2022年10月2日日曜日

ヘアスプレー (2022-09-24)

タカセはいつもそうだった。ツナ・ポテト以外のサンドウィッチは微妙。タカセはいつもそう。開店30分後でもツナ・ポテトがケースに置いていない。タカセはいつもそう。政治はいつもそう。日本はいつもそう。それが君の口癖(参照:Moment Joon, "TENOHIRA")。想像するに、作る側の業務ルーティンでツナ・ポテトは後回しなんだろう。順番は勝手だが開店した時点で一通り揃えておいてほしい。むしろ他のサンドウィッチは作らなくていい。ツナ・ポテトだけでいい。仕方なくたまごのサンドウィッチを手に取りレジへ。

ボディ・ビルディング大会の出場経験があるトレーナーの青年に一対一で激しくシゴかれる(そっちの意味ではない)。このジムには8月7日(日)から週一で通っている。たしかにパーソナルは高い。60分で一回一万円近く。週一なら一年で約50万円になる。冗談じゃない。数ヶ月で区切りをつける必要がある。でも経験してみたかった。ちゃんとしたトレーナーの元で、質の高いトレーニングを。私にはスポーツ経験もトレーニングの知識もない。何が正しいのか、自分が何をどれだけやるべきなのか、その基準をプロに教えて貰いたい。それに私には一人で追い込むだけの意思と忍耐はない。私はいつも不思議に思っている。自重だけとか、自分でメニューを組んで身体を鍛えて結果を出せるような人が、なぜうだつの上がらない労働生活を送っているのだろうか? 自分の身体が変わるくらいのストイックな努力を続けられるのであれば会社員の仕事なんて楽勝じゃない?

自分が短髪にしてからロン毛の男を見ると不潔だなと感じてしまうし、トレーニングしてから入ったステーキ・ハウスの客にふくよかな紳士がいると不摂生なデブがステーキを食うなと思ってしまう。人間なんて勝手なものだ。プロテイン25gを飲んでから食べるランプ・ステーキ320gは思っていたよりも多く感じる。池袋駅北口。巨乳店舗型ヘルスが入居しているビルヂング一階の店。強くなる雨足。

快活クラブを利用しようとしたら、全国的なシステム(サーバー?)・エラーにより全店舗で入室が出来ない状況になっていると受付のお兄さんが言っている。何だよそれ。すごすごと引き返す。公式Twitterは沈黙中。快活クラブで飲むために買ったド・トールのレーコー(R)を持て余す。タリーズでホット・コーヒー(S)。ほぼ満員。『大東亜共栄圏』(安達宏昭)を読む。

18時の開演前に夕食をサクッと済ませておく必要がある。東京建物ブリリア・ホールを出るのが21時頃になるからだ。先週も台風が来ていたけどまた台風。クソみたいな天気。止んだり大雨になったりと落ち着かない。蒸すし。不快極まりない。五苓散を飲んでいるおかげか頭痛はないが、体調も気分もあまりよくない。昨日は14時頃からずっと眠かった。晴れやかな気分は皆無の三連休二日目。会場前の広場でちょうどフード・フェスをやっている。ここでいいや。結果、大失敗。激辛担々麺。量が少ない。JPY1,000。会場に入ると、そこの間隔を詰めろ、二列になれと異常に細かく高飛車に指図してくる係員の女。募るイライラ。物理的に打撃を加えたい。目を逸らし無視するように努める。二人、一人(俺)、二人って並びなのが分かんだろ、馬鹿が。どういう知能してるんだよ。

オタクのどんよりした瘴気がない客席。想像だけど主演の渡辺直美さんに憧れる若い女性が主な観客層のように見える。やたらとお洒落だったり(服とマスクの色まで合わせている美少女っぽいティーン二人組とか)キレイだったりする人もちらほら。おそらくカタギじゃない人(おととい観劇したJuice=Juice植村あかりさんのように)が混じっている。そっち系の人々が結構観に来ているっぽい。それだけ有名なミュージカルっぽいんだよね。このあいだ四季香でメシ食ったときにお会いしたD君もご存じだったし。

『ヘアスプレー』に関して私が持っていた予備知識は、渡辺直美さん(トレーシー)が主演。何かのオーディションを受けるが、ふくよかな体型で相手にされない。田村芽実さんは渡辺さんのライバル役(アンバー)で、彼女に意地悪をして貶めようとする。めいめい自身がよくよくいじわるアンバーと言っていたので、そういう役だというのは頭に入っていた。実際にトレーシーとアンバーのバチバチは劇を通して大きな見所だった。私、この番組に出るのが子供の頃からの夢だったの! と興奮気味に言うトレーシーに、じゃあ帰って寝れば? と返すところとか、体育の時間にドッジ・ボールをトレーシーの頭に叩きつけて気絶させ、そのまま立ち去るところとか、立ち去る前に言う、可哀想……可哀想すぎて涙も出ないわ。という捨て台詞とか。痺れた。

でも不思議とそこまで性格の悪いイヤな子……という感じもしなかった。この作品が差別を扱いながらもあくまでコメディとして作られているのもあったと思うけど、それ以上に渡辺直美さんのヴァイブスが半端なかった。当たり前なのかもしれないけどシンプルに華のある人だった。開幕し最初にステージ中央に一人で現れ“Good Morning Baltimore”を歌い始めた時点でパッと会場全体が華やかな空気に包まれた。渡辺直美さんという人間自身のポジティブなエネルギーやにじみ出る芯の強さが強烈すぎて、むしろアンバーの意地悪さが物足りないくらいに感じた。普通に考えるとめっちゃきついことを言われているのに(他に例を挙げると私このオーディションに参加するの遅すぎましたか? と聞き、遅すぎないわ。でも重すぎる、とアンバーの母親でもあるプロデューサーに笑われる場面とか)、なんかそういう感じを受けなくて。この渡辺直美さんと対をなす重要な役であるアンバーになれるというのは凄いこと。おそらくめいめいの経歴に燦然と輝く実績になるんだろう。

終盤、ミス・ティーンエイジ・ヘアスプレーの座を逆転でトレーシーに奪われ、番組中に失神し椅子で介抱されるアンバー。現場スタッフが差し出す飲み物。見覚えのある緑の瓶。双眼鏡で確認したらやはりウィルキンソンのジンジャー・エール。N列から6倍の双眼鏡で見ただけではプレインなのか辛口なのかは確信が持てなかった。

低気圧など諸々が重なって蓄積していた私の不機嫌さとつらさを吹き飛ばしてくれる最高の時間だった。ステージはもちろん客席も含めポジティブな空気に満ちた、幸せな空間だった。私の後ろにいたナオン数人組がよく笑っていた。それに釣られて私も笑って楽しく観劇できた。めいめいはワキをよく見せてくれたし、体育の時間で見せてくれた体操服姿も眼福だった。タイツを履いていたとはいえ赤い短パンから脚をたっぷりと見せてくれた。大勢の役者さんがステージにいるときでもめいめいにはいつも独特の存在感があって、引き込まれる魅力がある。作品によって異なる、役とめいめいという人間の化学反応。それがミュージカルを媒介してめいめいを観る醍醐味だと改めて思った。

私がジムでやっているトレーニングの一つに、3kgのダンベルを両手に持って横に上げ下げするのがあって。一見、簡単そうに見えてめちゃくちゃきつい。30回を2セットをちゃんとやるのは無理。でもそれで肩を少し鍛えたおかげか、最後にずっと拍手をしていても前より疲れにくくなったような気がした。