2017年8月24日木曜日

HELLO! GATHERING/HELLO! MEETING (2017-08-19)

皆さんもうちょっとめかし込んでくるのかと思っていた。ちょっと安心したよ。いつも通りで。いやこれがさ、ピンチケ系の、二十歳そこそこの茶髪野郎どもが大量にたむろしていたら、気後れしていただろうと思う。少数とはいえ、いなくはないんだよ、そういう奴らも。普段の現場にさ。でもそんな奴はいなかったな。年齢的にはパッと見、中年が多かった。当然かもしれない。ここに並ぶにはアップフロントのクレジット・カードで3,000ポイントを貯めるか(キャンペーンによるポイント増額がなければ300万円分の買い物に相当)、年会費64,800円のエグゼクティブ・パスを手に入れるかのどちらかが必要だから。ロクに働いてもいない若造には無理だ。土曜日だというのに朝の9時に中野サンプラザの前で集合させられた。私は6時半に起きる必要があった。つらかった。係員(男)の指示で、左につばきファクトリー、右にこぶしファクトリーと、撮影するメンバーさんの属するグループ毎に列になった。ざっとこぶしの列が15人くらい、つばきの列が25人くらい。大抵の奴がイトーヨーカドーかジーンズ・メイトで買ったような服を着ていた。応援するメンバーさんの名字が印字されたTシャツを着ている人もいた。客層と服装を見て、私の緊張が少し和らいだ。かくいう私はEngineered Garmentsの半袖シャツに、Rebuild by Needlesのパンツ(Dickies再構築)、New BalanceのM990。昨晩、決めた。がっつり穴が開いたバックパックを背負っている紳士がいてね、さすがにそれは何とかせえよと思った。いい歳をした大人としてまずい。え、いい歳した大人がアイドルを応援していること自体がまずいんじゃないかって? 黙れよ。

エグゼクティブ・パスを見せる。名乗る。係員(男)が手元の紙にチェックを入れる。「メンバーは誰ですか?」「小野さんです」。赤の8番、と係員(男)が言うと係員(女)がラミネートされた赤いカードを私に渡す。「Executive Pass 8 整理番号は撮影時にスタッフにお渡しください」と書いてある。周りを見るとほとんどの人たちは青いカードを持っている。青がクレジット・カードのポイント組、赤がエグゼクティブ・パス組のようだ。9時16分頃に、撮影するメンバーごとに細かく並び順を指定される。小野瑞歩さんを選んだのはどうやら私を含めて三人。私の前に青組が二人。私だけ、赤。撮影は中野サンプラザの中。入場前に係員(男)から待機中の携帯電話の使用禁止、私語の禁止が言い渡される。9時20分すぎだったか、会場内に誘導される。撮影場所は、客席二階の後ろにある空間。呼ばれるまで手前の階段で並んで待つ。撮影を終えた人々が、インスタント写真とサイン色紙を手にして階段を降りてくる。小野瑞歩さんを選んだ三人が最後まで残った。係員(男)に呼ばれ、小野さん控えるブースに移動する。前の二人が撮影と握手を終え、残すは私だけになる。HELLO! MEETING冒頭の金魚モチーフの衣装を身にまとう小野瑞歩さん。「おはようございます」と言ったら「おはようございます」と彼女は返してくれた。小野さんが左の椅子、私が右の椅子に座る。「ポーズは?」と顔を右に向けて聞いてくる小野さん。「お任せしていい?」。一瞬だけ考えて、じゃあこれでとポーズを示してくれる。撮影でメンバーにポーズを任せるな、それくらい自分で考えていけとTwitterで誰かが言っているのを見たことがある。分かる。説明させてくれ。私は小野さんの命令に従いたかった。小野さんの言われるがままにしたかった。小野さんに服従したかった。だから小野さんに決めてほしかった。ご理解いただきたい。小野さんのポーズを真似ようと試みたが、私はこういう撮影が初めてである上、撮影場所に入った瞬間にIQが40ほど下がっていたためうまくできず、固まってしまう。あたふたする私を見て小野さんが笑ってくれて、救われた。「左右対称で…」と彼女が説明してくれてようやく正解らしき形を作れた。ああこれは二人で大きなハートを作るやつだと、撮影の最中にようやく私は理解した。三回、切られるシャッター。その後にさせてもらった握手。「いつも応援しています」としか言えなかった。事前にいくつか言いたいことを考えていたが、それ以外の言葉を発することができなかった。小野さんは「はい。頑張ります」と言って、アガっている私の様子を見て笑ってくれた気がするし、その場を離れる私に向けてバイバイと言ってくれた気がする。私はまっすぐ歩いて外に出るので精一杯だった。初めて味わう類の緊張だった。小野さんは最初から最後までずっと『笑って』いた。

中野ブロードウェーのCafe Miyamaに入った。ここのアイス・コーヒーはカカオのような香りがして(的外れだったらごめん)好きだ。さっきのことで頭がいっぱいで、本を読む気にも、ブログを書く気にもなれなかった。Twitterしかできなかった。「焼肉とらじ」でハラミ定食730円、追加ハラミ550円、ランチビール210円。1,490円。頼んでから出てくるのが早い。中野サンプラザ、グッズ列。日替わりの宮崎由加さん、小野瑞歩さん、小片リサさん。並んだのは30分くらいだったかな。窓口が六つもあってスイスイ進んだ。ありがたい。8月19日。小片さんの写真には「今日は俳句の日」という文言とともに「ハロコンで つばきが一番 目立ちたい」という一句が書き込んであった。彼女の日替わりはいつも売り切れるのが早い。ご自身の人気もさることながら、こうやって日ごとに変化をつけた書き込みをしているからみんな買いたくなるんだろうね。小片さんや宮崎さんは、我々がつい写真を買いたくなるような文字や絵を書き込んでいる。手が込んでいる。変化に富んでいる。我々の財布から札束が飛んでいく。

昼(15時開演):HELLO! GATHERING

荷物検査とチケットのもぎりを通過すると、さわやか五郎さんが9月11日(月)に開催されるご自身のバースデー・イベントのチケットを手売りに来ていた。興味はあるんだけど、平日はきついよ。平日に行くにはさ、休みを取るなり会社を早く出るなりする必要があって、それはHello! Projectの中でも特にひいきにしている個人やグループのためにしかできない。さわやか五郎さんのためにそこまでの犠牲を払うのは難しい。9月11日(月)はJuice=Juiceのライブハウス(和製英語)ツアーの最終日。私はファンクラブ先行に申し込んで、外れた。もしこの日に仕事の都合をつけるんなら五郎さんじゃなくてJuice=Juiceのチケットを入手してそっちに行く。私の席は、8列。この夏ハロコンで私が購入した6枚のチケットで、一番ステージに近い。唯一、前のブロックの席。全体を観るため、双眼鏡を使わないことにした。私の右も左も女性で、それだけでなく私がいた付近は女性が多かった。そのうちの誰かが汗臭かった。「まずシンプルに女の人くさって思いました。いつも男ばっかりのライブに行ってるのでこれが壮絶な違和感で、いい匂いというよりシンプルに臭い」―ジャニーズのコンサートを観に行った方が書いたブログの一節が頭をよぎった。昨晩、読んだ。もちろん、総体としては男の方が臭いのは間違いないだろう。しかし私がいた半径数メートルにおいては、好ましくない香りの発信源が女だったというのもまたストリートの真実である。

舞台やミュージカルをやるのも観るのも好きだという高瀬くるみさん。『レ・ミゼラブル』の『夢やぶれて』という歌の一部を披露した。「夢、破れた」と感想を述べる小関舞さん。同調する山木梨沙さん。「破れてないんですけどね」と苦笑する高瀬くるみさん。「そこ(高瀬さんが披露した一部分)だけ聴くとね、破れた感じしますよね」と取り繕う山木さん。「(元)アンジュルムの田村(芽実)さん以来ですね」というまことさん。「再来かと思いましたね」と山木さん。

こぶしファクトリーは、ワックな曲をごり押しで盛り上げる集団。ハロコンで私が彼女たちを観る度にその印象が強化されていく。一人一人の技量、魅力、個性は強い。きらびやか。あてがわれる曲がどうにも。もちろん、すべてがワックではない。でも以前のハロコンでやっていた超フェイクなサンバ曲とかさ、桜フィーバーの曲とかさ、クレヨンしんちゃんのカヴァーとかさ、ちょっと違わないですか。何がよくないかって説明するのは難しい。私の好みの問題なのかもしれない。だからああだこうだ理屈をこねるよりは単純に好きじゃないって言った方が正直で正確だろう。最新曲の一つ『エエジャナイカ ニンジャナイカ』は『JKニンジャガールズ』の劇中でやるから意味があるのであって、そうじゃないハロコンのような場所で前面に押し出すべき曲ではない。ただメンバーさんたちに観客を巻き込む力があるから、意外と会場は盛り上がって一体感が生まれるんだよね。「エエジャナイカ! エエジャナイカ!」「ニンジャナイカ! ニンジャナイカ!」と観客に声を出すように彼女たちが煽る箇所では私もつい応えてしまった。そうせざるを得ない熱量が彼女たちにはある。

私はJuice=Juiceの単独コンサートで梁川菜々美さんを6回、観ているので、彼女へのチャントに慣れてきた。カントリー・ガールズとして出演されているときでも彼女のソロ・パートの後に「やなみん!」と言えるようになった。チャントはメンバーさんによって苗字だったり下の名前だったりちゃん付けだったりそうじゃなかったりする。たとえば同じカントリー・ガールズの小関舞さんは舞ちゃんでもマイマイでもなく「小関」なんだ。やなみんなのかやなちゃんなのかななみなのかななみんなのかなかなかわからないんですよ。一見さんには。一見さんじゃなくても50数名分のチャントをすべてちゃんと正確に把握するのは至難の業だ。

カントリー・ガールズがカヴァーする“CHOICE & CHANCE”。「何があったって後悔はしない」のラインを歌い上げる船木結さん、拍手を送るひな壇の宮崎由加さん。このカヴァー・セグメントでは曲の持ち主グループがひな壇にいるのが私は嬉しい。彼女たちの反応が見物。

モーニング娘。からは集団としての力を感じた。色んな個性を持ったメンバーさんが揃っているし、こぶしファクトリーと違って寺田光男さんのドープ・シットを大量に所持している。彼女たちの単独コンサートを私が観させてもらったのは去年の4月が最後なんだけど、もう少し高い頻度で観たいなと思った。私が次にモーニング娘。のコンサートを鑑賞するのは11月3日。パシフィコ横浜。

最後に和田彩花さんが「18日連続で雨だったが今日は久し振りに雨が降らずハロコンで夏を感じられた」という旨の談話を残してコンサートを締めくくったが、会場を出ると雨が降っていた。雨が軽いうちに私はあおい書店に避難したが、たちまち雷を伴う豪雨になった。コンサートが終わって本屋に入ったのが16時50分くらいだったが、17時40分頃に雨が弱まるまで中にいることになった。コンサート直後の最高幸福状態で雷に打たれて死ぬのは死に方として一つの理想ではあるが、死んだらそのコンサートを記録できないのが難点。

夜(18時半開演):HELLO! MEETING

さわやか五郎さんが夜公演の前にも引き続きバースデー・イベントのチケットを販売していて、私は思わず笑ってしまった。「お兄さん、お兄さん、こっち来て、こっち来て」と私の方を見て(私の前にも何人か同じように見物している人たちがいた)手招きをしてきたが、行ったらチケットを買わざるを得ない流れになっていただろうし、その日は行くのが厳しいので、退避した。アップ・アップ・ガールズ(仮)の新井愛瞳さんが販売を手伝っていた。

夏休みの宿題を7割終わらせた、と誇らしげな小関舞さん(高校一年生)。「あの舞ちゃんが?」と信じられない様子の梁川菜々美さん。「皆さん、これ凄いことなんですよ。7割かと思うかもしれませんが」と山木梨沙さん。そこに「私はぜんぶ終わらせました」と切り込む清野桃々姫さん(中学一年生)。「ちょっと待った」と不本意そうな小関さんは、中一と高一という学年の違いを考慮すべきだと反論する。そして「分厚い数学の問題集は終わらせたの?」「英語の問題集は?」「漢字の書き取りは?」と清野さんに畳み掛けるがすべて「はい」と即答され、「おめでとうございます」と諦めた。
梁川さんが途中から(司会ではないのに)トークを回し始めて、観客からどよめきと笑いが起きた。「何で笑うんですか?」と彼女は不思議がっていた。

川村文乃さんは回るのが好き。どの方向でも。きっかけは近所の公園にあった、回る遊具。それにはまってから好きになった。「遠心力が好き?」と小関さん。「回るのが好きです」と川村さん。「これから経験してみたい回るものは?」という山木さんの質問に、宇宙飛行士が乗る何かというようなことを言っていた。「あー」という声が客席のあちこちで漏れていた。あとは中華料理店の回るテーブルに乗ってみたい。「女体盛りやないねんから」と私は脳内で突っ込んだが(おそらく客席にいた約2,000人の1割以上はそう思っていたはず)、ステージにいた誰も女体盛りという言葉は発さなかった。当然だろ。

こぶしファクトリーが『シャララ!やれるはずさ』を披露する際、バック・ダンサーにつばきファクトリーまで動員して全員で全力で飛び跳ねて腕を振り回して、まるで名曲であるかのような盛り上がりを作り出す。正直はじめはしょうもない曲だと私は思っていた。せやけど、両ファクトリーのダイナミックなステージ・パフォーマンスと弾ける元気は私の胸を打つものがあって、私が抱いていた曲の印象まで少し変えてしまった。平凡な曲をパフォーマーの熱さでヴァイブスぶち上げチューンに仕立てる強引さ。この感じは、嫌いじゃない。この曲における二つのファクトリーズによる溌剌としたステージ・パフォーマンスはこのハロコンにおける見所の一つだと思う。

・『就活センセーション』でつばきファクトリーがステージに上がる際、新沼希空さんがつまずいていた。
・つばきファクトリーはとにかく全員が例外なく可愛い。Juice=Juiceのお姉さん感とはまた違う魅力。
・しばらく見ないうちに金津美月さんが大きくなっていた(私がこのハロコンの前に見たのは3月の研修生発表会)。

私の席は13列目、左端の方だった。後半ブロックのいちばん前。メンバーさんが目の前に降臨される位置。この公演に関しては最前よりもありがたい席だった。HELLO! MEETINGでは降臨が二回ある。その両方で、小野瑞歩さんが私と目を合わせて手を振ってくださった。あからさまな個人宛レス、しかも二回連続だったので「こいつ、強いオタクだな、何モンなんだ…?」と私の近くにいた観客が訝しがっても不思議じゃなかった。別に私が強いわけじゃなくて、小野さんが強いんだ。特に二回目はもう本当にしっかり目を合わせてくれた。私が先に目を逸らしてしまったほどだった。たぶん一回目に通ったときに私がここにいるのを覚えてくれていたんだと思う。降臨のときは二回とも小野さんは右側から降りてきて、通路にしばらくとどまって、左側からステージに戻っておられた。私がいた左端はステージに戻る際に通過するだけだったのだが、にも関わらずその一瞬で忘れられないほどのレスをくださった。降臨1ではすぐ目の前に小野田紗栞さんと山岸理子さんが、降臨2では室田瑞希さんと竹内朱莉さんが歌って踊られていた。最後の“I WISH”でトラックにボイス・パーカッションが入っているところで室田さんと竹内さんが対面してラッパーのような面白い動きをしていた。観客はサザエさん並にみんなが笑っていた。

終盤、掃ける前のコメントで雨が降ったことに振れるまことさん。濡れた方もいらっしゃると思います、と我々に気遣いを見せてから「嵐の中のコンサートは盛り上がる。ということで今日は盛り上がりました」。我々は拍手。

終演後、泰陽飯店。蒸し鶏。枝豆。黒ホッピー。フライド・ポテト。1,496円。朝の8時40分頃から21時過ぎまで中野にいた。小野瑞歩に始まり、小野瑞歩に終わった一日だった。今日は本当に稀有な経験をさせてもらった。後味がいいにも程がある。明日の昼公演もチケットを持っているんだよね。でも、今日の満足度を上回ることはあり得ないからさ、明日のチケットは誰かに譲って、もう2017年の夏ハロコンはこれで終わりにしたいと思ったくらいだ。