2023年10月28日土曜日

私のもとへ還っておいで (2023-10-21)

先にめいめいのコンサート日程が決まっていて、マリノスの試合日程が後から発表された。10月21日(土)14時から日産スタジアムで横浜F・マリノス対北海道コンサドーレ札幌。18時半から大手町三井ホールで田村芽実さんの一人芝居コンサート。運よくハシゴ可能な日程。7月8日(土)に愛知県の豊田スタジアムで名古屋グランパス対横浜F・マリノスを一緒に観た際、日産スタジアムでも試合が観てみたいと享平君が言っていた。社交辞令かと思ったが、誘ってみたところ本当に来てくれることになった。マリノスとめいめいの両方を一日で堪能できる贅沢。遠征して観に来てもらう価値がある。今でも忘れない。享平君には2019年9月8日(日)に一緒に入るはずだっためいめいのワタシノアカシツアーをドタキャンされている。(あれからもう4年が経つのか!)チケットは私が彼の分も買っていた。享平君からお金は貰っていない。急遽、現地にいた中島さん(仮名)に無償で譲渡した。(流石に家賃未納で借金数百万の中島さんにこちらの都合でコンサートを観に来させてお金を請求することは出来なかった。)享平君のドタキャンで私は無駄にチケット代を払わされたことになる。いや、それは別にいい。もう4年前の話やんか。蒸し返さんでもええやん。水に流そうや。問題はお金ではない。めいめいを観る貴重な機会を享平君が逃してしまったこと。それが何よりも私は残念で、彼にとって大きな損失。人生の汚点。彼にとって4年越しに訪れた名誉挽回、汚名返上のまたとない機会。それが2023年10月21日(土)。彼の異常な労働生活を考えると最後の最後まで安心は出来なかったが、遂に対面を果たした。午前11時過ぎ。横浜モアーズ8階。ハングリー・タイガー前。ダブル・ハンバーグ・セット(R)。よく行く店のよく食べる料理は出てきた瞬間にパッと見るだけで当たり外れが分かるものだが、今日のは焼き目が完璧だった。チケット代未払いでドタキャンという酷い仕打ちを4年前に受けながら、二日後に控える彼のお誕生日を祝い、食事をご馳走する私。俺は業界No. 1の巨大なケツの穴持った器デカい奴(デッ、デカい!)てんで次元がちゃいます(別世界!)(参照:ライムスター『ウワサの真相 feat. F.O.H.』)。420gのハンバーグと付け合わせと米を食べてレーコーを飲んでもなお食欲の落ちない享平君(昨夜は世界の山ちゃんで手羽先を40本食べたらしい)。日産スタジアムのスタ・グルにマジ興味あるらしい。であればすぐにココを出ないと。

店を出て地下鉄の横浜駅に歩く道すがら、私があげたベース・ブレッド・ミニ食パン・レーズンを頬張る享平君。私は同年代の友人たちと会食すると情けないほどお互いすぐにお腹がいっぱいになってしまう。享平君のような大食漢とご一緒できるのは新鮮な体験。何でも学生時代には5kgのステーキを制限時間内に完食すれば無料になるチャレンジに参加し成功していたらしい。彼の勤務先で昇進する社員はおしなべてたくさん食べ、たくさん飲み、短時間睡眠で長時間労働をするのだという。彼にぜひ賞味してほしかったベリーズ・ベリーのバブル・ワッフルには長蛇の列。試合開始に間に合いそうになかった。食いモンは諦め、スタジアムに入る。ビールを買うために席を離れる享平君。戻ってくると私の分も買ってきてくれていた。さて、マリノスだが負傷者の続出もあって不振が続いている。6日前にさいたまスタジアム2002で浦和レッドダイヤモンズに0-2で完敗し、ルヴァン杯を準決勝で敗退したばかり。リーグ戦は残り5試合で首位の神戸と勝ち点差4をつけられている。リーグ連覇に向け窮地に立たされている。試合が終わってみると4-1で勝っていた。しかし試合内容はまったく褒められたものではなかった。浦和レッドダイヤモンズ戦から何かが劇的によくなったかというとそんなことはない。前半は相手の方がチャンスが多く、1-0で折り返せたのは幸運だった。相手のシュート精度の低さに助けられた。もちろん一森さんのスーパー・セイヴィングと勇気ある飛び出し、喜田さん率いるDFラインの奮闘も欠かせなかった。1-0で後半の終盤まで膠着する中で、点差を2に広げられるチャンスをロペスさん、植中さん、ヤン・マテウスさんらが次々に逃す。決めろや。こういうのを決めないと追いつかれて勝ち点を落とすんだよ。募るイライラ。ただ84分、90+1分、90分+6分と最後に畳みかけるように決まるゴール。我々の席に近い方で豪快で爽快なゴール・ショーを見せてくれた。エンターテインメントとしては楽しかった。ただ、終わりよければすべてよしとは言えない。この調子で残り4試合も勝ち続けられるほど甘くはない。1試合に限れば論理的ではない結果は得られることがあるが、それが何度も続くわけではない。杉本さんが決勝点となった2点目を決めた後にゴール裏の皆さんがWe are Marinosを歌い始めたときはちょっとウルッと来そうになった。終盤、4バックが左から吉尾さん(本職右ウイングやトップ下)、喜田さん(本職ボランチ)、松原さん(本職右サイドバック)、榊原さん(本職トップ下)。本職ゼロ。DFの大半が負傷離脱している異常事態。通常であれば勝ったときは選手の周回やMVPの発表まで見届けてから帰るのだが、今日は次の予定があるのですぐにスタジアムを去る。

新横浜駅から東京駅。東京駅付近はオフィス街。無機質で同じようなビルヂングがひたすら林立。ない目印。分かりづらい。前進毎日ない道 前進毎日ない道(参照:OZROSAURUS, “AREA AREA”)。丸の内中央口地下道直結という大手町三井ホール公式サイトの雑すぎる説明。分かるわけがない。迷いながらも地上経由で会場を発見。まず地下のセブン・イレブン。享平君が毎日飲んでいるエナジー・ドリンク(モンスター)を所望。飲まないと寝てしまうのだという。会場はエスカレーターで3階。分類上はいわゆるライブハウス(和製英語)ということなのだろう、徴収されるドリンク代JPY600。水やお茶のペットボトルだけかと思いきや奥に缶のビールとレモンサワーがある。私はレモンサワー、享平君はビール。ここで酒を出しているのは劇の中身とリンクしていてよかったと思う。めいめいが演じるのが寂れたショー・パブのやさぐれた女シンガーなんだけど、どいつもこいつも酒ばっか飲んでて私の歌なんか聞いちゃいねえ的な台詞が冒頭にある。レコードJPY3,500とペンライト(緑+紫各1本)JPY700を購入。開演前に享平君の席に駄弁りに行く。RL列という後方席だが段差があって見やすそう。席も快適そう。私はE列の2番。A〜K列までは段差がない。その上、左から二番目だったので、前方とはいえRL列よりも良席だと断言は出来ない。席と言えばS席(サイン入りパンフレット付き)JPY13,000と指定席JPY8,500の二種類が売り出された。S席は前方(たとえばA〜K列)席だと思うじゃん。でもどうやら違いはパンフレットが付くか付かないかだけで、席のよさと席種はまったく関係がなかったようだ。というのが享平君のRL列は25列中の20列目だったけどS席だった。本公演が終わってS席じゃない人が先に退出したんだけど、最前付近の人々もちらほら立ち去っていった。そしてそのタイミングで去った人は少数派だったので、観客の大半がS席を買っていた模様。これはちょっと売り方に問題があると思う。S席と指定席の違いは席の良し悪しとは無関係だってちゃんと書くべきだった。とはいえ、S席を買ったことに後悔はない。公演後にめいめいと間近で対面し、パンフレットを手渡してもらいながら言葉を交わした時間が、ただでさえ素晴らしかった公演を締め括る甘美なデザートになったからだ。(無言の相手にはめいめいからありがとうございますと言ってパンフレットを渡していく流れなのだが、私が何か言おうとしているのを察して聞く態勢をとってくれるめいめい。)「めっちゃ楽しくて」(頷くめいめい)「時間が経つのが、もうあっという間でした」(目を細めてふわっと柔らかい表情になるめいめい)「あー、ありがとう。また来てね」。心から伝えたいことを伝え、反応もいただき、心が満たされた。パンフレットのお渡し会を終えて私が退出したのが21:05。享平君はその数分後。東京駅21:30発の最終新幹線で帰るらしい。公演後に一杯やりながら感想戦をと考えていたが、実現出来なかった。早足で東京駅に向かい、21:24に改札を通過する享平君を見送った。彼はこうやって常に計画にバッファーが不足しているからちょっと想定が崩れただけであたふたするギリギリの人生を送っているのだと思ってしまった。コンサートに話を戻すと、めいめいに伝えた通り、お世辞抜きに時間が過ぎるのが早かった。笑って、見入って、聞き入っているうちに、え、もう休憩なの? え、もう終わりなの? となっていった。名残惜しさがあった。すべての瞬間がハイライトと言えるくらいに見所、聞き所だらけだった。史上ベストめいめいだった。めいめい支持者として絶対に外せない公演だった。実は今日、休日出勤を出来るか確認され、断っていた。もし労働に屈して諦めていたらと想像するとゾッとする。Hello! Project時代のめいめいしか知らない知人友人たちにも観てほしかった。今日来ないでいつ来るの? という感じだった。来年はこの公演でツアーをやる構想があるらしいので、ぜひ観に来てほしい。劇中、楽屋でめいめいがファン・レターだと思って読み始めた手紙が殺害予告だった。10月21日の19:30にあなたを殺すと記されている。10月21日…今日? 19:30…20分後? 走る戦慄。直後にアナウンスされる、20分間の休憩。笑いとざわめき。劇中の設定なのか現実の休憩なのか、にわかに判別するのが難しい。「コレって本当に(トイレに)イッていいンだよね?」とお連れの方に確認する、近くの席にいた婦人。さっきの酒の話もそうだし、この20分後の殺害予告と20分の休憩もそうだし、めいめいはその他にも所々にメタなユーモアを散りばめることで、劇の世界と現実世界をうまく融合させるのに成功していた。再会した旧友たちとHello! Projectの話で盛り上がるくだりの、スマイレージがうちらの青春だったよね、私はめいめい推しだった、めいめいって今めっちゃミュージカルに出てるんだよ、朝ドラにも出てた。え〜、そんなに好評だったの? めいめいって売れてるんだね〜的な台詞の流れには会場のヘッズが沸いた。その流れで披露された『スキちゃん』。熱かった。往年のHello! Projectの熱狂を思い出して弾けることが出来た。コヴィッド騒ぎで封じられてきた我々の声援。その鬱憤を、コールだらけでいかにもアイドル、いかにもHello! Projectというこの曲で少しでも晴らすことが出来た。『スキちゃん』を歌って一旦ステージの奥に下がるめいめいに、どこかの紳士が発した「行かないで〜!」。アレは魂の叫びだった。それでさ、『スキちゃん』の次がまたホイットニー・ヒューストンさんの“I Have Nothing”で。めいめいがこう、しっとりと歌い上げるわけよ。唖然とさせられるこの落差。表現の幅。その他にはビヨンセさんの何か、椎名林檎さんの『本能』、美空ひばりさんの『お祭りマンボ』、マリリン・モンローさんのあの有名な曲、『ラムのラブソング』(『うる星やつら』の)、カントリー・ロード、“Over the Rainbow”、オリジナル曲だとアンコール明けに『舞台』。衣装はベースが黒のちょっとセクシーな部屋着(※譜久村聖さんのグラヴュアで言うところの)で、その上に羽織るものを曲ごとに細かく着脱していく。インスタグラムの配信でめいめいが語ったところによると衣装にはだいぶ予算的制約があったそうだけど、それでも存分に目でも楽しませてくれた。これまでのめいめいのアイドルとしての、ミュージカル女優としての、歌手としての、一人の表現者としての、すべての活動の集大成のような公演だった。アイドル時代とミュージカル女優時代が別々の二つの人生として独立するのではなく、アイドル時代を引きずるわけでもなく、かといって過去のものとして蓋をするわけでもなく、すべてが一つの線で繋がった感じ。その記念日。ひとつの記念碑。フォーマットにとらわれず、その人がやりたいこと、表現したいことを自由に詰め込んだ作品こそ至高。そう改めて感じた。樋口毅宏さんの『さらば雑司ヶ谷』『雑司ヶ谷R.I.P.』のように。ホントにねえ。今日来なかった人は死ぬべき。すみませんちょっと言い過ぎました。でもそう言いたくなるくらい最高の時間だった。