2025年10月31日金曜日

GOLD SOUNDZ (2025-09-10)

余韻に浸らせてくれない。LiVSに限らず、いわゆるライヴ・アイドルと称される集団の常なのだろう。終わったと思ったらもう次が始まる。公演、対バン、フェスへの出演発表は半ばゲリラ的で、考える間も与えずにチケットが発売される。中長期的な予定は分からない。来月の全容でさえ確定していない。全体像が見えないから、これに行ってこれには行かないという取捨選択をするのが難しい。(もちろん後からでもチケットは買えるが、基本的に整理番号は先着順なのでどうせなら叩きたい。)LiVSは走るのをやめたら死んでしまうかのごとく走り続けている。変な話だが、こんなに走り続けていたら売れる暇がないのではないかと思うことがある。公演に向けた準備や練習、開催と回復だけで精一杯なのではないか。新しい取り組みや作戦の立案に割くための時間的な空白が不足しているのではないか。そもそもが少数精鋭だった運営も、何の発表や説明もなく姿を消したササガワさんの代わりが採用される様子はない。残されたスズキさんは見るからに多忙で大変そうである。氏が倒れたら日々の公演の開催さえままならないのではないか。こんな状態で集団の未来を舵取りしていく余裕はあるのだろうかと、余計なお世話ながら気になってしまう。それはともかく、月曜日にあのインテンシティの高い対バンを観たばかり。しばらく現場に行かなくてもいいかなと思えるくらいに素晴らしかった。それで二日後にまた対バンかよ。さすがにお腹いっぱいだ。もう少し月曜日の思い出の中に住ませてほしい。もちろん私にその自由はある。高頻度で公演があるからといってすべてに来る義務は我々にはない。今日のチケットを買ったのは自分だ。ここに来ると決めたのは他でもない自分だ。それなのに弱音を吐くのはおかしい。それは分かる。だがここで今日は行くのを止めておくというお利口で理性的な決断をしてしまうと、船を下りたような負い目をちょっとだけ感じてしまうのだ。もう私は引き返せない段階まで来ている。LiVSに関してこれから私が選べる道は(地方ツアーは別として)今の強度で公演に顔を出し続けるか、まったく行かなくなるかの二択だと思っている。たとえば月に二回までにしておくというようなまともな選択はもう出来ない身体になっている。ミニ・マルコchanにめちゃめちゃにされてしまった。氏のせいで私の銀行口座の残高は見る見る減っていき、気力、体力的にも綱渡り状態である。一方、氏とLiVSのおかげで、私はこれ以上ないくらいの幸せを手に入れているのもたしかだ。

これだけ頻繁に現場があると、毎回毎回同じように最高だったというわけにはいかない。もちろんこれは八割は私の問題だ。LiVSはいつだって全力で、魂を込めたパフォーマンスを見せてくれる。だが、それを受け止める私のキャパシティの問題がある。だから基本的には私の心身の調子がよければよいほど私は公演を楽しめる。でも何というのかな、それだけではない。それが残りの二割で、私がそれが何なのかをはっきりと分かっていない。いずれにしてもその日が最高の思い出になるのか、楽しみ切れないまま終わるのかは、事前にある程度の予想がつくとは言え、本当にそのときにならないと分からない。これはフットボールにも似ている。一見、フットボールとコンサートでは興行、娯楽としての性格がまったく異なるように見える。フットボールには台本がなく、コンサートはあらかじめセット・リストが決まっている。フットボールは観客を楽しませるよりも対戦相手に勝つことが優先される(というよりその二つのテーゼが不可分である)が、コンサートで演者は対戦相手に妨害されない。より純粋に観客の求めるあるいは自分たちのやりたいエンターテインメント、ショウを届けることが出来る。フットボールの試合は本当につまらないときもあるけど、コンサートは基本的に一定の楽しさが保証されている。(蛇足だがたまにTwitterで盛り上がるのがライブでおとなしく鑑賞するのがコンサートなぞと得意げに書いているオタクを見るが英語にそんな使い分けはない。そもそもliveの用法も和製英語である。間違いに間違いを重ねている。馬鹿げている。)しかし私はLiVSに常軌を逸した頻度で通うようになって、ライブ(このブログでは和製英語だと何度も注意書きを添えているが、私はそれを分かった上で便宜上、使っている)というものが思っていたよりも水物で、ナマモノなんだなと思うようになってきた。

あの凄まじいクオリティと強度の対バンからわずか二日後。現場への飢えが皆無。平日。明日もあさっても仕事がある。昼間はゴア・テックス搭載の靴が中までずぶ濡れになる土砂降り。外出のモチベーションも持ちづらい。それに、対バン相手を知らない。女アイドルならまだしも、男性のロック・ミュージシャン。あまり興味を持てない。そんな状態で行っても消化試合になるのではないか。普通に考えたらそうなる。だが蓋を開けてみたらなんのその。これがめちゃくちゃ良かったの。行ってよかった。対バン相手のトモフスキーさんとLiVSでは客層が全然違った。向こうはほぼ全員がマダム。LiVS運営のスズキさんが新規無料写メ券(条件:LiVSの公式アカウントのフォロー)を彼女たちに受け取ってもらおうとフロアを練り歩くも次々に拒絶される。誰ももらってくれません……的なことを助けを求めるように言ってくる困り顔のスズキさん(正直、そのときの彼女はちょっと可愛かった)。明らかに畑が違う。フロアで双方のファンが入り乱れるということはなく、棲み分けられていた。それでもお互いが無関心というわけではなく、同じ公演を一緒に作り上げている仲間のような、いいヴァイブスだった。大箱、大観衆の熱狂とは異なる、小箱、少人数ならではの安心感。対バンだとほとんどの場合、LiVSの自己紹介は名前だけの簡易versionだけど今日はfull verionsでやってくれた。つまり、マルコchanの替え歌を聴くことが出来た。たぶん8月18日(月)のLIQUIDROOMぶり。待ってました。嬉しい。マダムたちから笑い声が起きていた。新鮮な反応にマルコchanたちは嬉しそうだった。今日のライブはどういうわけかスイッチが入り熱くなることが出来た。汗だけで眼鏡が床に落ちるという珍事が起きた。(誰かの腕や肘が当たって眼鏡がずれたり曲がったりしたことは過去にもあった。)ヒヤッとした。すぐに拾って事なきを得たが踏まれたら12万円の眼鏡が終わりだった。このままだといつか壊れる。ライブ用にどうなってもいい安価なメガネを作らないといけないと思った。

トモフスキーさんの、年輪を感じさせる巧みな話術。アイドルって、本気系のアイドルと、“いわゆる”アイドルっているじゃん。これまで本気系だときのホ。とMAPAは知っていたけど今日そこにLiVSが加わった。と言ってから我々の盛り上がりを褒めてくれて、ファンも含めた総合力だと一番かもしれないと言って我々を持ち上げてくれた。トモフスキーさんの音楽は聴いていて心地が良かった。フロアでは人が動くことはなく、治安がよく平和だった。トモフスキーさんは1965年生まれ。若かりし頃はどうやらフロアにダイヴしたりともっと激しいスタイルだったようだが、年齢を重ねるにつれて落ち着いたスタイルに帰着したのかもしれない。ライブ中に差し歯が取れるというアクシデントで笑いが起きた。Dreams Come Trueに対するアンサー・ソングだという“Bad dreams also come true”(悪い夢だって実現するだぜ)が面白かった。男性客が多いフロアをトモフスキーさんは心底楽しんでいるようだった。たまには(自分の現場にも)来てくれよーと我々に呼び掛けていた。ただ、いくら好感を持ったところで異常な頻度でLiVS現場に駆り出され依存させられあらゆるリソースを搾取されている我々がトモフスキーさんの現場に行くのは難しいものがある。また対バンでご一緒させてくださいというのが現実的な回答である。我々はジャンキーなのである。

2025年10月28日火曜日

カイジューバイミー主催 Special 4 MAN「拡張戦線」 (2025-09-08)

疲れが抜けない。土日はFinallyの無銭を除けば予定らしい予定を入れなかった。極力ゆっくり休んだつもりだった。実際には活動を減らして睡眠時間を増やしても元気になっていくわけではないのが難しいところ。蓄積した夏の疲れもあるだろうし、もっと慢性的な問題としてLiVS現場に行っている頻度が自分の体力的なキャパシティを超えている。私は他の人より体力があるタイプでも、無理が効くタイプでもない。RPGのように一晩寝ればHPが全回復すればどんなに楽か。目撃者(LiVS支持者の総称)の中にはほぼすべての公演を地方から遠征してくるバケモンのような紳士たちが何人もいる。無限に湧き出てくるお金、時間、体力。私には無理。尊敬を通り越して、私から見るともはやホラーの域に達している。

BLUEGOATS、LiVS、きのホ。、カイジューバイミー。ビッグ・ネーム四組が一堂に会する対バン。豪華極まりない。カルピスの練乳割りくらい濃い(ⓒくりぃむしちゅー上田晋也)。チケットは完売必至だろう。インテンシティの高いフロアになること請け合いだ。気軽に行って適当にチルするような場ではない。楽しみだけど、月曜の夜からコッテリしすぎてはいないか。しかしこの面子で行かないという選択肢はない。後悔する可能性が高い。つい先日、私はBLUEGOATSとLiVSを同じステージで見るチャンスを逃したばかりだった。今回は絶対に行かないといけない。

渋谷近未来会館。前に一度だけ(たぶん)来たことがある。2023年9月18日(月・祝)。ゆいのののrelease party(今思うと結構おおきな会場でやっていたんだな)。私がLivepocketで買った3枚目のチケット。ちなみに最初が2023年5月15日(月)の谷藤海咲KissBee卒業ライブ。二年前なのでどういう会場だったかはよく覚えていないが、場所は何となく覚えていた。駅からちょっと外れたところ。坂を上がったところ。適当にメシを食おうと吉野家に入ったが適当にも程があった。まずすぎる。この牛丼チェインは店によってクオリティに大きなばらつきがある。渋谷のこの店舗は二度と利用しない。

BLUEGOATS、LiVS、きのホ。、カイジューバイミーという順番。私の整理番号はA35。BLUEGOATSのときは3列目の真ん中付近(やや右寄り)に入った。気持ちの準備は出来ていたのだが、セット・リストに新しい曲が多くてついていけなかった。やや消化不良感がある。もちろん最近のリリースを追い切れていない私が悪いのだが、聴き込めていない曲をその場で瞬時に理解して一緒に歌うのは難易度が高い。迷いが出てしまう。後日、LiVS現場でお会いしたBLUEGOATSおまいつの紳士にこのことを話すと、ウチらもついていけないときがあるんですよ、ちょっと目を離すと分からなくなると言っていた。対バンではもっと分かりやすい曲をやった方がいいのではないかと議論になっているらしい。そう、私も『東京タワー』や『戦う日々』を聴きたかったよ。というか歌いたかったよ。最近はサボり気味とはいえ、今日フロアにいたBLUEGOATS以外のファンの中では、私はBLUEGOATSの曲を比較的チェックしている方ではあったはずだ。私くらいの層がもっと躊躇なく乗れるセット・リストにしてくれていれば、それが周りにも波及してもっといいヴァイブスのフロアになったのではないだろうか。

BLUEGOATSが一組目(「トッパー」と言っていた。明らかに和製英語だ)に選ばれたことを、ほんま・かいなさんがしきりに悔しがっていた。ただ、朝から晩までやっているような、何十組も出る対バンなら分かるけど、今日の対バンに関しては一組目だろうと三組目だろうと(四組目は主催のカイジューバイミーで固定として)、そこまで扱いに差があるようには思えない。下に見られているとか舐められているとか、そういうことではないと思うけど。かいなさん自身が「トッパー」を下に見ていることを露呈する発言になったと思う。ただかいなさんに悪意はなかったと思うし、その素直さが彼女らしかった。

LiVSでは最前の左側に潜り込んだ。群衆が前に押し寄せる際には柵に押し付けられて身体が圧迫された。人が密集しすぎてスマ・フォを取り出す余裕がない。なので、盛り上がることに専念した。とにかくやられないように。負けないように。飲まれないように。他の集団の支持者たちにLiVSがどんなモンなのか見せつけてやるという気概で。普段LiVSを観ていないとおぼしき紳士たちが前方右側にいて、モッシュ(後ろから人が押し寄せてくる)の激しさに戸惑っているように見えた。ただ前に行けるからというだけで知らない集団を最前付近(特に中央)で観ることにはそれなりのリスクがあると理解する必要がある。ただ、対バン特有の集団的な高揚感があって、いつも以上に激しいフロアだったのは事実。LiVSの出番が終わると他集団の支持者とおぼしき紳士がお仲間に「これくらいでヒーヒー言ってちゃダメだよ。もっと激しいところもあるから」と言っていた。

LiVSが終わると私は後方に下がった。ドリンク・カウンターでジン・トニックをゲトッて、ちびちびやりながらきのホ。を見物。私はこの集団を観たことはなかったし、曲もまったく聴いたことがなかった。名前はたまに聞く。yumegiwa last girl、RAYと並びE氏のオキニ集団のひとつでもあった。メンバーさんの容姿もスキルも洗練されていて、好感を抱いた。変な話だが、すべての面で水準を満たす、ちゃんと見るに堪える、聴くに堪える集団だった。また観てみたい。この渋滞は誰のせい、だったかな、そんなフレーズをヘッズ側に歌わせる曲があって、印象的だった。フロアも平和な感じでとっつきやすそうだった。ちなみにきのホ。の最後の。はモーニング娘。の。と同じ扱いで読まないのかと思ったら半濁点記号が下に落ちている扱いで、きのぽと読むらしい。

右端の前方が空いていたのでカイジューバイミーはそこで観た。曲は聴いたことがある。BLUEGOATSのソンソナさんがこの集団をお好きで、前にメンバーさんを一人招いてYouTubeで対談していた。たしかそれでこの集団を知ったのだと思う。ひときわ目立つ超ハスキー・ヴォイスを持つ淑女の歌声は音源で聴く以上にソウルフルで迫力があった。圧倒される。私が今観ているのはアイドルのステージなのか? 彼女はアイドルなのか? そもそもアイドルとは何なのか? よく分からなくなってきた。私が目撃していたのはアイドル云々の前に紛れもないグッド・ミュージックであり、クオリティが高くソウルフルなパフォーマンスだった。それはカイジューバイミーだけではなく、BLUEGOATS、LiVS、きのホ。にも共通していた。『純白少女』が始まったときにフロアのギアが一段階上がる感じがたまらなかった。初めて聴いたときにドクター・ペッパーと電光石火で韻を踏んでいるのが印象的な曲だった。

ステージ上のクオリティとフロアの熱さを全集団が高いレヴェルで兼ね備えていた。いわゆる地下アイドルと呼ばれる界隈(の一部)をこれまで観てきてよかった。LiVSがこのような対バンで真っ向勝負する現場に居合わせることが出来、自分もフロアの構成要素になれたのはファン冥利に尽きる。そう心から思えるほどに素晴らしい対バンだった。LiVSが人の埋まったLIQUIDROOMのステージでパフォームするのを観たときも嬉しくて心が震えたけど、それとはまた違う感動があった。応援するチームがチャピオンズ・リーグに出ている感覚。2025年の個人的ベスト級。

特典会でLiVSに行く前にチャンチーさんに会いに行った。久し振りだよねと言うので6月以来、二ヶ月半ぶりだと答えると、やば、と彼女は言った。LiVSの公式teeを着ている私を見た彼女に「LiVSさんも好きなんだ。初めて知った」と言われた。いやまあ、その……。“も”というか、ね……。いくつかの言葉の塊が頭に浮かんだが余計なことを言うのはやめておこう。私は曖昧に頷いてやり過ごした。しかし色々なインディー・アイドルを見るようになって相場が分かった今となってはBLUEGOATSのチェキ券の高さが改めて身に染みる。一枚JPY2,500はちょっとね…。ただこの価格によって一旦、正気に戻るので、買う枚数が一枚だけになって、結果として出費が抑制されるかもしれない。たとえばこれがJPY1,500だったら三枚、四枚と買ってしまうかも。売上を最大化させるためには、客をギリギリで狂わせたままにしておく価格設定や、一定金額を買ったらおまけをつけるといった仕掛けが必要である。BLUEGOATSの値付けはある意味で良心的と言える。

ミニ・マルコchanに、彼女を見つけた初期からずっと気になっていたことを聞いてみた。Twitterのユーザー名における、ミニとマルコのあいだの「・」のことである。よく見ると「・」が狭いのだ。普通に打ってもその「・」は出てこない。今これを書いているコンピュータでは変換候補に表示されない。なぜ「・」が狭いのだろうか? 何か理由やこだわりがあるのだろうか? 真相を彼女に尋ねてみた。すると明快な回答が得られた。曰く、今Twitterの「・」が狭いのはスズキさんの打ち間違いで、それをそのまま使っている。本人としては広い「・」の方がいい。「改名しました」と言って広い「・」に変えようかと考えたこともある。次に衣装を変えるタイミングで変えようかとも考えている。いつか突っ込んでくる人がいるんじゃないかと思っていた。

2025年10月12日日曜日

Finally無銭LIVE『秋、哀愁、黄昏』 (2025-09-06)

Finallyの公式LINEというのがあって、私は購読している。たしかLiVSとの対バンで開演前にフロアでメンバーさんにもらったビラのQRコードから飛んだのだと思う。このアカウントは機能している。毎日のように情報が投稿されている。Finallyのこういうところは感心する。存在を知ってもらうところから継続的に興味を持ってもらい現場に定期的に来てもらうまでの各種仕掛け、仕組みがきちんとデザインされている。LiVSの何歩も先を行っている。おそらくFinallyを真似てだと思う(Finallyとの対バンの直後から始めていたので)けど、LiVSのメンバーも対バンで開演前にビラを配るようになった。他陣営のいい部分をすぐに取り入れるのはナイス。だが、本当に学ぶべきなのは運営側である。と言ってもそんなことを考える余裕もないくらいシンプルに手が足りていないのだろうけど…。定期的に開催される無銭ライブもその仕掛けのひとつだ。11月のLIQUIDROOM公演までに一度は行きたいと思っていた。というのがこの無銭ライブでLIQUIDROOMのチケットを買うとどうやらメンバーさん全員との集合写メを撮ってもらえるらしいからだ。いずれにしてもチケットは買うつもりだった。どうせならお得な特典がついているときに買いたい。8月17日(日)の無銭にも行こうと思えば行けたのだが、その日はLiVSのLIQUIDROOM前日だった。直前に余計な刺激を入れたくなかったのでパスした。

昨日と一昨日の雨で少し涼しくなったかと思いきや、昼間は蒸し暑い。東京の不快な夏そのもの。それはそう。まだ9月も始まったばかり。今日の公演名『秋、哀愁、黄昏』は最低でも一ヶ月は早まっている。今日は11時15分開場、11時45分開演。開場30分前(10時45分)から入場整理券が配布されるらしい。開場はShibuya Milkyway。初めての会場、初めての参加で勝手も分かっていない。早めに行く。10時の開店と同時にIKEA渋谷店。プラント・ベース・ソフト・クリーム。JPY50。その先にあるファミリー・マートでモカ・ブレンド(S)JPY160を飲んでから会場へ。どうやら同じビルヂングでFinallyを含めて同時に三つくらいの現場が開催されるらしい。どの人たちがFinally待ちなのかがパッと見で分からない。この人なら間違いないだろうと思い、Finallyとプリントされたteeをお召しになった紳士に声をかける。親切に教えてくれた。10時45分になったら上の階(Milkywayは3階)に行って整理券をもらう。11時15分になったら番号の呼び出しが始まるのでそれに従って入場する。入場までの間にその紳士と少し歓談させていただいた。(氏とは後日LiVS単独ライブと対バンで再会。お知り合いとなった。知らない人に自分から声をかけると思わぬ縁が生まれる。)

無銭とは思えないくらい充実した公演だった。一時間くらいやってくれたのかな? 秋だからということで(実際には夏だが)、セット・リストはしっとり系でまとめてあった。Finally名物のサークルが発生せず、落ち着いて観ることが出来た。ハーコーなFimilly(ファイミリー。Finally支持者の総称)はもしかすると物足りなかったかもしれないが、私としては快適だった。私の中にあったFinallyの、盛り上げ上手なメンバーさんとお祭りノリのフロアという印象がちょっと変わった。そして、メンバーさんを二つのチームに分けての運動会。ステージからメンバーさんがボールを投げる。各チームを代表する(入場時にどちらのチームかが書かれた紙が配布される)オタクが籠を持ってボールを受け止める。多くボールが入った方が勝ち。Aoiチャンのいる白チーム(私も白チームだった)が勝利を収めたのだが、勝った方のメンバーにもオタクにも何も特典がなく。写メ券でももらえれば嬉しかったけど、よく考えたら無銭でそれを求めるのはさすがに図々しいか。すみません。ステージからジャージ姿が眼福だった。レアらしい。Aoiチャンのメンバー・カラーは白だが割り当てられたジャージは白だった(白だと▒▒が透けちゃうからカナ?)。ジャージ姿のメンバーさんたちと全員写メ。撮るだけで終わりだったので会話らしい会話は出来なかったが、撮る前にAoiチャンを見て「Aoiさん…」と言うと「Aoiさん?(笑)」と言ってしょうがないなあ(笑)という感じで隣に来てくれた。なお、私は未だにAoiチャン以外のメンバーさんのお名前とお顔が一致していない。Aoiチャン以外に関してはまだ『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)の域を出ていないのが正直なところだ。特典会でAoiチャンにジャージ似合うよね。北関東って感じで。ドン・キホーテにいそう。と言うと、ヤンキーじゃないよ! と言っていた。会場を出て、目撃者と元目撃者の三人でいんでぃらでメシをご一緒する。お二人と別れてからJUICE STAND BUBBLES渋谷スクランブル・スクエア店へ。国際すいか生絞り(S)JPY680。ミニ・マルコchanが8月7日(木)の投稿でPRONTOのスイカ・ジュースが好きだと書いていたが、8月26日(火)の特典会でスイカの話になったとき、最近はPRONTOのよりもこっちが好きだと言っていた(ちなみに彼女はスクランブル・スクエアのことをスク・スクと言っていた)。帰りに寄ってみてと言われていたのだが、その時は既に閉店時間を過ぎていた。

リブマッパ (2025-08-31)

たとえばこれが数ヶ月に一回とかせいぜい月に一、二回とかだったらその日に合わせて心身の状態を整えるということが出来る。平日も土日も関係なく月に10回前後も現場があるとそういうわけにはいかない。日常の細かい体調の浮き沈みをそのまま現場に持ち込まざるを得なくなる。もちろん熱が出て寝込んでいるとかの明確な体調不良なら行くのを断念するけど、現実の我々って常に体調不良みたいなもんじゃん。40点と70点の間を行き来してるようなさ。もはや100点がどういう状態なのかも分からなくなっている。バッテリーの摩耗したiPhone。LiVSのメンバーさんの場合は70点から100点くらいの幅で推移しているのかもしれないけど、好不調の波自体がないわけがない。今日は何かイライラするとかダルいとか調子が悪いとか、そういう日はあるはずだ。いくら若いとは言っても、毎日同じように絶好調は不可能。人間だもの。でもそれを感じさせない。プロフェッショナル。やっていることの性質が異なるとはいえ、彼女たちにとってのLiVSでの活動は私たちにとっての労働に相当するわけで、それをこれだけ強度高く、魂を込めて、熱意を持続させながら継続してくれているのは本当に尊敬に値する。私に関して言うと、正直なところ、今日はちょっと調子が出ないなと感じながらやり過ごしているときも、公演によってはある。根本にあるのは疲れでしょうね。一応フル・タイムで働いた上でこれだけの頻度でフロアに来ていると、疲労のマネジメントが容易ではない。昨日はいまいち肌に合わない対バン相手の音楽とフロアのノリを横目で見ながら、このままLiVSの現場からフェイド・アウトしようかなという考えが頭をよぎっていた。

今日は幸いにも昨日の精神状態を引きずることなく楽しめた。対バン相手のMAPAによるところが大きい。LiVSとMAPAではフロアの親和性は低い。スタイルが全然違う。お互いの支持者たちが一緒になってわちゃわちゃ盛り上がるというよりは、MAPAの時間とLiVSの時間で完全に棲み分けが起きている。それも当然。LiVSの支持層は9割がむさ苦しいオジサン。MAPAは若い女性が多数派。LiVSは多発するケチャで最前中央付近が目まぐるしく人が入れ替わる。ミックスやコールがけたたましい。MAPAは立ち位置固定で、皆さんおとなしくペン・ライトを振りつつ(それも行儀よく、周囲に配慮して低い位置にとどめている)音に聴き入っている。MAPA支持者たちが私たちのことを野蛮な奴らと思ったとしても無理はない。おそらく私がMAPA支持者ならそう思うだろう。私がまだLiVSに通い始める前の段階で、まだミニ・マルコchanを見つけていない状態で、第三者としてMAPAとLiVSのフロアを見たら、MAPAの方が性に合うと思っていたかもしれない。私はLiVSに行き始めた頃、後方や端っこで観ていた。フロアの激しさに面食らっていた。今では前で観ることやマルコchanのソロ・ラインで前に突っ込むことに躊躇いがなくなった。諸先輩に優しく導いていただき仲間に入れていただいたのが大きい。フットボールでいうとLiVSのフロアは全員がゴール裏、MAPAはメイン・スタンドって感じ。私が実際にフットボールを観るときはそのどちらでもなく、ゴール裏に近いバック・スタンドを選ぶ。試合(ショウ、コンサート等々)を隅々までちゃんと観たい。その上でピッチ(ステージ)で表現されているプレイにしっかりと声や拍手で反応したい。ゴール裏に近いバック・スタンド民というのが、フットボール以外の興行においても私の根っこにあるスタンスなんだと思う。

MAPAは前に対バンで観たことがあった。そのときは曲が全然いいとは思わなかった。今回、再び観させてもらって印象が変わってきた。前より近くで観たからなのか、二回目だからなのか、どういうわけか今日は彼女たちの音楽に徐々に引き込まれてきた。二つくらい、おっと思う曲があった。Spotifyでちゃんと聴いてみようと思った。『アイドルを辞める日』とかいいよね。後で知ったが大森靖子がプロデュースしている集団らしい。客層にも納得。そういえば、私がLiVSを知るきっかけとなったBLUEGOATSとのツー・マン(和製英語)は、その前の週に行くはずだったBLUEGOATSのツー・マンを風邪で干したことで急遽、チケットを取っていた。そのツー・マンの相手がMAPAだった。あのとき風邪をひいていなければLiVSとミニ・マルコchanに出会うことはなかったかもしれない。もしその後に何かの機会で観ることがあったとしても、はまることはなかったかもしれない。『風邪の効用』(野口晴哉)である(意味が違う)。

2025年10月11日土曜日

熱烈峻厳Vol.7 -CLUB CRAWL 20TH SP2MANLIVE- (2025-08-26)

久し振りに企画らしい企画っていうか、変わり種の回。6月22日(日)の『雨降って地固まる公演』以来かな。どうやら今回はLiVSというよりはもっと会場ぐるみの企画。CLUB CRAWLが20周年らしく。高山クオリティーという業者によって食べ物が販売されるのが目玉。食べる時間がタイム・テーブルの中に組み込まれている。飲食物は普段から持ち込み禁止である。今日に関しては公式に提供(販売)されることでフロアでの食事が公認される。食べる時間がタイム・テーブルの中に組み込まれている。
18:30-19:00 開場・フードもぐもぐタイム 
19:00-19:40 LiVS
19:40-19:50 転換・フードもぐもぐタイム
19:50-20:30 ゑんら
終演後特典会・フードもぐもぐタイム

ここまで来ると高山クオリティーが提供(販売)する食べ物も公演の一部である。正直、あまり気乗りがしなかった。公演の前にKEBAB CHEFSかいんでぃらで夕食を済ませたい気持ちはあった。たださすがにそれでは無粋だ。ノリが悪い。この公演を完全に体験していないことになる。だが、事前に発表されたメニュウを見て雲行きが怪しいなと思った。オム・ライスJPY500、ワッフルJPY200。以上。値段そのものは良心的ではあるが、JPY500のオム・ライスに多くを期待できるわけがない。クオリティの前に単純に量が少ないであろう。オム・ライスで足りなければワッフルで補うというアイデアも全然セクシーじゃない。相乗効果があるようにも思えない。高揚する要素がほとんどない。どういう考えでこのライン・アップに決めたんだろう。こういうイヴェントに必要なのは肉だよ、肉。たとえばさ、ケバブ。ハンバーグ。ホット・ドッグ。それなりのものを出せば値段はJPY1,000でも、あるいはもっと高くても皆ンな喜んで食べたんじゃないかな。
わかってねえな わかってねえな わかってねえな わかってねえな
わかってねえな わかってねえな わかってねえな わかってねえな
(崇勲、『わかってねえな』)

フロアの端(普段は開演前後に物販が行われる場所)に設置された簡易コンロで、公演と並行してオム・ライスの調理が行われた。バターの香りが漂ってくるライブ。シュールで可笑しかった。通常であればライブは聴覚と視覚がほぼすべて。嗅覚とはほとんど関係ない。(Hello! Projectであればオタクの異臭が鼻をつくこともあるが、LiVSでは今のところそういう経験がない。)嗅覚や味覚までもライブ体験の中に取り入れるのは発想として面白い。(もちろん、LiVSのメンバーさんたちの匂いを嗅げたほうがいいのは言うまでもない。マルコchanの匂いを知りたい。)今後もしかするとバターの香りがすると今日のことを思い出すかもしれない。

そう言えば前から思っていたんだけど、ミニ・マルコchanは“He Meets”の冒頭で「こぼれ落ちる気持ちが」を「こVOれ落ちる気持ちが」という感じに発声している(ように私には聞こえる)。こういうのってあるよね。最近だと #KTCHAN の“our emotions”でラ行をRの音で歌っている(ように聞こえる)。「たぎRU気持ちまた沈み そREでも混ざり変わRUの」のような具合に。それで思い出したけどモーニング娘。の『愛の軍団』ではフックを「ワイの軍団」と歌うように指導されているメンバーさんと「ヤイの軍団」と歌うように指導されているメンバーさんがいたと記憶している。こうやって言葉通りにそのまま発声するんじゃなくてちょっと音をずらして歌うというのがこの世界では技法としてあるんだろうな。おそらく。「こVOれ落ちる」については今度マルコchanに聞いてみるか。

LiVSとゑんらの間にオム・ライスを買ってフロアの一番後ろで食べた。おいしいかおいしくないかの二分法で言えばおいしいけど、トマト・ライスに具が何も入っていないし、これだったら別に卵かけご飯でよくね? と思ってしまった。(もちろんJPY500なんだからゴチャゴチャ言うべきではない。ちなみに私はCLUB CRAWLで食べることになるオム・ライスの質と量を最初から見くびっていたので入場前にファミリー・マートでたんぱく質16.7g グリル・チキン ゆず七味を買って食べていた。正解だった。)ごめん。大目に見てほしい。私は一年に365日、外食している。外で買うメシに関しては自ずとうるさくなってしまうんだ。日本以外ではインド、ドイツ、中国、アメリカ(ハワイ含む)で、独りで飲食店に飛び込んできた。さらに言うと、私が支持ししてる横浜F・マリノスは充実したスタ・グルで有名である。クオリティの高さは折り紙付きで、他クラブの関係者も視察に訪れるという。試合開催日にはフットボールに興味がない近隣住民も祭り感覚で遊びに来ると聞く。もちろん中には大したことがない店もある。(スタ・グルの宿命ではあるが全体として割高なのも間違いない。安く済ませたいなら瀬戸うどんかサイゼリヤに行くべきだ。)ただ中には一般的な祭り屋台では考えられないほどにクオリティの高い店もある。私が食べてきた中ではコルポデラストレーガと吉清は自信を持ってお勧め出来る。そのままゑんらを観ているとテーブルを挟んで後ろにランルウさんとミニ・マルコchanが来るのが見えた。やや気まずかったが退避できる空間もなく、後ろを振り向かないようにしてそのまま過ごした。

ゑんらの滝口ひかりさんがやたらと美形だった。あとで検索して30歳だと知って声が出た(この執筆時点では31歳になられている)。23-25歳くらいかなと思っていた。新規無料特典を利用して氏と写メを撮らせてもらった。普通アイドルってさ、えー、はじめましてー! 来てくれたのー? ありがとー。名前なんていうの? 的な感じじゃないですか。滝口ひかりさんは全然違っててさ。すげーちゃんとしてるの。あ、すみません。わざわざ来ていただいて。ありがとうございますって感じで。礼儀正しいの。カタギの世界での就労経験がそれなりにあるのかな? 私は基本的に初対面のアイドルさんには敬語で話すんだけど、向こうもずっと敬語で。ゑんらは着物をアレンジしたような衣装で、曲もそういう雰囲気だったので、和風な感じなんですね、と私が言うと、そうなんです。琴の音を入れたりして。もっと可愛い曲もあるんですけどね、今日はLiVSさんに合わせてカッコ良くしてみました的なことを言っていた。私が元々はHello! Projectのオタクである旨をお話しすると、前のグループでこぶしファクトリーと同じ対バンに出たことがあるとのことだった。

2025年10月5日日曜日

武蔵野音楽祭 (2025-08-30)

葬式には友人が集まるが、ときには敵だって来る。何やら嬉しい気分になるらしい。
(ミシェル・ウエルベック、『地図と領土』)

初めて観に行ったラップ・バトルの大会(戦極MCBATTLE第10章。2014年10月19日)。バトルの前だったか合間だったかにライブをしていたOMSBがフロアの盛り上がりに不満だったらしく「葬式じゃねえんだよ」と言うと、後方から「葬式だよ、バーカ!」という殺気のある野次が飛んでピリついた。仕事柄こういうDQNを相手にするのは慣れているようでOMSBは「そんな悲しいこと言うなよ」と軽くいなしてから次の曲へと移った。ラップ・バトルの大会は何度か観に行ったけど、バトルとライブではヘッズの熱量が異なる。お前らバトルではあんなに盛り上がるのにライブはおとなしく見やがって。好きじゃねえのか? 自分の曲を披露するラッパーがフロアに向けてそういう不満を表明する場面を何度も見てきた。観客が楽しんでいること、披露されている音楽が好きであることを、沸くこと、盛り上がることで、ステージから見える形で表さないといけない。観客が静かに観ていたらそれは楽しんでいない、演者がやっている音楽を好きではない。ジャンルを問わず、こういった考え方は割と一般的である。実際、それがコンサートであれフットボールであれラップ・バトルであれ、ライヴ・エンターテインメントは観客も参加して一緒に作り上げるものである。観客の反応が演者のパフォーマンスに影響を与えることもある。特に先述のラップ・バトルやジャズなど即興性の高いジャンルにおいてはそれが顕著である。即興性の低いジャンルであったとしても、観客の反応が良ければ演者の気分が乗ってくるということはあるだろう。その点においてライヴ・エンターテインメントを現地で観るという行為は、映画を観るのとは決定的に異なる。映画を観客がどう観ようと映画の内容は絶対に変わらないからだ。ライブハウス、スタジアムなどの現地に何かを観に行く際には、与えられた興行をお客さんとして鑑賞するのではなく、その空間を構成する一員として参加しているという自覚を持ち、それを態度に表すのが重要である。だから私は日産スタジアムで横浜F・マリノスの試合前に『民衆の歌』を大きな声で歌う(バック・スタンドではほとんどの人が恥ずかしがって歌わない)。

盛り上がること。盛り上げること。それは一種のスキルである。目撃者(LiVS支持者)はその点において非常に優れている。それがアイドルであろうとバンドであろうと、それが初めて聴く曲であったとしても、対バン相手のノリを即座に理解し、フロアに溶け込むことが出来る。対バンへの参加の仕方として模範的である。他の出演者やファンに非常に良い印象を与えることだろう。目撃者の皆さんは本当にライブハウス(和製英語)慣れしている。ライブハウス(和製英語)で行われるタイプの興行における立ち振る舞いについては見習うべき点が多い。ただ、私はどうもそっちに染まり切れないというか、馴染み切れない部分がある。これは私が社交性の低い陰キャだからこういうひねくれたことを書いてしまうのだが、何にでも対応できる、どんなアイドルやバンドだろうと盛り上がれるんだったら、別にLiVSばかりを追いかける必要がないのでは? この集団に私たちが人生のリソース(お金、時間)を大量に突っ込んでいるのは、どうしてもLiVSじゃないといけない理由があるからじゃないのか? LiVSの音楽じゃないと、LiVSのメンバーじゃないといけないんじゃないのか? 私は先日の武蔵野音楽祭で某集団のライブをノリノリで盛り上げていた目撃者の皆さんの協調性とスキルに感心すると同時に少しがっかりした。あ、こんなのでよかったんだって。私はだいぶ昔、ゴスペラーズがアメリカに行くドキュメンタリーを観たことがある。現地のクラブに飛び込みでゲスト出演した際、なんか英語も喋れないジャップが来たよ笑という空気に包まれていた。歌い出しても来場者からまともに相手にしてもらえず、指笛まで吹かれていたような記憶がある。だが、歌が進んでいくにつれ、ゴスペラーズの実力を目の当たりにした観客。徐々に反応が変わっていき、最終的には盛大な歓声と拍手が生まれた。そこまでギスギスする必要はないかもしれないが、もう少し音楽とパフォーマンスのクオリティに対する厳しい目線があってもいいのではないだろうか? 最近、対バンを観る機会が多くなって、私の中にこの疑問が芽生えている。はっきり言って対バンに出てくるアイドルなんて玉石混淆(混合が誤用だと知った)である。玉と石は明確に区別して別のものとして扱わないといけない。もしステージにいるのが玉だろうが石だろうが関係なくフロアで動き回ってめちゃくちゃ楽しいのであればもはや音楽などほぼ関係なく、それは単に有酸素運動の爽快さではないだろうか? お酒を飲んでほろ酔いの状態でいつもの仲間たちとワイワイ騒ぐのが本質なのだとしたらそれは飲み会と変わらないのではないだろうか?(ちなみに、葬式のような静けさが是とされる現場もある。2023年に行ったハハノシキュウさんの独演会がそうだった。)

音楽や表現をしっかりと自分の目と耳で受け止めたいのか、それともフロアで盛り上がりたいのか。実際にはバランスの問題にはなってくるものの、この二つの価値観は根っこでは相容れない。フットボールで言うとバック・スタンドで試合を観たいのか、ゴール裏でみんなと応援歌を歌って飛び跳ねたいのかの違いに相当する。ゴール裏で試合を観ている人に聞いたことがあるのだが、試合はほとんど見えなくて、後からDAZNで観るらしい。ライブもコールを歌に被せたらその歌は聞けない。オタク同士で向き合ってミックスを打っていたらステージは見えない。冒頭に書いたOMSBのエピソード。葬式のようにおとなしかった観客は、OMSBの音楽が大好きで氏の音楽に聴き入っていたかもしれない。もしその代わりに地下アイドルのオタクが集団でおしかけ、曲もまともに聴かずにサークルをおっぱじめたりコールやミックスなどを打ち始めたとする。OMSBはそれで喜んでいただろうか? とにもかくにもフロアが“盛り上がっている”様子を見られればそれでご満悦なのだろうか?(案外そうなのかもしれないが…。)

今日はっきりと確信したこととして、私が求めること、大切にしていること、それは第一にクオリティ。そのクオリティに心酔して高揚することはあれど、騒ぎたいという欲求が先にあるわけではない。表現のパフォーマンス、音楽のレヴェル。それらが一定の基準を満たさなければお話にならない。ただフロアを盛り上げることだけを目的に作られたような曲でわちゃわちゃする気にはなれない。それだったら本当に上手な歌や演奏を黙って座って聴いていたほうがいい。今日の対バン相手の音楽は、私にははまらなかった。『ブラック・マシン・ミュージック』という米のディスコ・カルチャーに関する本を読んでいたら“I Gotta Big Dick”という曲とか、喘ぎ声を収録した曲とかが過去に流行ったと書いてあった。私が好きなJ Dillaの“Crushin' (Yeeeeaah!)”はI wanna fuck all nightを連呼している。MC松島は『ビッグちんちん』という曲をリリースしている。そもそもディスコ自体の出自がニュー・ヨークのゲイ・クラブであって、ダンスもゲイの性的な解放と結びついていたらしい。だから音楽に下ネタや性的な表現を取り入れることについてはまったく否定するつもりはない。単純に彼らの曲を聴いていいと思えなかっただけ。でも、特典会でマルコchanが私の目を見て彼らの曲名(男性器の名称を含む)を言ってくれた上に、その単語を何度も繰り返して言ってくれたのでそんなことはどうでもよくなった。

Chemistry LiVE with LiVS (2025-08-24)

毎日、毎日、うんざりする。この蒸し暑さ。真の敵は気温ではなく湿度。よくもまあ世の中が何事もなかったかのように回っているよなと思う。発狂してもおかしくないでしょこんなの。半袖teeを一日に何回も着替える生活から抜け出したい(着替えられればマシ。家にいなければ汗をかいても同じ服を着続けないといけない)。早く長袖を着たい。秋冬に備えてこの数ヶ月でスウェット・シャツを数着買ってある。もう秋冬の準備は出来ている。でも分かっている。実際に長袖を快適に着られるようになるのは10月になってからだろう。スウェット・シャツとなるともっと先になる。私は2017年2018年2019年2020年2021年と五年連続でみーたん(小野瑞歩さん)のバースデー・イヴェントを観に行っていた。概ね毎年、氏のお誕生日である9月29日に開催されていた。例年、このイヴェントでようやく長袖を着ても暑すぎない程度の気候になっていた。実際には半袖で十分。年に一度のみーたんの晴れ舞台にお洒落をして行くために瘦せ我慢をしながら長袖を着ていたのを覚えている。(ちなみにこれを書いているのは10月5日。みーたんは今でもつばきファクトリーで活動を続けている。今年は10月8日にバースデー・イヴェントを開催するようである。)

昨日はBLUEGOATS、Finally、LiVSというとてつもない面子のスリー・マン(和製英語)が開催されていた。元々BLUEGOATSが好きで観に行ったLiVSとのツー・マン(和製英語)でミニ・マルコchanを発見して狂ってしまい今に至る私にとっては、この二組の再会を目撃できる垂涎ものの対バンだった。FinallyにもAoiチャンを筆頭に好印象を持っている。BLUEGOATSだとチャンチーさん。LiVSは言わずもがな。いわゆる“推し”に該当する人物が三つの集団すべてに在籍している(もちろんマルコchanは別格だヨ。“推し”なんていう軽い言葉では表せないヨ)。私はDD(ディーン・デイビッド、ではなく誰でも大好きの略)ではないので、対バンの全組にいわゆる“推し”がいるなんてことはまずあり得ない。それだけ稀少な現場であった。しかしながらそちらのチケットは購入せず、同時刻に日産スタジアムで行われた横浜F・マリノス対FC町田ゼルビアを観に行った。なぜなら私の本質はキモいアイドル・オタクではなくキモくないフットボール好きの一般人だからである。愛するマリノスが明治安田J1リーグに残れるかどうかの窮地。スタジアムに行かないわけにはいかない。対バンを昼にやってくれていたらフットボールと回せたのだが、よりによってまったく同時刻(19:30)に始まるっていうね。残念。タイムラインに流れてくる諸氏のトゥイートを見るに、対バンは相当、盛り上がったらしい。ランルウさんがフロアにダイヴしたとか。でもそういう情報は極力、目にしないようにした。自分が行きたかったけど行かなかった(行けなかった)現場がこれだけ楽しかったという情報をスマ・フォで見るのは避けた方がいい。無意識に他人と自分を比較して惨めな思いをするからだ。止まらなくなる他人への羨みと嫉妬。よく言われるようにこれがソーシャル・メディアが利用者のメンタル・ヘルスを損なうメカニズムである。だから他人のチェキ・ツイや接触レポからも距離をとったほうがいい。自分が行ける範囲で現場に行き、自分で感じ取ったものを大切にするべきだ。そういう趣旨のことをある青年がブログに書いていて腑に落ちた(前にもこのブログで取り上げたことがあるよね?)。彼のブログ・タイトル、『目で見たものだけがリアルだろ』。肝に銘ずるべき。マリノスは町田と引き分けて勝ち点1を獲得。J2降格圏から抜け出した。四月以来らしい。私はマリノスを選んだことを後悔していない。

Rayとのツー・マン(和製英語)。yumegiwa last girlと並びE氏がご愛好されていた集団のひとつであった。音楽性にこだわっている集団との触れ込みで氏に勧められ、Spotifyにあった曲を一通り聴いたことがある。当時、“KAMONE”という曲はlikeしていた。ただ、そんなにピンとは来ていなかった。何というのかな、一般的なアイドルのポップスやロックとは違う。分かりやすく可愛いとかカッコいいとかではない。一回だけ聞き流してお気軽にいいねと反応できるようなキャッチーさがない。何回も繰り返して聴けば良さが分かっていくかもしれない、そういうタイプの音楽。実際に観た印象として、何となく大きな方向性としてはyumegiwa last girlに近いかもしれない。雰囲気的に。フロアを沸かせるというよりはしっとりと魅せる、聴かせる感じ。そこまで声を張らない歌唱。腹の底からありったけの声を出してソウルフルに、ロックに、という感じとは違う。本当はライブハウス(和製英語)よりは座席つきの劇場のような会場のほうが持ち味が発揮できるのかもしれない。

LiVSがLife is Very Shortの略であることにちなみ、ウチらも更なる世界進出のためにRayが何の略なのかを考えようという感じで大喜利を始めていた。メンバーさんの誰かによるRevolution, AAAHHH, YEAHHHH!!!!という勢いに任せた力技が面白かった。ミニ・マルコchanと背丈と髪形(ボブ)が酷似したメンバーさんはRoast almond yummy!!!と言っていた。(これを受けてLiVS側も新しいLiVSの正式名称を発表していたが、ひとつも覚えていない。たしかマルコchanだったと思うけど初手でLをLiVSの略として使っていてそれじゃ意味ないよと思ってしまった。)Rayではこの淑女が一番気になった。小動物担当らしい。月海まおchan。新規無料特典を利用し、終演後の特典会で氏と面会。LiVSではミニ・マルコが好きなんですけどという話をするとまおchanはマルコchanについて、歌が上手い。息の使い方が好き。と言っていた。ミニ・マルコchanにそれを伝えると嬉しそうだった。照れちゃうと言っていた。

2025年10月4日土曜日

LiVS 2nd Anniversary LiVE (2025-08-18)

全員かじった禁断の実 今待ち受けてるのは審判の日
全員かじった禁断の実 もうじき来るぞ審判の日
全員かじった禁断の実 今待ち受けてるのは審判の日
全員かじった禁断の実 もうじき来るぞ審判の日
(Kダブシャイン、『ザ ジャッジメントデイ』)

正直に言う。楽しみだったのと同じくらい、私はこの日が来るのを恐れていた。巻き戻す時計の針。2025年5月7日(火)。下北沢シャングリラ。“Revenge Shangrila”ツアー、千穐楽。2024年8月13日(火)にLiVSが満員に出来なかったこの会場を、今度こそ埋めてやる。その思いが込められたツアー名。結果は誤魔化しようがない。実際にチケットが何枚売れて、何人が入場したのか、私は知らない。それでも“Revenge”が出来たとは到底言えないと断言できるくらい、フロアは空いていた。当時を知る目撃者(LiVS支持者の総称)によると前回よりも人が少なかったらしい。公演中にミニ・マルコchanが流した、あの悔し涙。ごめんなさい、と言ってフロアに向けて深々と頭を下げる彼女の姿。私の頭にこびりついて離れない。折に触れてフラッシュ・バックする。あのとき埋められなかった下北沢シャングリラの収容人数が600人。それに対し今日のLIQUIDROOMは900人。600人の会場を満員にした集団が、次のステップとして、適切な期間を置いた上で900人の会場に挑むというのなら分かる。600人を埋められなかった集団がわずか三ヶ月強で900人を目指すのである。もう無理ゲーじゃねえか。動員を増やすために手を打つにしても期間が短すぎるでしょ。また公演のどこかでメンバーさんが神妙な面持ちで整列して、今回もダメでしたって言うのを聞かされるのか…あの苦痛を再び味わうことになるのか…せめてマルコchan以外の口から言ってくれ…。今日のことを考えて胸が苦しくなることが何度もあった。見たくなかった現実。聞きたくなかった言葉。そういったものと直面させられるのが怖かった。それでも遂にこの日が訪れてしまった。

もし今回も結果が芳しくなかったら。これからのLiVSはどうなってしまうんだろうか。メンバーさんはモチベーションを失ってしまうのではないだろうか。普通の女の子に戻る決断をしてしまうのではないだろうか。(もう私たちは普通のオジサンには戻れないというのに…。)ひとつ言えるのは、シャングリラの悪夢から今日までの三ヶ月強、LiVSが動員を増やすための手を打ってきたことに疑いの余地はない。特に7月5日(土)から7月27日(日)にかけて行われた主催対バン・ツアー(Chemistry LiVE with LiVS TOUR)では仙台、千葉、埼玉、大阪、愛知、横浜を回り、総勢11組もの同業者たちを呼び集めた。目的は説明されなくても分かる。一人でも多くの人たちにLiVSを知ってもらい、LIQUIDROOM公演に来てもらうこと。この対バン・ツアーは昼に開催され、いずれの日も夜に通常のツアー公演があるという二本立てだった。LiVSはこの主催ツアー以外にも数多くの対バンに出演してきた。ひとつひとつの公演で魂を燃やし尽くすくらいの覚悟と気持ちを、私はLiVSのメンバーさんから感じた。LIQUIDROOMを埋めるという目標に対し、その打ち手が吉と出るか、凶と出るか。と思っていた矢先に発表される、ユニセックスさんの脱退。よりによって今かよ、というタイミング。

厳しい日程。先述したように下北沢シャングリラ公演から三ヶ月強という期間の短さ。600人の会場を埋められなかった集団が900人を埋められるようになるための期間としては相当にきついのではないか。6月28日(土)にLiVSがツー・マン(和製英語)公演を行ったFinallyもLIQUIDROOM公演が決まっていた。しかし彼女らのLIQUIDROOM公演は11月9日(日)。LiVSよりも三ヶ月近く期間がある。LiVSと違って日曜日。そして、そもそもの集客能力がLiVSより上。一方、8月18日(月)は一般的には夏季休暇明けの最初の平日。もちろん実際の休暇スケジュールは業種、会社、職種、個人によって異なる。だが昨日まで盆休みだった人は多かったはずである。先週は通勤電車がやけに空いていたし、土日も池袋や新大久保のストリートにいつもの賑わいはなかった。8月18日(月)に来たくても来るのが容易ではない人は多かったはずである。難易度の高い日程で大切なコンサートを開催するのはLiVSだけの悪癖ではない。Hello! Projectでさえ日本武道館での公演を平日に行うのが通例である。需要のピークを外した日だと会場の使用料が安いのだろう。私の場合、今の勤め先には一斉の盆休みというのが存在しない。7月から9月の間に三日間、各々が自由に夏休みを取るシステム。そのうちの一日を今日に充てた。幸いなことに仕事の状況的にも休みを取るのは困難ではなかった。(一度ヒヤッとしたのが次の週に海外出張が入りそうになったことだ。一週間ずれていたら大変なことになっていた。肝を冷やしたが、結局はその出張自体が中止になった。)

狂っている東京の夏。人間がまともに活動していい気温と湿度ではない。まるでラッパ我リヤの1stアルバムのように“SUPER HARD”。日々を文字通り生き抜いているだけで有森裕子さんのように自分で自分を褒めてあげたくなる。こんな季節に、ここまで詰め込めなくていいんじゃないか。こんな季節に、集団の存亡を懸けるような勝負どころを持ってこなくてもいいんじゃないか。もうちょっと強度を落として、休み休み、のらりくらりやり過ごす時期にしていてもいいんじゃないか。メンバーさんに一週間くらいの夏休みを与えてもいいんじゃないか(あ、でもあんまり自由を与えちゃうと彼氏サンとたくさん会っちゃうか…)。私はたまにそう思うことがあった。今日も外を歩くだけで垂れ落ちて目に入ってくる汗。600人の会場を埋められなかったのに今度は900人の会場を埋めないといけないという状況。そのために与えられた三ヶ月強という短すぎる期間。メンバーの脱退。そして過酷な気候。とにかくこの期間はLiVSにとってはすべてがスーパー・ハード・モードだったように思う。端的に言うと、分の悪い勝負に思えた。

LIQUIDROOMには何かのMCバトルで来たのは覚えている。それを含め過去に一、二回来たことがあるはず。と思って過去のメールやブログを検索してみたところ、どうやら三回来ているらしい。最初は2016年5月29日(日)の戦極MCBATTLE 14章xAsONE。そういえばミニ・マルコchanは戦極とKOKを現地に観に行ったことがあるんだって。6月5日(木)の特典会で言っていた。ただ音楽としてのヒップホップほとんど聴かないみたい。 #KTCHAN の“BaNe BaNe”は知っていて、話の流れでちょっとフックを口ずさんでくれたことがある。二回目は2017年4月15日のfox capture plan。三回目は2018年4月22日(日)のDOTAMA。私はDOTAMAがバトル中にLiVS元運営のササガワさんに似た対戦相手(札幌のギャグ男)に殴りかかられる動画をTwitterに投稿したことがあるのだが、それをマルコchanも見てくれていた。あれササガワさんに似てるよね! びっくりしたと言っていた。ということでどうやら私にとっては四回目、七年と四ヶ月ぶりの会場。

前物販。本日限定のteeシャツを無事に入手。アルコール依存症でコン・カフェに高頻度で入り浸っている某氏と合流。メシをご一緒するつもりだったが入場時間の17時半まで意外と時間がない。駅前のエビス・バインミー・ベーカリーでサクッと。牛筋焼肉のバインミーJPY740。追加パテJPY200。ベトナム・コーヒー・セットJPY290。セヴン・イレヴンでボンタン飴をつまみに酒を一缶。ここまで来たら、もう腹を括るしかない。LiVSの晴れ舞台を精一杯目に焼き付けること。この時間と空間と味わい尽くすこと。私に出来るのはそれだけ。

フロアは柵で三つに分けられていた。JPY100,000のチケットを購入した、完全にガンギマッたキチガイ(褒めてます)の紳士たち十数名専用のエリア。彼らが最前を独占。その後ろがJPY31,500とJPY10,000のチケットを購入した、まだ分別のある我々(私はJPY31,500)のためのエリア。そして後方にはJPY3,000とJPY1,000(新規客)のチケットで入場した一般人向けのエリア。単に入場の順番を分けるだけではなくこうやって物理的に区切る判断は正しかったと思う。少なくとも今日の会場規模では。私は昨年12月に渋谷WWWXでLiVSを観たときにフロアに柵を設けることに苦言を呈したが、今思うとあれは戯れ言だった。認識を改めなければならない。値段を考えなさいよ。JPY100,000を払った彼らには彼らだけの快適な空間が保証されて然るべきだ。いくらなんでもJPY3,000のチケットで入った人たちがJPY100,000を払った人たちと同じ場所にフラフラと侵入できちゃダメでしょ。私だってJPY31,500のチケットを買ったんだからJPY3,000やJPY1,000で入っている人たちと比べて明確な特権が欲しいよ。ここまで価格に明確な傾斜をつけている以上は得られる経験に差をつけるのは売り手の責任である。(柵を設けるべきかどうかは会場の規模にもよるとは思う。)私は二つ目のエリアの最前で観ることが出来た。

どうしても気になる、フロアの埋まり具合。キモいオジサン・オタクにありがちな、開演前に最前付近からやたらと後ろを振り返るムーヴを繰り返す。(分かっている。あれは後ろから見ると気色が悪い。)すると、開演時間が近づくにつれ一般エリアが見る見る埋まっていくではないか。見覚えのある顔(Finally支持者の紳士たちなど)、見覚えのない顔。「知らない顔が多すぎる」と近くの目撃者が苦笑していた下北沢シャングリラとは明らかに様子が異なる。一般エリアがパンパンになっていく様を見ていると、ちょっとうるっと来た。この数ヶ月、LiVSが数多くこなしてきた対バン。ひとつひとつの公演で彼女たちが見せてきた、手抜きゼロの、魂のこもったパフォーマンス。その地道な積み重ねが、結果に結びついているのではないだろうか。普段から通うわけではないけどうっすらと関心はあって、大事な公演ならふらっと来るようなライト層が生まれつつあるのではないだろうか。これは超重要。横浜F・マリノスも普段のホーム・ゲームの動員は平均25,000-27,000人程度(試合単位で見ると10,000-40,000人くらいの幅がある)だが大一番になると一気に増える。2019年のリーグ優勝を決めたFC東京戦には63,854が入場した。これは普段からスタジアムに行くわけではないけど横浜F・マリノスに興味はあって結果だけは追っているとかYouTubeのダイジェストは観ているというようなライトな層が存在し、いざというときに現地に駆けつけるからだ。もちろんプロフェッショナル・フットボールとインディー・アイドルを完全に並列で語ることは出来ないが、認知度を高め、ファンの裾野を広げることの重要性という点では共通している。一曲目の“ONE”で、フロアを見つめるメンバーさんの瞳がやや潤んでいるのが、私の距離からは分かった。あの涙(まだ流れていない段階のそれを涙と呼ぶのか分からないが)、5月に下北沢シャングリラでマルコchanが流した悔し涙とはまったく違う意味を持っていたはずだ。
流した悔し涙 決して無駄にはしない武士の嗜みだ
(RHYMESTER、『リスペクト』)

この公演では危険だからという理由でサークル(フロアで観客同士で輪になってグルグル回るやつ)と床に寝そべることが従来の禁止事項に追加された。私個人に関して言えばそれらの行為に興味がまったくない(やりたいと思ったことがない)ためどうでもよかった。そもそも禁止されていなかったのを知らなかったくらいだった。それよりもメンバーさんがフロアに下りてくることの方が危険だったんじゃないか。この規模の会場で、これだけ人がいるフロアにメンバーさんが乱入していったのは驚きだった。普通に考えると興奮しタガが外れている(お酒を飲んでいる人も多かっただろう)男性たちが密集する中に若くて容姿端麗な女性たちが飛び込んで行って何かが起きない方が奇跡である。他のメンバーさんはともかくミニ・マルコchanだけには指一本触れさせたくない。マルコchanが何かをされないだろうか。わちゃわちゃしているどさくさに紛れて触る奴はいないだろうか。私は気が気ではなかった。誰かがマルコchanが転ばないように補助するようなふりをして馴れ馴れしく後ろから身体を触っているのが見えたような気がした(私の脳が作り出した幻影だった可能性もある)。胸と胃が苦しくなった。コンニチハクリニックさん、ランルウさん、スズカス・テラさんが多少触られるのは最悪受け入れるとして、マルコchanだけにはそんなことがあってはならない。護衛をつけたかった。坂田さん(アイドル現場でセキュリティの仕事をしている知人)を雇いたかった。メンバーさんはフロアに二度、下りてきた。これはフロアの熱狂を加速した。コンサートのハイライトのひとつだったのは間違いない。一方で、何かが起きてしまうリスクもはらんでいたと思う。そして何かが起きたときに、それを100%観客のせいには出来ないと思う。着座のいわゆるホール公演でメンバーさんが通路を練り歩くのとは全然違うし、同じスタンディングのフロアでも男性がもみくちゃになるの前提で群衆に突っ込むのとも全然違う。

その極めて個人的な心配はちょっとあったけれど、誰が何と言おうと大成功のLIQUIDROOM公演だった。何枚チケットが売れ、フロアに何人がいたのかは知らない。今回の動員結果をLiVS内部でどうとらえているのかも知らない。でもこれが成功じゃなければ何が成功だというんだ。動員的にも、内容的にも、LiVSが出来ることのすべてを出し切ったと思う。下北沢シャングリラの苦しい記憶。そこから地道に続けてきた対バン。直前にメンバーを脱退させる決断。それらを乗り越えて手に入れた、最高の夜。正直言って私はこのわずか三ヶ月強でここまでの立て直しが出来るとは思っていなかった。またコンサートのどこかでメンバーさんが思うように集客が出来なかったことの悔しさを報告する葬式のような時間が来るのではないかと、何割か思っていた。それが本当に怖かった。でも、今日こうやって十分に人が埋まったように見えるフロアで、自分もその熱狂の一部になれて、メンバーさんが心から楽しみながら歌って踊る姿を見ることが出来て、胸のつかえが取れた。精神的に楽になった。LiVSを観てきてよかったし、これからも観ていきたいと強く思った。下北沢シャングリラから今日のLIQUIDROOMに至るまでの三ヶ月強でLiVSの未来は一気に明るくなったように見える。