2017年8月27日日曜日

空想ペルクライム/Les Nankayaru (2017-08-26)

14時半に開演する『空想ペルクライム/Les Nankayaru』のチケットを握りしめて(本当に握りしめたらクシャクシャになるので握りしめてはいません)中目黒のキンケロシアターに足を運んできました(誰かの足をカバンに入れて運んだのではなく、自分の足を使って歩きました)。『空想ペルクライム/Les Nankayaru』が何なのか分からないんですよ。これを書いている今は公演の翌日で、イタリアン・トマトでポメラDM100のキーボードををパチパチ叩いているんですけど、まだ分かっていないんです。現時点で知らないということは、このまま知らずに一生を過ごす可能性が高いです。おそらくスラッシュ前後のどっちかがクルーの名前で、もう片方が演目の名前だとは思うんですが。誰かに誘ってもらったとかではないです(私にそんな友人はいない)。自分でチケットを購入しました。理由は高瀬くるみさんです。私にとっては高瀬くるみさんがご出演される舞台という情報だけでチケットを買うに値するのです。現役のHello! Project研修生の中で私がいちばん好きなのが高瀬くるみさんです。彼女は舞台やミュージカルで本領を発揮するので(昨年11月の『ネガポジポジ』でのご活躍は鮮烈でした)、ぜひ観に行きたかった。購入を確定する前にちょっと迷いましたけどね。あまりにも現場を詰め込みすぎなんじゃないかって。でもまあ一回は入っておこうと。

高瀬くるみさんのご出演以外に『空想ペルクライム/Les Nankayaru』に興味を惹かれた理由として、会場がよさそうだなというのがありました。小さくて、ステージが近そうでした。今、座席表を見たら収容人数は135人のようです。よく演劇女子部の会場になる池袋のBIG TREE THEATERが167席です。私の席は9列あるうちの6列目と、後ろの方でしたが、この規模の会場だと近いことに変わりはないだろうと踏みました。S席といって前方席のチケットもあったようです。本当はそっちに座りたかったですが、私がこの公演の存在に気付いたときには既に販売が終了していました。実際に席に着いてみると目論見通りで、後方とはいえ近かったですし、見やすかったです。

開場前に会場前に貼り出されている公演情報を見て、15分の休憩を挟んで第一部と第二部に分かれていることを知りました。ジャズのコンサートで休憩があるというのは経験したことがありますが、舞台で休憩があるんだ、と少し驚きました。実際に第二部が始まったときにはもっとびっくりしました。唖然とした、に近かった。「は?」と声に出そうになりました。第一部と第二部で、内容がまったく異なっていたのです。第一部は、高校生たちが文化祭に向けて準備を進めていくという内容の芝居。ちょっと恋愛も絡んで。ある男の子に思いを寄せていた女の子がいきなり飛び降り自殺をして(もし私の誤解でしたらすみません)第一部が終わりました。話の内容がぬるかったので、最後の死を機に第二部で修羅場が訪れるのかな、急に話のトーンがシリアスに変わるから休憩を入れているのかな。私はそういった想像を巡らせ、休憩明けの展開を楽しみにしていました。第二部が始まると、とんだ肩透かしを食らいました。芝居ではなかったのです。それまでの劇がなかったかのように、いきなり歌とダンスの出し物が始まったのです。呆気に取られました。

私がふだん観させてもらっているHello! Projectのコンサートやミュージカルの素晴らしさが分かりました。120分くらいに渡って(間に多少トークは挟むにしても)歌とダンス、歌と演技で観客を魅了し満足させることは当たり前のことではないんだと実感しました。はっきり言ってしまうと、『空想ペルクライム/Les Nankayaru』は出演者たちも、裏方も、長時間の芝居を作り上げる実力もないし、長時間のコンサートを作り上げる実力もないのではないか。だからこういう構成で逃げているのではないか。芝居としてもショーとしても生半可でした。知り合いが出ていたら「お前すげえじゃん!」って興奮できる出し物だったとは思いますが、その域は超えていませんでした。第二部のショーは、カラオケ大会でした。もちろん、皆さんお上手ですよ。でも素人に毛が生えたレベルです。じゃあお前がもっとうまく歌ってみろよと言われても、私はできません。でも、余暇の時間が豊富な地方公務員とかが趣味で練習して到達できる水準ではないでしょうか。もっとも、パフォーマーの皆さんだけの問題ではなく、音響にも難があったように思います。客席に歌声が届きにくかったです。高瀬くるみさんがいたからでしょうが、セットリスストにごまっとうの『SHALL WE LOVE?』と℃-uteの『人生はSTEP!』というHello! Projectの二曲が入っていました。両方に高瀬さんがいました(たぶん高瀬さんが他のパフォーマーに振りを教えたんだろうなと想像します)。『SHALL WE LOVE?』のときはまだニコニコ顔で拍手できましたが、『人生はSTEP!』に関しては本当に厳しい目で見てしまいました。高瀬さんは別としても、素人がYouTubeに投稿する「踊ってみた」レベルでした。私は『人生はSTEP!』が序盤に披露される℃-uteの2016年春ツアー“℃ONCERTO”を7回、観させてもらっています。℃-uteがこの曲を歌って踊る映像がすぐに頭に浮かびます。私は元Team ℃-uteです。本家と比較せずに『人生はSTEP!』を観るのは不可能です。粗ばかりが見えてしまいました。このグループの、この曲を、このレベルで、お金を取って観客に見せる場でカヴァーするとは本当に勇気があるなと思いました。高瀬さんと一緒にHello! Projectの曲を披露していた方々が仮にHello! Project研修生だとして、発表会のリハーサルであの動きと歌だと本番に出演できないかもしれません。彼女たちがみつばちまきさんからジャップの陰湿さを凝縮させた理不尽な詰めを受ける姿が頭に浮かびました。いや、チケット代が2,500円くらいならここまで書きませんけど、5,500円でした。

悪口で筆が進んでしまいましたが、出演者の皆さんには全体的に好感を持ったということはしっかり書いておきたいです。特に第一部で教員役をやられていた紳士がいい味を出していました。若い出演者たちの中、一人だけオジサンでした。役がはまっていました。ああいう先生は本当にいそうでした。劇の中で何か面白いことをしてよと生徒たちから振られる場面がありました。「最近、笑いに迷っているから、基準が分からない」と前置きした彼は、富士サファリパークの替え歌を披露しました。最後に「知事、やめてまーす!」と言って舛添要一さんの顔が印刷されたA4の紙を広げるのがオチでしたが、上下を逆さまにしてしまうという痛恨のミステイクを犯してしまいました。生徒たちに指摘され「そういうとこなんだよ!」と悔しがっていました。他には頭髪の薄さをいじられていました。自らいじられにいくときもありました。「青春を楽しんでおかないと俺みたいになっちゃうぞ」と生徒に言って「先生みたいにはなりたくない」と返され「俺の頭を見て言っただろ」と言ったり、沖縄で俺も沖縄でビール屋でも売ろうかなと言って「ハゲビール?」と高瀬さんに聞かれノリ突っ込みで返したり。いわゆるアイドルの場合はどうしても若さが至上の価値になってしまいますが、役者の場合は歳を重ねないと出せない味がありますよね。スタイルのよい若者が勢揃いした舞台で一人だけ太っていて頭髪が薄かったですが、それを武器にしていました。

高瀬くるみさんは、本当に生き生きとしていました。Hello! Projectのコンサートのときよりも、自分の居場所にいる感じが伝わってきました。彼女の場合、歌うにしても、ミュージカルのように演技の要素が入った曲で輝くなと思いました。第二部で『レ・ミゼラブル』の曲をやっていたときなんか本当に楽しそうでした。田村芽実さんほどの迫力はまだありませんが、憑依型という点では共通しています。これからHello! Project内外の舞台にどんどん出演して、才能を開花させていってほしいです。高瀬さんがHello! Projectの公演ではない外部の催しで伸び伸びと演技と歌とダンスを披露されているお姿を近距離からじっくりと鑑賞できただけたのは、嬉しかったです。そう言えば、彼女は第一部でpandaと書かれた白黒のバックパックを背負っていましたが、おそらく私物でしょうね。

日替わりでゲスト出演者が登場するのですが、今日は平嶋夏海さんという方でした。存じ上げませんでしたが元AKBの方のようですね。これは私の言葉ではなく、もし「アイドル見るのが呼吸」の筆者があの場にいたらこう書いていただろうという意味で読んでほしいのですが、平嶋夏海さんはアレがでかいですね。