思っていない。漏れは前から田村芽実さん唾をつけていたんだゾ的な雰囲気を出しながら今の同氏の活動にお金と時間を払わず現場に顔を出さない人たちは私にとってありがたい存在だ。何せ彼らがそこにとどまっていてくれるおかげで私はいつも田村芽実さんの現場で良席をいただける。もし田村さんのファンクラブ会員数が今の何倍もいたら会場に入れさせてやるだけで感謝しろと言わんばかりの席が与えられることが多くなるだろう。フェイク野郎なんて言ってごめんね。むしろありがとう。『ひめ・ごと』プロジェクトにお金だけ出すタイプの人々が一番ありがたい。そういう紳士淑女たちは私にとってもパトロンに近い。日頃は田村さんのコンサートや舞台には申し込まないけど、彼女が困って助けを求めたらお金を出す。そのスタンスをこれからも続けてほしい。私が田村さんをステージに近い席で観続けられるように。

ファンクラブが私に割り当てた座席が、今日の昼がE列、夜がF列、明日の千秋楽がB列。B列って二列目だと思うじゃん。それがね、会場に入ってみたらA列がなくて、B列が一番前なの。千秋楽で最前という幸運。今日の席も昼は左ブロックの通路席(席は左右に6人ずつの配置)、夜は右ブロックの通路席の一つ右で、三回とも良席だった。しかも今日は昼は前と左が空席、左が空席で(チケットは完売していた)快適だった。特に昼は視界がよかった。席は狭く標準体型の女同士でも隣と隙間が出来ない窮屈さだった。この『Equal-イコール-』は公演期間が1月19日(水)から23日(日)の5日間、計7公演。私の場合、演劇を観ることではなく田村芽実さんを観るのが目的だから、出演者は少なければ少ないほどいい。田村さん濃度が高ければ高いほどいい。二人芝居ということで。出演者が十人、二十人の舞台は一回しか入る気にならないけど、二人となるとほぼ出ずっぱりだろうから、複数回入らない手はないなと。平日は労働的にちょっと厳しそうだったので土日の3公演をすべて申し込んだってワケ。そうしたら3回ともよさげな席が来て、心から楽しみにしていた。検索して貰えれば分かるけど今回の会場、新宿シアター・トップスはただでさえ小劇場。至極の体験があらかじめ約束されていた。

期待していた通りの、本当に贅沢な時間、空間だった。左側の机で椅子に座った田村芽実さんがノートブックに何かを書きながら咳き込む場面から始まるんだけど、まずこの距離で生めいめいを目に焼き付けられることに感激。そういえば生でお目にするのはいつ以来だろ。キリッとした表情になったときの美しさ。田村さんとめがねさんはマイカフォンなしの肉声。唾を飛ばし合いながら狭い舞台で感情をぶつけ合う。マッハ超えて飛べ俺の唾。ユー・ザ・ロックさんはそう叫んだけど(LAMP EYE、『証言』)、人間同士が本気でぶつかり合うというのはそういうことだと思う。田村さんが大声を出す際や吹き出す際、実際に何度も唾が見えた。もちろん劇中に田村さんとめがねさんはマスクも着けていないし社会的距離とやらもとっていない。今の日常生活よりよっぽど健全じゃねえか。このステージ上が。唾と言えばさ。コヴィッド騒ぎが始まってから飛沫という言葉が生活に定着してしまったけど、人間が喋るときに出る微量の唾をいちいち気にして感染するとかさせるとか神経質になることは相当に病的だ。最近、私はTyler Fischerさんというコメディアンの動画を観ている。彼はCDCのファウチのパロディ動画をいくつか出していて、そこでよくdropletsという単語を使う。飛沫という言葉の元はコレなんだろうな。ある動画では一人暮らしでも特にシャワー中にはマスクをしろ、排水溝を通じて飛沫が他人のトイレに届いて肛門を通じてコヴィッドが感染すると説き、別の動画では人を殺すときは距離を取れ、アメリカに死をと叫ぶときには声を小さくするかテキストや絵文字で済ませろ、人の首を切り落とす前にマスクをしないとその首からコヴィッドが拡散する等とタリバンに警告している。彼のYouTubeチャネルはコヴィッド騒ぎにおける一服の清涼剤。私はくりぃむしちゅーさんのANNのようなうんこちんこ番組も愛しているけど、根がインテリに出来てるから、こうやって権力に抗う知性的な笑いが本当のコメディなんだろうなと思ってしまう。

事前予習ゼロで軽い気持ちで観始めたら途中からかなりどぎつい内容になってきて、消耗した。錬金術、黒魔術、人間の複製、血を吸わせて記憶を移植するとか、トランプ・シリーズっぽさが随所に見られた。末満健一さんが作る劇は全部こういう感じなのだろうか? これを今日と明日であと二回も観ることに自分の精神が耐えられるのか、昼公演の直後は自信が持てないくらいだった。観るだけでここまで神経を擦り減らすのに田村さんとめがねさんのお二人は大丈夫なんだろうかと思った。それと同時に、こんな素晴らしい舞台をあと二回も観られるんだという喜びも噛みしめていた。いずれにせよ非常にインテンシティが高く、夜公演の前に頭を休めないといけなかった。会場近くのオスロ・カフェで10分間の瞑想をした。田村さんとめがねさんが持つエネルギーをすべて出し尽くしたような二人芝居。Monday, Tuesday…と曜日で区切られた、一週間分の物語。最初に咳き込んでいる田村芽実さんが肺の病気を患っているニコラ、めがねさんが彼女を看病する幼なじみの勤務医テオ。なんだけど、Tuesdayになると入れ替わっていて、田村さんがテオ、めがねさんがニコラになっている。Wednesdayになるとまた入れ替わって、と最終日までそれが続く。これが何を意味するのか、一回目では分からなかった。二回観ても分からなかった。三回目の千秋楽でようやく(たぶん)理解できたが、それは次の記事で書く。一回目で話の仕掛けがある程度は分かったので、二回目では見方がかなり変わった。それぞれのちょっとした仕草や台詞が、一回目とはまったく違った意味を持ってきた。これぞ観劇の愉悦。複数回の鑑賞に耐えるように作り込まれた劇だった。めがねさんのことは初めて拝見した。前から氏を支持している方々からすると失礼な言い方かもしれないが、田村芽実さんが二人芝居をやる相方として不足がなかった。がっぷり四つ。一歩も引かず渡り合っていたし、分かり合っていた。この二人が次々に入れ替わりながら演じるニコラとテオが、田村さんとめがねさんそれぞれの個性がはっきり見えながらも一つの人格として違和感なく統合されていく感じがして面白かった。

要所に笑いを入れて緊張と緩和の振り幅を作ることで観客の感情を動かすのではなく(多少クスッと出来るくらいの箇所はあるが、空気を和ませるほどではない)、ずっとシリアスで集中と緊張が続く。二人だけの出演者で、二時間近くその強度が落ちない。田村芽実さんとめがねさんの力量あってこそのスタイル。夜公演には観客に異常なオジサンが一人いた。彼はめいめいがえーっ??!と大声を出したとき、おーびっくりしたと小声で反射的に呟いていた。他にも何回か声を出していた。オナラもしていた気がする。彼はそんなに大きな音を出していたわけではないし、あまり悪く言いたくはない。だがこの小劇場で、なおかつ集中と緊張が続く劇においては、一人のちょっとした物音でも何かが微妙に崩れる。緊張の糸がほんの一瞬切れるというか。ヘッズとプレイヤーが素に戻ってしまうというか。それもあって、昼の方が若干よかった気がする。演者さんの出来がどうとかという批評的な意味ではなく、我々を含めた会場全体のヴァイブスが。100点と98点くらいの本当に些細な差だが。昼はカーテン・コール(といってもカーテンはなかったが)が二回、夜は一回だったのが象徴的だった。E列とF列からでもめいめいの唾が見えたように、舞台と客席が相当に近い。ニコラはよく咳き込んでいたし、最前付近のヘッズは演者さんたちの唾がかかっているんじゃないか。明日の千秋楽は最前でめいめいの唾を浴びるのが楽しみでならない。こうやって上原ひろみさんと田村芽実さんを短い期間に何度も観ることが出来ると、Hello! Projectがなくても生きていけるなと結構はっきり感じてしまう。この週末は名古屋でハロ・コンがあった。現地のイルなホーミーたちと再会したかったが、名古屋を捨ててこっちを選んだことに悔いがない。