2017年12月15日金曜日

Juice=Juice 宮本佳林バースデーイベント2017 (2017-12-01)

この公演の目撃者になれたかどうかで宮本佳林さんの支持者としての格に差がつくと言ってもいい。そういう類のバースデー・イベントだった。世の中には分野を問わず、押さえておかなければならないクラシックというのが存在する。たとえばキングギドラの『空からの力』も聴いていない人がジェイラップ・オタクを名乗ろうものならにわかファンとディスられるのは避けられない。マルコムXの自伝さえ読んだことがない人がアメリカの人種差別の歴史に関する専門家を称するのは無理がある。これを観なければ・聴かなければ・読まなければ○○は語れない、というのはどの世界でもある。2017年12月1日、宮本佳林さんに関してそれが一つ増えた。19時からディファ有明で開催されたのは、私たちが知っているHello! Projectのバースデー・イベントではなかった。宮本佳林さんはこの日、バースデーイベントの概念をぶち壊し、新たな基準を打ち立てた。凄いものを見せてもらった。大袈裟かもしれないが歴史が作られる瞬間に居合わせた。そう実感できる公演だった。

私が知っているバースデー・イベントというのはね。芸人さんの助けを借りてのゆるいトーク。仲の良いHello! Projectメンバーさんもしくは憧れの人からのビデオ・メッセージ。観客みんなでハッピー・バースデーの歌。ゆるいゲーム。5曲前後のミニ・コンサート。最後にお見送り会。型が出来上がっている。私は今年に入ってから井上玲音さん、小野瑞歩さん、新沼希空さん、小片リサさんの(+執筆時点では植村あかりさんの)バースデー・イベントにお邪魔してきたけど、皆さん先述したテンプレート通りだった。それが悪いって言っているんじゃない。誕生日を祝うということ自体が定型的な行為なので、イベントの形式が似たり寄ったりになるのは当然なのかもしれない。ご本人のお誕生日に(当日じゃないときもあるが)Hello! Projectメンバーさんと同じ場所にいさせてもらえて、祝わせてもらえる。それ自体に大きな価値がある。彼女たちは年頃の女性である。本当だったらご家族、恋人、友人と一緒に過ごして然るべきなのである。にも関わらず我々のような気持ち悪いオジサンたちに愛想を振りまいてくださる。それに対する感謝を忘れてはならない。バースデー・イベントを純粋にショーケースと捉えて、面白いだのつまらないだの歌やダンスがどうのと批評するのは野暮なのである。

今日に関しては、野暮だったのは宮本佳林さんが通常のバースデー・イベントから大きくはみ出ないショーを見せるだろうと思っていた私だった。お誕生日を祝うための緩めな演目の一環としてのミニ・コンサートではなく、宮本さんは本気で魅せていた。もはや宮本佳林さんのソロ・コンサートといった方が相応しかった。ニレンジャー川田さんのややお寒いイントロダクションは先行きを心配させたが、宮本佳林さんがステージに現れるとすべては変わった。怒濤の14曲。トークを挟まずに12曲。通常のバースデー・イベントに慣れきった我々からは曲が続くごとにおーという驚きの声が上がった。トークを挟んで、エレクトリック・ギターの弾き語りによる『雨』(森高千里)。最後には自作曲“Pink Moment”(表記不明)。オープニングとダンス中の音楽は、機能性発声障害による休養期間中に始めたDTMでご自身でお作りになったトラック。私はセットリストを覚えるのは5曲が限界。はじめの12曲に関してはすべてを覚えていない。色んな人がTwitterやブログに載せているだろうから、ここに貼り付けることもしない。個人的には『独り占め』(つばきファクトリー)と『奇跡の香りダンス。』(松浦亜弥)を宮本さんの歌声で聴けたのが嬉しかった。『独り占め』はつばきファクトリーの名曲だし、松浦亜弥さんは私がHello! Projectをフォローするようになったきっかけだからさ。『独り占め』に関してはイントロと中盤のオイ!オイ!オイ!からの手拍子二回というのを出来ている人が少なかった。そうか、宮本佳林さんとつばきファクトリーのファンはそれほど重なっていないんだな。

・お誕生日のお祝いメッセージは、「植村あかり以外からは」来た。やなみん(梁川奈々美さん)は明日『おはスタ』で早いので(12月1日の朝に宮本さんと一緒におはスタに出演)と前日にメッセージをくれた。るるちゃん(段原瑠々さん)は私とのツーショットをまとめた画像にメッセージを付けて送ってくれた。朋子(金澤朋子さん)は熱いメッセージをくれた。再度、「植村あかり以外からは来ました」。
・『おはスタ』出演とこのバースデー・イベントへの緊張から昨晩は23時半から1時半の2時間しか眠ることが出来なかった宮本さん。
・ビデオ・メッセージは梁川奈々美さんと工藤遥さんの二本立て。
・サプライズで金澤朋子さんがケーキを運んでくる。彼女がステージにいるとトークにリズムが生まれる。最前にいた子供に「あなた何歳よ?」と問いかける金澤さん。「私のこと好き?」と宮本さん。どうやら無反応らしい子供。「そうでもないか」。「緊張してるんだよね」と金澤さん。今度は「隣のこのお姉ちゃんは好き?」と金澤さんを指して宮本さんが再び聞く。再び反応がない模様の子供。「そこはうんって言うんだよ」と宮本さん。「何を仕込もうとしてるんですか」と川田さん。

完成度の高さだけではなく、未熟さと成長の余地も見せてくれたのがよかった。弾き語りにおけるエレクトリック・ギターの演奏は、詳しくない私でも相当に低水準であると推察できるものであった。始めたばかりだとご本人もおっしゃっていた。また、人参のピーラーで指を傷めているから弦をまともに押さえられないとおっしゃっていた。あえてこの場でギターの演奏を披露されたのは、未熟な部分を私たちにさらけ出すことで、ここからの成長を見守ってほしいというメッセージを発しているように見えた。ご自作曲の“Pink Moment”(表記不明)にしても、一回聴いただけだから断定的な評価はできないが、ありがちな感じがして、私はそこまでいいとは思えなかった。Twitterを見ると絶賛している人が何人もいた。ファンとしてはそれが正しい反応なんだろうけどさ。まったく同じ曲が、他の人が作詞作曲したものとして発表されていたら称賛を送るどころかこきおろしていた可能性もあったんじゃないの? いや、私はあの曲をディスりたいわけじゃない。定評のある歌やダンスの表現に安住せず、新しい挑戦をしてご自身の幅を広げようとしているのが分かって、今後の宮本佳林さんがますます楽しみになった。