2024年12月31日火曜日

FACE THE SOUNDS (2024-12-23)

11月30日(土)の対バンで初めて観て以来、ほぼLiVSしか聴いていない。Spotifyによると私が2024年に最も長く聴いたアーティストであるBLUEGOATS(8,160分)を、この3週間強というもの殆ど聴いていない。由々しき事態である。生で聴いたときにもなんとなくいいなとは思っていたが、じっくり聴いてみると想像以上。まあ言うてもよくある地下アイドルの範疇やろ、BLUEGOATSのクオリティには及ばんやろ程度に高を括っていた。それが見事なまでにはまってしまった。また来てね! とミニ・マルコさんに手を振られたあの瞬間。それを最後にするという選択肢はもうなかった。(なおミニとマルコの間の点はどうやら幅の狭い点が正式なようである。ご本人のTwitterアカウントでの表記がそうなっている。このラップトップではその点を出せない。当ブログでは便宜上、全角の点「・」で表記する。)LiVSのコンサートには新規無料チケットがある。注意書きを読むと対バンで一度観た人も対象になるという。その制度を利用し、12月23日(月)に渋谷wwwxで行われるコンサートの無料チケットをゲトッた。どうやらツアー・ファイナルか何かで大切なコンサートらしい。Livepocketを見ると翌日12月24日(火)にも公演があるが23日(月)のチケットを提示するとメンバーからクリスマス・プレゼントをもらえるとかで、ちょっと内輪感がある。いきなり行くにはちょっと敷居が高い。大きめの会場での大事なコンサートである23日(月)の方に行き、24日(火)はパスすることにした。この年末の時期に二日連続で平日の夕方を空けるのは厳しいしね。

17時半開場、18時半開演。ちょっと厄介なことに月曜は出社日。一度家に帰って着替えたりしたかった。業務的にも落ち着いてはいたので午後休を取得。神保町のマンダラで平日Aランチ・セット JPY1,680。カレーはヌールジャハニ(鶏肉とレバー)を選択。『美味しんぼ』24巻の表紙に映っているのがこの店らしい。店の入り口付近に単行本を飾ってある。帰宅。ちょこざっぷで30分走る。池袋駅構内の大江戸そばでわかめそばとちくわ天 JPY590(だったかな?)。渋谷。新規無料チケットは入場の順番が最後。並んでもしょうがないので、列が落ち着いているであろう頃を見計らって会場へ。並びゼロで中へ。フロアに入る前に物販がある。チェキ券はいま買うんですか? とお姉さんに聞く。曰く、講演後にも販売するけど混むから今買った方がいい。いくらですか? JPY2,000なんですけど、アルバム(JPY3,300)を買うと特典券が3枚付いてきます。チェキは特典券2枚、1枚で握手が出来ます。あー、チェキ券を一枚とかじゃなくて、内容によって組み合わせて使うんですね。そうです。一度の会計でJPY6,000以上で写メ券が付いてくるので、アルバムを2枚買う人が多いですね。JPY6,000も使う気はない。アルバムはフィジカルで1枚持っていてもいいかな。アルバムを1枚購入。PayPayが使える。フロアに入った時点で18時10分くらいだったかな。その時点で後ろ半分は人がまばらだった。前の方に柵がある。VIPチケットを買った人は柵の前に入れるんだろうな。KissBeeでもそうだった。このシステムに私はあんまりいい印象がない。なぜならフロア内にヒエラルキーを作り出し、可視化し、固定化するからだ。高いチケットを買った人が先に入場できる。そのやり方は否定しない。問題は、この柵があるかどうか。文字通りのゲーテッド・コミュニティをフロア内に作り出すかどうか。それがBLUEGOATSとLiVSとの差だろう。BLUEGOATSのフロアでは前にいようと後ろにいようがヒエラルキーを感じることはほとんどない。なぜならBLUEGOATSのノリの中核を占めるのが一緒に歌うことだからだ。歌うことに関して前だったら偉いとか強いとか、そんなことはない。どこにいようと歌うことでBLUEGOATSの一部になれる。平等である。一緒に歌えば繋がれる。それは会場の大きさにも位置にも制約を受けない。可能性は無限大なのである。終演後に近くにいた紳士たちが、あの柵いらなかったよな。途中から蹴っ飛ばしてたよなぞと歓談していた。彼らの精神性に私は希望を見た。LiVS支持者たちも捨てたもんじゃないなって。

LiVSはコンサート中の撮影が静止画、動画ともに自由で、ソーシャル・メディアへのアップロードも奨励されている。YouTubeには有志の方々が撮影した高画質の動画が出回っている。それもおそらく全公演。最初から最後まで観ることが出来る。私は今日までにそれらをいくつか視聴した。それで知ったのだが、どうやらすべての公演ではじめまして、LiVSです! と言っているようである。今日もそうだった。11月30日(土)は対バンだったからはじめましてなのかと思ったらそうではなかった。いつでも初めてのお客さんに見せるつもりで、初心を忘れず、的なことなんだろうか。だとすると立派な心意気である。

最初にこの集団を観たときはとにかくミニ・マルコさんに目を奪われた。ミニ・マルコさんが可愛すぎるぞ以外のことがほとんど考えられなくなっていた。しかしあれから曲を聴き込み、動画を観て、生で観るのが二回目となる今回。見え方が変わった。見えるものが増えた。何といっても、ユニセックスさんのねっとりした歌声。けだるいフロウ。聴いていて心地よい。癖になる。ミニ・マルコさんのスッキリして清涼感のある歌声と、曲の中で引き立て合っている。もちろん他のメンバーさんの個性とも絡み合っている。現時点で私にとって歌が印象的なのがミニ・マルコさんとユニセックスさんである。

そういえば開演前、右後ろをふと見るとBLUEGOATS運営の某氏がいるではないか。思わず声をおかけする。
〇〇さんですよね?

BLUEGOATSの…
あー!
この間の対バンで初めて観て…
マジっすか。僕、曲が大好きでずっと聴いてるんですよ
あー、曲いいっすよね。僕もめっちゃ聴いてます
楽しみましょう!
的なやり取りをした。BLUEGOATSの運営さんも曲を気に入って観に来るLiVS。私の感性は間違っていなかったんだなと思った。

それぞれに異なった魅力のある、洗練された楽曲。その多彩さを、やや一辺倒な地下アイドルノリでヘッズがスポイルしている感は否めない。たとえば“MUSiC”の冒頭。ファイヤータイガーサイバーダイバー、ファイヤータイガーサイバーダイバーなぞと早口で捲し立てるヘッズ。音の隙間を全部埋めないと気が済まないかのように。なんでもかんでもマヨネーズをドバドバかけてグッチャグチャにして食ってるみたいな感覚。もちろん、これはLiVS現場が二回目の、ポッと出の傍観者による戯言に過ぎない。何度も観ていけば私の意見は変わるかもしれない。気を悪くしないでほしい。ただ、このときはこう思っていたという記録として残しておきたい。

途中から気持ちよくなってきた。開演前に飲んだお酒の影響だけではないはずだ。本当に心地よい音楽の空間で。ふわっとした気持ちになった。自分が立っているその持ち場にいなくちゃという精神が薄れて、前の空いているスペースにふらふらと進んでいった。左の人と何度も肩を組んだ。これはLiVSのコンサートではお決まりとなっているのだが、最後に近くの人と手をつなぎ、LiVS側が人間、と言い、サイコー! と全員で叫ぶ。サイコーですか? サイコーですというのに似ている。宗教っぽい。宗教という言葉を使ったのはあながち誇張ではない。こういう集まりって、世俗化した現代社会で、激化した資本主義の競争からの救いを提供するのが、究極的には果たすべき役割だと思う。その中で人と人の繋がりや精神的な健康に寄与する。週末の教会、礼拝の代わりにコンサート、特典会。

20時ちょうどくらいに終演。なかなか始まらない特典会。始まらないな…と普段から来ているらしき人々も口々にぼやいている。20時37分にようやくVIPチケット購入者の全員チェキの案内が始まる。VIPの特典や公演の前に済ませておくべきではと思った。20時39分にメンバーさんがステージに現れ、フロアに下りてくる。そこから全員チェキとか、全員握手とかを経て、最終的に私がミニ・マルコさんに対面したのが21時頃。公演時間が90分、チェキまでの待ち時間が90分。
また来てくれてありがとー
BLUEGOATSのときの…
そうだよね
あの対バン以来、ずっとLiVSの曲を聴いてて、はまっちゃった
えー! 嬉しい
今日BLUEGOATSの運営さんが観に来てたんだけど、知ってる?
え? 知らなかった
そうなんだ。後ろの方にいたよ。その運営さんもLiVSの曲が好きでずっと聴いてるって言ってた
また対バンできるといいね! どの曲が好き?
えー全部好きだけど、“Shall Weeeee Dance???”とか。あの、こういう(この曲独特の動きを少し真似する)
これね(笑)今度やろうね。今日(のコンサートでは)やらなかったから。今ちょっと練習しよ(ステップを踏む)
(うまく出来ない)え、出来ない…
出来ない(笑)
的な感じで、最後は私のポンコツすぎる動きで終わった。初めてお会いしてから一ヶ月近く経つのに覚えてくれていたミニ・マルコさん。

前にF君が、オタクを舐め腐った特典会の運営方法などによるストレスもHello! Projectに必要な要素の一つであるという旨のことをおっしゃっていた。実はその考えは理にかなっている。『ドーパミン中毒』(アンナ・レンブケ)によると人間の脳は苦痛と快楽を同じ場所で処理している。片方が増えるともう一方を増やし、シーソーのようにバランスをとるように出来ている。快楽だけを与えられてもいずれ耐性がついて同じ刺激で得られる喜びが減ってしまう(麻薬などがそうであるように)。適度な(あくまでも適度な)苦痛やストレスがあることで、快楽も感じやすくなる。苦痛と快楽は両輪の関係であり、紙一重でもある。適度な苦痛が脳にもたらすよい影響の例は冷水浴だそうだ。これは同書と、『インターネットポルノ中毒』(ゲーリー・ウィルソン)にも書いてあった。チェキまで長時間待たされることで、いざミニ・マルコさんにお会いできたときの喜びが増大する。それはたしかにあったと思う。感情というのは落差なのだ。喜怒哀楽のすべては切り離せない関係にある。それぞれの感情が引き立て合うのである。キレイな、都合のいい感情だけを切り離してそれだけを味わい続けられるように人間は出来ていない。

2024年12月30日月曜日

Hiromi's Sonicwonder JAPAN TOUR 2024 (2024-12-21)

昨日は食いすぎた。夜に会社の忘年会があると分かっていたのに昼もしっかり食ってしまった。池袋の四季香で回鍋肉定食JPY980。取り放題の副菜セクションで煮卵を二つ。もたれ気味な胃。リカヴァリーのために朝食は食物繊維の多いものを軽く。ローソン・スリーエフ。たっぷり食物繊維が摂れる梅しそごはんおにぎり(国産もち麦入り)。食物繊維8.6g。最近amazonで箱買いしたIFココナッツ・ウォーターを手に、家を出る。新幹線。高い。池袋から名古屋。JPY10,560。行きはバスでもよかった。後から考えるとその方が賢明だった。だが私には昼時に名古屋に着きたい理由があった。気になっていた南インド料理店。マドライ・キッチン。なんとなく栄駅付近だと思っていたが思い違い。駅付近で起動したGoogle Mapによると徒歩49分。名鉄瀬戸線。栄町駅から森下駅。6分。駅から徒歩5分くらいかな。あった。ビリヤニ・プレート JPY1,300。チキン65 JPY1,000。今日のビリヤニは海老。人生で二度目の海鮮ビリヤニ。色んなスパイス。手の込んだ味。でもじゃあ結果としておいしいのかと言われるとなんとも言いがたい。分かる人にはたまらないのかもしれない。私にはピンと来ないタイプのビリヤニ。チキン65は分かりやすく濃い味付けの唐揚げ。こっちはおいしかった。客は女性中心。インド料理店らしからぬお洒落感。駅の周り。これといってなさそうな目ぼしい商業施設。南インド料理店とメンタル・クリニックはある。もしこの町に私が一人で住んだら精神を病むだろうか。きっと病むだろうな。そんな気がする。栄方面行きのプラットフォームから見える景色。眺めながら想像。この前、東京の船堀を歩いていたときにも何かゾワっと来た。自分はここに長く居ちゃいけないという感覚。土地土地に染み付いた何かがある。その何かとの相性が、たぶん人それぞれにある。

セブン・イレブン名古屋栄森の地下街店。チケットを発券。現地で発券することの利点。チケットを忘れるとかなくすとかのリスクがなくなる。生活の知恵。受け取ったチケットを確認。なんと、二列! 東京に続いて良席。いいこともあるもんだ。時間調整。名古屋でやたらと見るカフェ・ド・クリエは敬遠。イタリアン・トマト系列の、聞いたことがない店名のカフェ。レーコー JPY380。私が立ち上がって上着を着ている最中、まだ席を離れてもいないのに椅子にタオルか何かを置いてくるオジサン。間近で犬にションベンでマーキングされてる気分。きめえ。イラッとする。置かれたそれを投げ捨てたくなる。私はそれを実際にやりかねない人物。

愛知芸術劇場。栄駅から徒歩数分。好立地。Hello! Project支持者時代に身についた、良席のときは早く入場しすぎない癖。チーム友達が来るから。あのお、その席って連番ですか? もし一人だったら代わってくれませんか? 友達が近くにいてえ。ってやつ。もちろん上原ひろみさんのコンサートでその手合いは来ない。(今のHello! Projectでもそういうのが横行しているかどうかは知らない。)高齢男性の多さという点では客層は似通っているとも言えるが、現場におけるノリは大きく異なる。私は横浜F・マリノス、田村芽実さん、 #KTちゃん 、BLUEGOATS、LiVSなど異なる陣営の娯楽を横断的に見るようになって、最近確信した。ライヴ・エンターテインメントの現場における死活問題とは、どういうノリを作り上げるか。それがすべてと言ってもいい。ルールとかお作法のような堅苦しいものではない。楽しみ方、盛り上げ方、に近い。日本では上原ひろみさんのコンサートをどうやって楽しみ、盛り上げるのかのノウハウが根付いていない。1,500人~2,500人収容のホールは埋まった。埋めた人々の質はどうだったのか。このツアーに来場したヘッズの中に、Hiromi's Sonicwonderのアルバムを何十回、何百回と聴き込んだリスナーがどれだけいたのか。10年、20年と上原さんの音楽を聴き続けてきた人がどれだけいたのか。はっきり言ってしまうと、お金と時間があるからとりあえず来ましたって感じの人、セックスの前戯として来た男女、そういった人たちが何割もいたように思う。そして、もうひとつ大事な点として、ノリを作り上げるにはそのチームなりアーティストなりの興行が日常の中に存在しないといけない。定期的なイヴェントとして設定されていないといけない。そうしないとヘッズ側の練度が上がっていかない。仕上がっていかない。その現場ならではの暗黙の了解が出来上がっていかない。おまいつがノリを身につけ、全体を引っ張って盛り上げていくんだ。年に一回程度の日本ツアーがあるという現状の頻度では、観客がおまいつ化するのが難しい。もちろん、同じ頻度であったとしても他国の観客はもっと熱狂するのだろう。世界的に見ると大抵の国では日本よりもデフォルトのノリはいいだろう。日本人のデフォルトのノリには前に書いた儒教的な特質が大きく作用しているはず。

コンサートの前半。私の右に座っていた老紳士が結構な割合を寝て過ごしていた(もちろんジロジロ見ないよ。すぐ隣だったので目に入った)。たしかに最近は寒い。季節の移り変わりを乗り切るだけで消耗する。彼を見て私は思った。いくら時間があってお金があったとしても、最終的に自分が何を楽しめるかは体力、気力に制約される。100の時間とお金が自由に使えたとしてもそれを受け止める自分の能力(体力、気力)が30であれば楽しめる上限が30なのだ。たとえそれまでの人生で色々聴いてきて、耳の肥えたリスナーになったとしても、その音楽の放つ熱量についていくだけの体力と気力が残っていなければその音楽の一部にはなれない。エンターテインメント全般に言える。要求される熱量がそれぞれにある。もちろん同じスタジアムでも席の種類が違ったり、同じフロアでも前方だったり後方だったりで異なるスタンスをとることは可能である。全員が一律で同じように振る舞わないといけないわけではない。それでも現場というものにはある程度の基準が存在する。ただ、後半ではその老紳士が目を瞑りながらも頭を揺らして音楽に浸っているようだった。もしかすると前半も実は寝ていなかったのか? 終盤には完全に起きて声も出していた。

私と同年代(40代前半)の知人、友人が異常な割合で腰をヘルニアなどで傷めている。長時間のイヴェントやコンサートなどでずっと立っていられないなど、人生を楽しむ上での分かりやすくて具体的な支障が同年代で出始めているのを見ると、いよいよ私も生物としてそういう段階に足を踏み入れつつあるんだなと実感する。立つ、歩く。人間として活動していく上での根幹。書店で健康本の題名を眺めると、我々が最終的に行き着く健康上の関心事は歩けなくなる(のを防ぎたい)、咀嚼できなくなる(のを防ぎたい)であることが分かる。自分で歩けない、自分で物を噛めない。自然に考えるとその先に待っているのが何かは言うまでもない。

20分の休憩中、ジーン・コイさんが数分間ステージに戻ってくる。ドラム・セットに何らかの不具合があるようでスタッフ4名と何かを話し合っている。解決したようでThank you!とスタッフに礼を言い、袖に捌けていった。コイさんといえば、このツアーで彼が来ているシャツが原宿の竹下通りで買ったものだと東京公演で上原さんが明かしていた(買った場所については東京公演のみで言及していた)。鯉の柄。ジーン・コイだから鯉。鯉のシャツを着始めてから鯉のグッズをたくさんもらうようになった。

上原ひろみさんの即興プレイを目を瞑って聞き入るトランペット担当のアダム・オファリルさん。そう来るか! という感じでアー! と声を出して笑みを浮かべるジーン・コイさん。お互いのプレイを楽しみ合っている。コンサート中、ステージにいる四人の間で何度もこういう場面が見られた。どこかジョイントを回し合ってハイになっているような、そういう雰囲気があった。そしてヘッズ側の拍手や声にうんうんと頷くメンバーさん。鍵盤から目を離し、嬉しそうに客席に振り返りニコッとする上原さん。本当は、ヘッズとメンバーさんの間のコミュニケーションをもっともっとやるべきだったし、メンバーさんたちもそれを望んでいたと思う。他の国ではもっとあるんだと思う。私を含め、まだまだシャイだった。それが残念だが、上に書いたように、日本でそのノリに到達するにはもっと公演を定常化しないと難しいというのが私の結論だ。複数年に渡って複数回、上原ひろみさんの日本公演を観た上でそう思う。ただ、私としては東京では会場と席に恵まれ、この名古屋でも席に恵まれ、心から幸せだと思える時間を過ごすことが出来た。

あの長いスピーチは何を言っているんだ? 昨日メンバーにそう聞かれたという上原さん。新曲“Yes, Ramen!(表記不明)”の前のトークを指している。ラーメンへの思いを語っていると答えると、あんなに長く? とメンバーさんたちが驚いたという。何十年と老舗の味を守るヴェテラン、それに挑む新進気鋭の若手という構図や、同じラーメンが好きな人たちが一杯のラーメンに向き合うというのが、ジャズ界やライヴに似ているという趣旨のことを上原さんは言っていた。彼女は本当にラーメンがお好きなようで、Instagramによくラーメンの画像を投稿している。それも普通、有名人って自分が食べているところを映すじゃん。彼女の場合、ラーメンだけを映してんの。オタクのInstagramみたいに。それだけガチってこと。

終演後にギャンブル依存症の中島さん(仮名)と合流。(なんと直前にチケジャムでチケットを入手し、コンサートに入っていたらしい! 高齢者の多い客層がSKE48と同じで安心感があったと言っていた。)名古屋駅まで移動。雨が降ってきたので地下街に避難。ヒモノ照ラス ユニモール店。彼が東京で家賃を踏み倒したまま(正確には毎月JPY1,000だけ振り込み続ける。更新料は満額払ったらしい)栄に引っ越してから会う頻度は落ちた。今年は二回目である。また、彼のTwitterが永久凍結(現在は解除されている模様)してから近況を知る機会は減った。会うのは3月30日(水)の2024明治安田J1リーグ、名古屋グランパス vs. 横浜F・マリノス(豊田スタジアム)のとき以来。サシでメシを食うとなると数年ぶりだろうか。久しぶりに色々と話せて嬉しかった。最近は日本酒を開拓しているらしい。それぞれが定食を頼み、彼の解説を聞きながら日本酒を色々と。田中六王、醸し人九平次、るみこの酒、黒龍、裏寒紅梅、裏半蔵。二人でJPY7,678。私が出した。奢った金額としては上原ひろみさんのツアーteeシャツ(JPY3,500)に近い。先日サファリ色を買えなかったからといってそれを買い足すよりは中島さんと歓談して飲食代を奢る方が、お金の使い方としては何十倍も有意義である。 

2024年12月27日金曜日

Hiromi's Sonicwonder JAPAN TOUR 2024 (2024-12-19)

前日にセブン・イレブン東池袋一丁目店で発券したチケット。五列という数字が私にもたらした高揚。一方、七日前に大宮ソニック・シティ大ホールで味わった煮え切らない時間。今日はどうなる。一抹の不安。そのせめぎ合い。すみだトリフォニー・ホール。最寄り駅は錦糸町。池袋からだと御茶ノ水乗り換え。御茶ノ水。近辺の駅に最近行っておいしかった店があった気がする。どこだっけ。マサラ・キングだったか? そうだ。平井駅。錦糸町から五分。一本。よし、そこにする。17時に平井駅。マサラ・キングに向かう商店街。途中にあるゴレル・シャッドというこれまたそっち系の店。ビリヤニはあるかと聞いたら首を横に振る店員氏(メニュウにはある)。コメはあると言って炊いていない状態のコメ数キロの袋を指さしてくる。今ビリヤニを食えないからって代わりに数キロ単位のコメを買わねえよ。そのまま直進。マサラ・キング。申し訳程度の店内飲食空間。二、三人で満員になる。運良く先客なし。マトン・ビリヤニ定食。カレーはマトンほうれん草を選択(+JPY100)。JPY1,540。大宮のときにギリギリになって焦った。今回は店を決め打ちしてテキパキ動いた。それでもゆっくり一息つくほどの余裕は生まれず。入場前に会場近くのコンヴィニエンス・ストアでホット・コーヒーを飲むのが精一杯。多くの人々が同じ方向にスマ・フォを向けて写真を撮っている。何だと思ったら東京スカイ・ツリー。

大宮ソニック・シティ大ホールが日産スタジアムだとすると、このすみだトリフォニー・ホールはニッパツ三ツ沢球技場。それくらい違う。縦にも横にもコンパクトなつくり。物理的、視覚的な近さはもちろんのこと、いかにも音響がよさそう。いま検索したら収容人数が1,801人。一方、大宮ソニック・シティ大ホールは2,505。その数字以上に差がある。でっけえ箱って感じだった大宮に対し、こっちは音楽を聴かせるための空間として作られている感じがする。中に入って肌で感じると分かる。場として全然違うのよ。ヴァイブスからして。それで席は5列目のほぼ中央と来た。こりゃどう転がってもドープな時間になるでしょ。そりゃさ、たしかにヘッズの老紳士率は高かったよ。ステージに目を向けると否が応にも無数の老紳士たちの禿げ散らかしたが後頭部、頭頂部が視界に入るわけ。異常事態。Hello! Projectのバースデー・イヴェントと見紛うばかり。裁判の傍聴でもしているかのような仏頂面や腕組みでほとんど無反応のまま時間を過ごす謎の紳士たちもたくさん。コレが西洋社会で流行しているというrawdoggingですか? よくそんな無反応でいられるね。観に来ている人たちの大半は感情を消失したのだろうか、それともうつ状態なのだろうかと思うことがある。でもそんなことはどうでもよくなるくらいの臨場感と緊張感がある会場と席だった。コレだよコレ。ライヴで音楽を味わうってのは。そりゃ上原ひろみさんがSonicwonderで表現する音楽を体感するにはライブハウス(和製英語)で立って観るのが一番。だってコレはもはやダンス・ミュージック。本来、座ったままで聴くのに適した音楽ではない。だが、着席での鑑賞をさほどハンディキャップと感じさせないほどに素晴らしい会場。なおかつステージと自分との間に4列しかないから目に入る他人が物理的に少ない分まわりが気にならなかったというのはあったと思う。ジャップの国民性に文句をつけながら自分も神経質で、他人を気にしている。しっかり陰気なジャップの自分がイヤになる。

先週の大宮が、結果的にはいいウォーミング・アップになった。あの公演でこのツアーにおける会場や観客の熱量に対する私の期待値が下がった。一回下げて、今回こうやって上げることでなおさらよく感じたのだと思う。感情ってのはそういうもんよ。落差。喜怒哀楽はすべてが一式になっているわけで。キレイな感情だけを取り出して、好ましくない感情を排除するってわけにはいかない。悲しみ、怒りがあるから楽しさ、喜びが際立つわけ。

ステージで表現される自由、遊び心、逸脱。解き放たれる情熱。その世界に客席から入り込むことで、普段の生活で使わずにどこかに眠っていたいくつもの感情が引っ張り出され、鷲掴みにされ、刺激され続ける感覚。お前にはこんな感情もあるんだぜ、もっとそれを表現していいんだぜ、俺たちはこうやって表現してるんだぜ、ってステージから上原さん率いる四人のメンバーさんたちが語りかけてくるような感覚。整体マッサージが凝り固まった身体をほぐしてくれるように、音を通した感情のマッサージ。ある種のセラピー。贅沢な時間。幸せだった。至福の時間に浸りながら、一方ではこうも思った。本当の意味で自分の感情を表現するためには、やる側に行かないといけないんじゃないだろうか? いくら一緒に作り上げる要素があると言っても観客は観客。受け手は受け手。限界がある。作る側、表現する側。向こう側からしか見えない世界は確実にある。生産することでしか得られない喜び。音楽にしてもフットボールにしても、観客が一緒に作り上げている。それは間違いない。それでも我々はお金を払って、チケットを買って、割り当てられた席で観るという立場なのであって、ステージ側、ピッチ側とのあいだに厳然たる壁がある。生活の安定のため、一定以上の収入を得るための立ち回りとしての職選びと、本当に何らかのやりたいことを見つけた結果としての職選び。前者が無価値で後者こそが尊いと言い切るほど私は若くはないしロマンティストでもない。前者に振り切った人生を送ってきた私は、後者に属する人たちが放つまばゆい光に嫉妬することがある。じゃあやってみろと言われそうだが、私には当然そんな選択をする度胸もなく、それ以前に自分がやりたいこととか、なりたい者という概念そのものがとっくのとうに分からなくなっている。夢や希望(そんなものがあればの話だが)を犠牲にして比較的、安定した賃金労働生活を手にし、これまで生き延びてきた。それでも生活のどこかで、自分のことを表現する時間が必要。その意味で、こうやって文章を書くことは私にとって大切なのだ。なんだかんだ、このブログを書き始めてもうすぐで十年になる。

2024年12月26日木曜日

Hiromi's Sonicwonder JAPAN TOUR 2024 (2024-12-12)

大宮、東京、名古屋。申し込んだ3公演、すべて当選。ひとつ外れて2公演、あるいは最悪、名古屋だけ当たって残りは落選を想定していた。全当選はベスト・ケース・シナリオでありベスト・ケース・シナリオではなかった。大宮、東京、名古屋の順で12月12日(木)、12月19日(木)、12月21日(土)。自分から申し込んでおいて変な話だがこの短期間に3公演は多い。もしあらかじめ埼玉と東京の当選を確約してくれるなら名古屋は申し込まなかったかもしれない。だって往復の移動費だけで2万円以上かかる。とはいえ目先の費用をケチることで上原ひろみさんの音楽を生で体験する機会を逃すことは避けたい。氏の音楽にはそれだけの価値がある。もともと12月はほとんど予定がなく、予定が入る予定もなかった。後になってその名古屋公演の日にBLUEGOATSのrelease party(それもチャンチーさん作詞曲の)開催が発表された。その日に被せてくるとは。痛恨だった。結局それ以外にも12月23日(月)にLiVS、12月27日(金)に #KTちゃん 、12月28日(土)にLiVS、12月29日(日)にBLUEGOATSと、立て続けに年末の現場スケジュールが決まっていった。現場に不足することがない。むしろ消化しきれない。最初に分かっていれば申し込むのは埼玉と東京だけにしていたと思う。LiVSとの出会いは想定外だった。11月30日(土)の対バンチケットを買うまでこの集団の存在すら知らなかった。

在宅業務を早く切り上げ17時頃に大宮駅に到着。せっかく普段来ない場所に来たのだから何か食べよう。18時開演まで1時間半。たっぷり時間はあるはずが、思っていたより余裕がなかった。18時半より前には会場に入らないといけないし、そもそも店選びや徒歩の時間も加味すると食事というのは意外に時間を要する。考えてみると普段も飲食店への往復と店内の待ち時間、飲み食いする時間で昼休みの1時間は簡単に過ぎてしまう。駅の付近を軽く歩くが目ぼしい店がなく。飲み屋に入るほどの時間はなく。とはいえ軽く一杯は入れておきたい。なんてやってるうちに時間を使いすぎた。立ち飲み日高に入店。黒ホッピー、枝豆、イワシ・フライ、カシラ(塩)、レバー(タレ)。20分以上経っても来ないコロッケ。かといってもういい時間になってきた。今からコロッケが来たところで食っていたら開演時間ギリギリになってしまう。コロッケひとつのためにとるべきリスクではない。レジへ。会計のときにコロッケが来なかったですと言うとその分を金額から引いてくれた。店を出るのが18時15分すぎになった。会場の場所を調べたときに駅から直結していると書いてあったはず。なので安心していたのだが直結はしていなかった。開演まで15分を切っている中、会場の正確な場所がまだ分かっていない。足早にGoogle mapの示す方向に向かう。変な汗が出てくる。

見つけた。入館。お手洗いで陰茎から尿を放出。入場。急ぐ。Teeシャツ購入。欲しかったサファリ色のLは完売。じゃあ黒でいいや。凄く感じのいい売り場の婦人。JPY3,500。席に着いたのが開演5分前くらいだったと思う。真冬。バッチリ決まったコーディネート。古着フーディの上に大きめのネル・シャツ(SEDAN ALL-PURPOSE)、ダウン・ヴェスト(SEDAN ALL-PURPOSE)。クロークやロッカーがあるわけではない(もしあったとしても預ける時間的・精神的余裕はなかった)。左右の席に客がいる中、立ち上がってヴェストとシャツを脱ぐ。大事な服。雑には扱えない。狭い空間。なんとか足元に収める。軽く汗ばむ。左右の人たちからするとなんだこいつ落着きねえなという感じだったに違いない。呼吸を整える。

なんだか間延びした雰囲気。だったように感じる。ちょっと眠たい感じというか。私が眠かったという意味ではなく。大宮ソニック・シティ大ホール。特別、物理的に広いわけではないが、だだっ広く感じた。平日の18時半に、JPY8,500するチケットを購入して駆けつける。それだけの熱意がある人たちが集まったはず。なのに、なんかこう…ピリッとしない。よく理解が出来ない。上原ひろみさんを日本で観られる稀少な機会。ましてや埼玉でなんて年に一度あればいい方なのに。盛り上がりがいまいち。(いや、そんなことねえよ。十分、盛り上がってたよっていう人もいるかもしれない。そうだったのかもしれない。単に私の気持ちが高揚しなかっただけで、それを勝手に周りに投影し、周りのせいにしているだけなのかもしれない。分からない。)私の中ではふがいなさ、歯がゆさよりも諦めが強かった。まあこんなもんか。埼玉だし。埼玉に何を期待するってんだよ。元を辿ると儒教が諸悪の根源。予定調和を崩す、輪を乱す、流れを断つ、水を差す、周りに合わせない、お行儀よく静かにしない、そういう人をとことん白眼視して迫害する。ほかの人に迷惑をかけないこと、歯向かわないこと、従うこと、順番を守ること、そういった規範への過剰な適応。電車が人身事故で止まったら、電車を止めて世の中に迷惑をかけたかどで自殺者がソーシャル・メディアでなじられる。それが正論として通る社会。子どもの頃からずっとそうやって育てられてきて、そういう価値観で生きてきて、このコンサート中に限っては自由に、周りを気にせず、空気を読まず、それぞれが好きに声を出して、演奏に熱狂的に反応する、なんてのは難しいよね。とはいえ、それが実現したこともある。去年の渋谷がそうだった。あの公演が恋しい。アレをもっとやってくれよ。ライブハウス(和製英語)でさ。スタンディングでさ。着席のホールばっかじゃなくてさ。やっている音楽と、鑑賞形式(ホールでの着席)とのミスマッチ。やっている音楽と、客層(高い年齢層。音楽の一部になるのではなく、受け身で鑑賞しに来る人たち)とのミスマッチ。それが気になって楽しみきれない自分も周りに影響を受けすぎるジャップの一員。情けない。まあ、こういう日もある。私に関して言えば、11月30日(土)の対バン以来ずっとLiVSばかり聴いている。今日の公演は、自分の頭をジャズ、上原ひろみさんのモードに切り替えるためのウォーミング・アップのようになってしまった。東京と名古屋。残り2公演はもっと楽しめるだろうか? やや先が思いやられる。

2024年12月22日日曜日

ULTRA!! (2024-11-30)

体調不良で干した11月24日(日)の主催公演。発熱などの分かりやすい風邪症状はない。疲労。気力・体力の低下。コンサートを楽しめる心身状態にないと判断。平日の労働は気を張っているからまあ何とかなる。問題は余暇。最近は週末にサテンでブログを書こうとしても居眠りをしてしまう。読書もはかどらない。(最近このブログの更新が少し遅れていたのはそのためである。今ではほぼ復調している。)11月16日(土)のコンサートも十分に入り込むことが出来なかったが、それが更に悪化していた感じ。11月24日(日)を欠席すると次にBLUEGOATSを観るのが決まっているのが12月29日(日)。その前に可能性があるとすると12月15日(日)だがコレはコンサートではなく縁日イヴェントなのでたぶん行かない(結局、行かなかった)。となると年末までBLUEGOATS現場がないが、それでは物足りない。Twitterのタイムラインに流れてきた11月30日(土)の対バンの告知ツイート。急遽、チケットを購入したのが11月25日(月)22時58分。チケット番号はA90。

BLUEGOATSの出演する対バンに入るのを、私は頑なに避けていた。集団を問わず対バンというものに入ったことがない。お目当ての出演者以外には『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)。なんで知りもしなかった集団を何十分も観なきゃいけないんだ。それに、普段は接点のない複数集団の支持者が同じフロアに密集することによるストレスは容易に想像できる。それぞれにお作法、文化が異なるからだ。BLUEGOATSを理解し愛する人たちが集まっているからBLUEGOATSのノリ、雰囲気が成立する。明文化されたルールだけでなくその現場ならではの不文律がある。ある意味その閉鎖性こそがBLUEGOATSの現場をBLUEGOATSの現場たらしめている。もちろんコレはBLUEGOATSに限った話ではなく他のあらゆる集団についても同じことが言える。何も知らない部外者によって普段の平和や秩序がぶち壊される可能性がある。それに対バンとなると今度は対バン特有のお作法もありそうでなんだか面倒くさそう。今回に関しては出演者がBLUEGOATSともう一組だけであること、BLUEGOATSのコンサートを30分×2セット(60分)観られること、対バン相手のLiVSが若い女の集団であることから私は参加を決意した。若い女の集団ならまあ見ても損はないかなと。コレが男のバンドだったらおそらく申し込んでいなかった。

11月26日(火)に三川さん(BLUEGOATS運営)がササガワ氏(LiVS運営)とツイキャスで対談していた。もう90枚くらい売れてるらしいっすよ。え、SOLD OUTにしないと。まだイケるよ。対バンをSOLD OUTにしても意味ないから。いや物理的に入れないから。的なやり取りを、そのちょうど90番を買ったのは私なんだよなと思いながら聞いていた。この対談を視聴することで私のLiVSへの興味が増した。若い女の集団という以外には何も知らなかったが、不登校だったメンバーさんが多いことや、運営が音楽を本気で作っていてアルバムという単位で聴かせることにこだわっていることなどを知った。アルバムのくだりにちくりと噛みつく三川さん。LiVSは色んな曲があるからこそ何をやりたいのか分からない。BLUEGOATSはアルバムではなく単発でポンポン出していくから同じ方向性の曲を出し続けても成り立つ。BLUEGOATSがやろうとしていることは宗教。というようなことを言っていた。面白かった。おそらく私の後にチケットを購入したのは数名、多くて10名くらいだろうか。最終的にはSOLD OUTになっていた。実のところ主催公演に比べ対バンはゆったり観られると耳にしていたので完売は想定外だった。

11時開場、11時半開演という我々の昼食チャンスを完全に潰しに来る嫌がらせのような時程も、先日のツイキャスを聞いて理解した。この対バンがそうだとは言っていなかったが、一般的な話として昼の時間帯の方がライブハウス(和製英語)の使用料が安いのだ。仕方ない。昼食はスキップする。その代わり、朝食は池袋駅北口のコメダでゆで卵とトーストのモーニングにゆで卵をひとつ追加。最低限のたんぱく質を確保。卵二つで約12g。今日の会場、Flowers Loft Shimokitazawa。下北沢駅からすぐ。近隣のスーパー・マーケット、オオゼキで売っていた大ぶりな柿がおいしそう。カバンをコイン・ロッカーに預けているので公演後に買おうと思ったがもちろん公演後には忘れていた。会場前には人が溜まっても邪魔にならない空間があって、肩身の狭い思いをせずに入場待ちが出来た。記念撮影をするLiVS支持者たち。意外と女性もいる。まともな位置には行けないことが確定しているA90番の私。気楽に待ち、ほぼ最後の客として入場。フロアは思ったより混んでいない。段差のある後方二列目を確保。つくりが横に長い。だからステージは近い。覚悟していたよりも総じて良好な環境。開演前、各運営から注意事項のアナウンス。LiVSは静止画も動画も自由。どんどんSNSに上げてくれというスタンス。一方、BLUEGOATSは静止画のみOK。ミックス(ファイバー、サイバー、ジャージャー的なキモイ絶叫)が禁止。今回は出演集団が二つだからまだいいものの、コレが三つ、四つとなると訳が分からなくなるだろうな。あれ、今って何がよくて何がダメなんだっけって。

耳栓を忘れたことに、家を出てすぐに気付いた。まあいいやと思いそのまま駅に向かったが、結果としてよくはなかった。過剰な音量。大きすぎる耳へのダメージ。終演直後に近くの紳士が耳が死んだ…とお連れの紳士に言っていた。同感。明らかに耳に悪い。あのとき横着して家に戻らなかったのを悔やんだ。コンサート中、すぐ近くで誰かが思いっきり絶叫してもまったくうるさいと感じなかった。それくらいにコンサート自体の音が大きかった。ただその分、自分も叫びやすかった。いくら大声を出しても目立たない。埋もれる。その安心感。思う存分、私は大きな声でBLUEGOATSを歌い続けた。誰に配慮することもなく。それは快感だった。世界から自分の存在がなくなっているようで。もっと大きな何かの一部になっているようで。他人の目がいっさい気にならなくなって。自分がどんな大きな声を出しても周りに影響を与えることがない。この世界を変えることがない。だから好き放題に感情を爆発させていいんだって。フロアの前にいるか後ろにいるか。そんなことは関係ない。何度も息をすべて吐き切るまで叫び続けた。最初から最後までフロアのヴァイブスは満タンだった。BLUEGOATSとLiVSが入れ替わる30分の区切りごとにきつい…という声が聞こえてくるほどにヘッズがすべてを出し切っていた。今日に関しては対バンという形式がこれ以上ないほどバッチリとはまったように感じた。ステージ側もフロア側も互いの陣営同士がバチバチに勝負している感じもありつつ、お互いを尊重している。両方の支持者たちが相手の集団に敬意と興味を持ってコンサートを作り上げている。二組という少なさ。BLUEGOATSとLiVSの親和性。振り返ると今年でいちばん熱くて楽しい現場だったかもしれない。(まだ一年が終わっていないが。)

LiVSには好印象を抱いた。メンバーさんを順繰りに見ていくと一人の婦人に目が留まる。ショート? ボブ? の黒髪。Juice=Juice時代の宮本佳林さん感のあるパッと見の第一印象。しなやかな身のこなし。魅力的な歌声。可愛らしい。もし私がLiVSでいわゆる推しを決めるとするとこの淑女以外にあり得ない。お名前だけは覚えないと。後でチェキを撮りたい。お話をしてみたい。自己紹介でお名前が判明。「いーつだって 忘れなーい 自己紹介が思いつかない そーんなーのー常識ー はい、LiVSの著作権ギリギリ担当、ミニ・マルコです」。ちびまる子ちゃんの替え歌。それでミニ・マルコさん。覚えやすかった。どうやら今回でいうところの「自己紹介が思いつかない」の箇所を毎回変えているようだ。自己紹介がそれぞれにネタを仕込んでいて個性的だった。挨拶担当のコンニチハ・クリニックさん、略してコンクリ。あとびっくりしたのがユニセックスさん。その名前、なんで? ヘッズのノリはよくある地下アイドルのテンプレート(ミックスとか、曲中の然るべきタイミングでそのとき歌っているメンバーさんの名前を叫ぶとか)を基本としつつも、割と多彩だった。『RとC』だったかな、ではヘッズがみんな肩を組んで前後に身体を傾けているのが面白かった。

新規はLiVS公式アカウントをTwitterでフォローすれば写メ券が無料でもらえるというLiVS運営からのアナウンス。行くっきゃない。買うつもりだったので渡りに舟。どうやらBLUEGOATS支持者が入場者の多数を占めていたようで、物販列はBLUEGOATSが数倍長い。先にLiVSの列に並び、新規である旨を申告、LiVSをフォローする。ミニ・マルコさんはさっきフォローした。新規なんですけど、と言うと売り場の女性が非常に喜んでくれた。フロアの奥でLiVS、手前でBLUEGOATSの特典会が行われた。やはり参加人数はBLUEGOATSが数倍多い。先にLiVSの方に行っておかないと終わってしまう可能性がある。ミニ・マルコさんの列に並ぶ。撮影係の紳士に写メ券とiPhone SE (2nd generation) を渡す。私が被っていた帽子(W@NDERFABRIC)のつばを手でつまんでポーズをとるミニ・マルコさん。今日はじめてLiVSを観たんですけど、いちばん目を引きました。目で追っちゃいました。とお伝えする。あの辺にいたよねとか、目も合った気がする~なぞと分かりやすく模範的なアイドルの接客対応をしてくださるミニ・マルコさん。久しく味わっていなかったこの感じ。氏が私の服を褒めてくれた流れで、帽子(W@NDERFABRIC)の話をする。曰く、叔父さんが帽子を作っているので自身も帽子が好きなのだという。最後に名前を聞かれ、しいてきと答える。しいてきね。覚える! と言ってくださったが、覚えられるはずがない。なぜなら普通、しいてきという音ではctekiという表記にたどり着かないからだ。また来てね! と手を振ってくれるミニ・マルコさん。頷く私。その後、BLUEGOATS側に移動する。場所が狭すぎて列が混沌状態。並んでいる人に聞いても誰の列なのかが分からないという。チャンチーさんは喉を傷め直近のコンサートでは歌唱なしだった。今日から歌えるようになった。回復を祝いたいヘッズで長くなった列。人の多さを見た三川さんがうわっこんないるのかよという感じで顔をしかめていた。オシャレ! と服を褒めてくれるチャンチーさん。いつもと違う感じ。コレ(上着)最近買ったんだ。でもバッカ高いんでしょ、シュプ(Supreme)って。古着で5万くらいしたと答えると目を丸くして打撃でも食らったように少し後ろにのけぞるチャンチーさん。何がそうさせるの? というチャンチーさんの問いがこんな高い服を買ってしまう私のことを言っているのかと思い、まあオタクだからなぞと嚙み合わない回答をしてしまった(チャンチーさんが聞いていたのはSupremeの服が高価になる理由だった)。

2024年12月15日日曜日

3周年記念ワンマンライブ“一生青春” (2024-11-16)

男なら二枚はイケる(D氏談)でお馴染みのThe Pizza下北沢店。食べログには土日祝日10時半開店と書いてあるが実際の開店時間は平日同様、11時だった。食べログの編集権限を持ってる奴、早く直せや。というか店側で直せや。仮に更新したのが客だったにしてもそれを放置すなや。今日も11時半開場、12時開演という例によって我々の昼食を完全無視した時程。とはいえこっちにも食い意地がある。せっかく下北沢に来たんだし、入場列に並ぶ前にちょっと食っておきたい。10時半の開店直後にThe Pizzaに入れば入場列にも支障なく並べるんじゃないか。と思っていたが確認のため中に入ると11時からですとお店の紳士に言われた。このためにわざわざ10時半前に下北沢駅に着くようにしたんだぞ。ふざけんな食べログ、と思いながら付近を歩いていたら偶然、今日の会場が見つかった。下北沢WAVER。10時半すぎの時点ですでに数十人が列を為している。これを見て少しでも前に行こうという私の思いは砕かれた。今日は彼らに委ねて、後方で観よう。たぶん今から急いで列に加わったところで大して変わらない。開場時間になったらまた来よう。ちょうど体調もさほど良くないし。今日は軽めに流す感じで。いやあなんかはっきりと風邪をひいているとかじゃないんだけど、何となく低調で。蓄積した疲れがある。11時ちょい過ぎにThe Pizzaに入店。ミックス・ピザ二枚を平らげて男であることを証明。あとバドワイザーを飲んだけど小瓶すぎて。11時半ちょうどくらいだったかな。再び会場の前へ。3周年という節目のコンサート。チケットは早い段階で完売。買いそびれたヘッズが続出したようで、一人でも多くヘッズを詰め込むために都合がつかなくなった人からのキャンセルを受け付けていた。事前にBLUEGOATS運営から混むので荷物を軽くするようにしてくれというメール、そしてかなり混むので覚悟してくれというツイートまであった。私が入場した時点では既に満員に近かった。近くにいた三川さん(事務所社長)が、俺が客だったらこんな混んでるのイヤだわなぞと言っているのが聞こえた。そして林田さん(事務所副社長)が、あと10人行けたな。もっと儲けれたなぞと冗談めかして言い、笑っていた。そんな喋りが聞こえるだけあって私が立っていたのはほぼ一番後ろ。ほぼ左端。結果的にはコンサートに乗り切れず、私としては不完全燃焼。だが場所が悪かったせいと一概には言えない。自分の体調の影響が7割くらい。声を出す元気が出てこない。仮に前の方に行っていたとしても熱量についていけていなかったと思う。だから今日は後ろでちょうどよかった。あと驚いたのが、近くにいた紳士が意識を失い、ヘッズ数名と林田さんによって外に運び出された。コンサート中、その紳士が壁際に移動していた。足でも悪くて壁に寄りかかりたいのかなと思っていたが、その後にドサッという音がして。数秒後にそっちを見ると、その紳士が床に倒れている。少し経つと苦しそうに早いテンポの呼吸を何度かしていた。私も氏を運び出すのに協力しようかと思ったが人手は足りているようだった。今日に関しては元からコンサートにあまり入り込めていなかったのに、さらに彼のことが気掛かりになってしばらくコンサートに集中できなかった。ちなみに数ヶ月前に近所の銭湯で気を失った紳士がいて、私はその人を脱衣所まで運ぶのに協力した。ライブ・ハウス(和製英語)にしても銭湯にしても、大勢の人が周りにいるから万一のことがあったときに何らかの処置には繋げてもらえる。その意味でも、我々のように身寄りのない独居中高年男性は人のいる場所で多くの時間を過ごすべきである。

この下北沢WAVERは、BLUEGOATSが3年前にデビュー公演を行ったのと同じ場所らしい。三年間で横浜アリーナを埋めるという結成当初の目標からすると、その約束の時期にまったく同じ会場でコンサートをやっているというのは穏やかな事態ではない。悔しくはないとダイナマイト・マリンさんは言った。曰く、大きな会場でライブをやれるのはもちろん素晴らしいこと。でもそれよりも目の前の一人一人と目を合わせてライブをやることが何よりも大事だとこの三年間で気付くことが出来た。チャンチーさんは、三年を経過しても集団を継続させることが決まってから、一ヶ月くらいは受け入れられなかったと吐露した。三年間という期限を決めてやってきたから。でもみんなの前に立ってライブをしていたら、これは続けないと後悔すると思った。アイドルを9年やってきて、こんなにライブをしていて幸せなのは初めて。朝10時からお客さんゼロのライブをやったこともある。人がパンパンに詰まった今日の景色を見られるのは幸せというようなことを言っていた。コンサート中に差し挟まれる各メンバーさんのコメントから、会場が三年前と同じだったとしても、三年前と同じBLUEGOATSでは決してないというのがひしひしと伝わってきた。

恒例となった、『東京タワー』の冒頭アカペラ合唱。こうやってBLUEGOATSのノリがどんどん積み上がっていく。既存の正解ではなく、地道にひとつひとつ自分たちで作り上げていくから価値がある。

ちょっと前の動画でチャンチーさんは、修学旅行でニュージーランドに行ったことがあると言っていた。ニュージーランドは私が子どもの頃に五年間住んでいた国なので、特典会でその話をした。そのときにモールに行ったとかスキーをしたとか、何かしら私と共通の経験を探ろうとしてくれたが、なかった。時代が違うからね、と私は言った。というかさ、普通、修学旅行でニュージーランドなんか行かないよね。結構、お嬢様学校だよね? そうなの、実は。あんまり言っちゃいけないんだけど…的なことを言っていた。

14時キックオフの、ジュビロ磐田対横浜F・マリノス。ササッとチェキを撮って会場を後にしたものの、サテンに入る前に試合が始まった。Fire HD 10を抱えながら歩いた。そしてサテンに入る前に失点。前半わずか四分。何やっとんねん。珈琲館に入って試合の残りを見届ける。そこからマリノスが四点を返し(含アンデルソン・ロペスさんのハット・トリック)、楽勝かと思いきや終盤にジャーメイン良さんにあっさり二点を決められ一点差まで詰め寄られる。結局、4-3で逃げ切った。エンタメとしてはハラハラして面白かったが、相変わらず守備に大きな問題を抱えているマリノス。この勝利が柏レイソルの明治安田J1リーグ残留に大きく貢献することになる。後で柏レイソル支持者である以前の勤め先の先輩から感謝のLINEメッセージが来た。

試合終了直後にD氏と合流。私と会うために2時間限定で仕事を抜け出してくださった。別のサテンでしばらく歓談。明治安田J1リーグの残留争いと明治安田J2リーグの昇格争いの話。17時になったらケバブ・シェフへ。数年前にKと来て気に入っていたトルコ料理店。ケバブ盛り合わせ、ナスのメゼとパン。久しぶりだが味がよく値段も手頃。あとピデを頼んだが、作れないことが18時間際に判明。時間もないので追加オーダーはせず。実はD氏も私と同様にピザなどの一部例外を除きチーズがお嫌いであることが判明。

かえってきたアイドルめいめい (2024-11-10)

隙あらばビリヤニを食している2024年4月以降の私だが、この米料理をカレーあるいはそれに類する何か(スープ等)と混ぜて(かけて)食べるという発想のファンではなかった。そこにハーモニーはない。味が強い同士で打ち消し合う。それぞれの個性が感じられなくなってしまう。カレーはナン、チャパティ、ライス、ドーサと食べるべき。ビリヤニは既に完成した料理。何かを足すべきではない。単独で味わうべき。(もちろんライタは別ね。)と思っていたが、再考を促された。東池袋エー・ラージ。マトン・ビリヤニ 海老サルナとトッピング・オムレツJPY2,300。サルナというのはグレイヴィー状のカレーのような何か。それがマトン・ビリヤニの上にかかっている。私のそれまでの感覚だとビリヤニとサルナが主張し合って互いに譲らない展開になるはずだった。ラージさんが作ったこの一皿では不思議とそれが起きていない。むしろお互いを引き立ててすらいる。

HIP HOPとは何ぞや? んなもん分かったとこでそれがナンボや?(Mummy-D)(『Rhymester曰く、』、Rhymester)

この日限定でめいめいがアイドルに戻る。そのような触れ込みで発表されたコンサート。アイドルに戻るとか、アイドルをやるとか、私はそういった言い回しを聞く度に引っ掛かる。アイドルという言葉が英単語のidolと同じだとするならばそれは偶像や憧れの存在といった意味を持つはずである。なろうとしてなれるものではない。自分から名乗るものでもない。職業ではない。ましてや歌う、踊る、チェキを撮るなどの具体的な活動テンプレートとも無関係だ。一日だけアイドルに戻る、というめいめいの声明。これはアイドルが職業や具体的な業務内容を指す言葉でないと成り立たない。アイドルとは何ぞや? めいめいに聞いてみたい。しかし、聞いてみたところでそんな質問には意味がないのかもしれない。なぜなら日本におけるアイドルはもはやidolとは直接の関係がない、aidoruという職業だからだ。当事者たちがそう捉えている以上、それが答えなのだ。Idolという英単語はこういう意味でなんていう蘊蓄を持ちだしたところで、んなもん分かったところでそれがナンボや? なのである。「この現場以外に本場なんてのは存在しない」(宇多丸)(『ウワサの真相』、Rhymester feat. F.O.H.)。ただ、それでも言っておきたい。かつてKRS-ONEは言った:Rap is something you do. Hip-Hop is something you live。同じように、歌ったり踊ったりすることはsomething you do。アイドルis something you liveのはずである。

以前、ミュージカルのチケット代の入金を忘れ、締め切り日の翌日にファンクラブの担当者からきつい口調のメールが来たことがある。その一件でファンクラブから目を付けられ今後の公演で割り当てられる席のランクを落とされてしまうのではないかという一抹の不安があった。幸いなことにそれはなさそうである。直筆サイン入チェキ付S席。各部JPY11,000。私に与えられた本日の席は昼が最前、夜が5列目。本当にいつもありがとうございます。イイノ・ホール。たぶん初めて。霞ヶ関駅。閑散とする駅直結の地下街。ほとんどの店が閉まっている。セブン・イレブンが唯一の希望。17時に閉店するカフェ・ド・クリエ。昼公演(14時~)と夜公演(18時~)の間に入ろうと思ったが17時閉店だとレジで店員氏に言われやめた。平日の近隣オフィス勤務者たちに最適化された駅。無機質。場所は違うけど去年の一人芝居コンサートのときもこんな感じだった。

ファンクラブ会員向けにセット・リストが事前公開された。Hello! Projectだけかと思いきや、今流行っている陣営のも盛り込んである。一応、義務をこなすようにさらっと目は通した。このブログで何度も書いていたように、私がかつて抱いていたアイドル的なものに対する情熱はそのかなりの部分が消失している。だから、いくらゴリゴリにアイドル色の強いセット・リストを見せられたところで、そこまで掻き立てられる感情は持ち合わせていない。それがたとえめいめいであっても。もし私が今でもそんなにアイドルに夢中なら、そもそもめいめいの個人活動は追っていないと思う。“アイドルの応援”から半分降りたからこそ、めいめいを見るのに一定のお金と時間を割いているのだ。“アイドルの応援”を主軸に置いている人がめいめいの活動を追ってもあまり満たされないだろう。もちろん私は今でも大きな括り(ジャンル、カテゴリ)で言えばアイドルを追っている。しかしHello! Projectは見るのをやめ、その後しばらくKissBeeを見ていたがもうやめ、今ではBLUEGOATSに熱中している。私がアイドルというカテゴリ、ジャンルに求める要素やそのバランスの変容が、この変遷に隠されていると思う。アイドルに限った話というよりは、私が趣味や娯楽全般に求めるものを、フットボール観戦を中心とする他の手段と組み合わせながらどうやって埋めていくかという問題。

セット・リストをまともに予習しなかったのは『マジ興味ねぇ』(DJ OASIS feat. K DUB SHINE)のもあるし、労働のストレスで精神的な余裕がなかったのも大きい。頭の後ろに十円ハゲが出来ている。(鍼の先生曰くハゲた箇所に毎日ショウガを塗ると治りが早いらしい。)ただ、コールが出来るように準備してきてほしいという先方の狙いを完全に無視したところで自分が楽しめなくなるだけだ。だから当日、知らない曲を一度ずつ聴いてみた。Spotifyにあった。あと、一曲目の『ドキッ! こういうのが恋なの?』(キャナーリ倶楽部)が肝だろうなとは踏んでいた。幼女のメンバーさんと客席のオジサンたちのコール&レスポンスが地獄絵図で有名なやつ。免疫ない人が見たらドン引くぞ。これがノン・フィクション。ハイ、ハイ、ハイ! とかかーもね、ハイ! とかやけにオタク側がハキハキして統率がとれてキレがいいやつ。それを一曲目に持ってくるってことはめいめいとしてはのっけからぶち上げたいんだろうなと。だからあの有名な動画をYouTubeで観て、我々サイドがどこで何を発声するのか何となく把握しておいた。ところがその努力は無残にも水泡に帰した。昼公演。最前。数メートル先でぷるぷる震えるめいめいの生ふともも。コールどころではなかった。曲どころではなかった。最初の衣装。めいめい(26)が根本付近まで見せてくださるふともも。わずか3曲で衣装替え。減った肌面積。残念。束の間の夢。

夜公演。5列目のそれも横(左)のブロックだったので、ステージと客席を全体的に俯瞰するようにコンサートを味わうことが出来た。これはこれでよかった。(最前にいると全体としての盛り上がりは分からない。)コンサートの流れも把握済みなので、良くも悪くも身構えず、リラックスしていた。ちょっと疲れていたのもあって、ぼんやりしながら観ている時間が長かった。最後の方。『デモサヨナラ』(Dorothy Little Happy)。フックのリリックで、好きよの連呼。
めいめい:好きよ
ヘッズ:オレモー!
めいめい:好きよ
ヘッズ:オレモー!
オレモー! と迷いなく叫ぶ活力は私の内側から湧き出てこない。浮かべる苦笑い。ステージで輝く一人の美女と、お金を払って彼女を観に来ている不特定多数による、恋人同士で交わす言葉のようなコール&レスポンス。これで救われる人もいるのかもしれない。それを否定するわけではない。ただ、今の私にはどうしてもグロテスクに思えてしまう。ああ、俺には無理だなって思った。もうこのゲームに入れ込めない。たとえばフットボール・ファンが、なんでボールを蹴り合ってゴールに入れるだけでいい歳の大人同士がこんなにムキになっているんだと我に返ったような感覚。それ言っちゃお仕舞いじゃん。お仕舞いなんだろう。

めいめいの、リスクを取った人生。すべてをさらけ出して、何の保証もない。他方、リスクを避けながら、匿名の存在、群衆の一部として、めいめい側の人たち(アイドル、芸能人、音楽家、スポーツ選手、実業家、等々)の活動を娯楽として消費する我々。自分はやらないけどそれをやる人たちのことは安全な場所から見たい。めいめい側の人間と、我々側の人間。そこにはとてつもない断絶がある。夜公演のステージを眺めながら、なぜかそんな思考が頭をよぎった。

2024年10月27日日曜日

駆け抜けて青春〜後夜祭〜ワンコインLIVE (2024-10-14)

起きて洗濯機を回し、日焼けサロンで18分焼き、ちょこざっぷで30分走り、セヴン・イレヴンのホット・コーヒー(R)を飲み、家で冷水シャワーを浴び、お香を焚く。模範的な祝日の朝。幸先いい。新大久保ソルマリ。ソルマリ・ミックス・プラッター、サモサ・タルカリ、アサヒ・スーパー・ドライ。今日は時程的に夕食がまともに摂れないかもしれない。コンサートが19時半開場、20時開演なんだけど、その前にYouTubeメンバーシップ限定のオフ会がある。そちらが16時半集合、17時~18時半がトーク・ショウ、18時半~19時半が特典会。つまり16時半から隙間がまったくない。可能性があるとすればオフ会の特典会終了からコンサートの入場までの間。19時半までと言っても最後まで残るのはメンバーさんと枚数を積むおまいつだけ。私が最後までいるわけではない。メシのことばっか気にして食い意地が張ってンなと思うかもしれないが、再三に渡って書いてきたように、休日のメシってのは私にとっては本当に重要。BLUEGOATSはたまにあるんだけど11時半開場の12時開演とか、やめてほしい。

オフ会もコンサートも同じ新宿Marble。オフ会前に紀伊国屋書店を見たり近辺をテキツーにぶらぶらしていたら中途半端に時間が余った。わざわざサテンに入るのもアレなんで、ファミリー・マートでモカ・ブレンド(S)を買って店の近くで立ち飲み。出入り口のすぐ横で缶ビールを呷りつつ店を出る若い女に声をかける50代くらいの赤ら顔白人男性。Hey, where you goin'? なんと相手をしている。24歳。これから近くで仕事。How often do you dye your hair? とか、You look like a Chineseといったホワイト・トラッシュの不躾な問いかけにも笑顔で対応する女。しばらく歓談した後、仕事に遅れちゃうからと立ち去る。

オフ会はドリンク代がかからないとは聞いていたが、ドリンクをタダでもらえるという意味だとは思わず、びっくりした。ドリンク代がかからない代わりにドリンクももらえない(欲しいなら自分で買う)ものと思い込んでいた。ラム・トニック。既にフロアに置かれた椅子のすべて(50個くらいだったか)にケツかカバンが乗っている。その後ろで立ち見。もしどうしても立っているのがつらい人がいたら誰か代わってあげてほしいと呼びかける三川さん(株式会社TEAF代表取締役)が本日の司会。あるビッグな案件のオファーが来た話や、メンバーが曲のリリックを解説する企画をYouTubeでやりたいという話、Q&Aなど。コンサートとは違って落ち着きのある雰囲気の中、色んな話を聞くことが出来て面白かった。特典会はメンバーさんが私服で登場。普段は同じコンサートの衣装で代わり映えがしないので、服が違うだけで新鮮。しかも一人一人、特徴があって可愛らしい。特にダイナマイト・マリンさんのオーヴァーサイズドな太いジーンズとグレーのバンドtee?の合わせが印象的だった。チャンチーさんは白系で、フリルっていうかレースというか半透明の何かを重ねた彼女らしい合わせ。ほんま・かいなさんは身体にフィットした黒系の合わせ。ソン・ソナさんはどんなのだったか忘れたがきっと可愛かったと思う。特典券がなぜかいつもよりJPY500安いJPY2,000だった。チャンチーさん。私が来ていた長袖tee(W@NDERFABRIC)を褒めてくれたので、チャンチーさんも古着好きなんだよね? と聞いたら頷く。最近は買っているの? 聞くと買っていない。買うときは店に行く派? それともネットで買うかを聞くと店に行くとのこと。私がネットで見ていると言うと、どこを見ているのか聞いてくる。色々見るよ。レディースもある? あるよ。でもやっぱ男の服の方が多いかな。たとえばFlamingoとか、JAMとか、Feeetとか…といくつか挙げてみたところ三つとも彼女は知っていた。でもFlamingoはなんだかんだ高いんだよね。質はいいんだけど…もっとお金があるといいなとチャンチーさん。給料が増えるといいね、と言ったくらいでお時間。また(このすぐ後の)ライブでね、とチャンチーさん。私が当たり前に来るものと認識してくれているのが嬉しい。ちなみにBLUEGOATSの基本給は3万円で、最近まで2万円だった。実際にはチャンチーさんの場合YouTubeの編集などの手当が加算され7万円くらいもらっているようだ。

19時前には終わったので一旦、会場を出る。だがサクッと食えてなおかつ興味をひく店がすぐに見つからない。なので夕食はキャンセル。19時20分くらい?に新宿Marbleに戻ると列が出来ている。おそらく特典会が終わった人からそのまま入場列を形成しているのだろう。コンサートのオフ会に続き、私は最後の方。列で近くにいたおまいつの紳士が、以前に特典会でかいなってワキがエロいよねと本人に言って本気で嫌がられたことがあるとお仲間に話していて、非常に興味深かった。19時半を過ぎても始まらない入場。どうやら特典会が延びているようだ。(開演は15-20分くらい押した。)いつもより安いし、メンバーさんの衣装がレアだしで、多めに買っている人が多いのかもしれない。オフ会は参加が無料な上にドリンクがタダでもらえたが、コンサートの方までドリンク代がJPY500値引きされてJPY100の支払いで済んだ(メンバーシップ会員は自己申告制)。そもそものチケット代がJPY500なのに。太っ腹。私がフロアに到達した時点でだいぶ埋まっている。四列目くらいの位置に立つ。すると前にいた紳士が「前どうぞ」と空いている前方のスペースに誘導してくださる(どうやらあえて真ん中くらいの位置でお仲間と楽しみたかったようだ)。「え、いいンすか?」。進んだ先が2列目。幸運。

前方にいたおかげで、特典会の別れ際、顔見えたよ。いい顔してたとチャンチーさんが言ってくれた。そういえばオフ会の特典会ではチェキのポーズを決めるとき、(筆者の)笑顔がいいからとチャンチーさんの指定で笑顔のポーズになった。たとえお世辞であったとしても笑顔を褒められたのは人生でほぼ初めてかもしれない。読者諸兄と同じように、私も決して笑顔の多い人生を送ってきたわけではない。笑顔といえばチャンチーさんの代名詞。ある長所を持っている人は、他人が示すその同じ長所を感知するセンサーが強いのだ。

合唱が今のBLUEGOATSのノリのキモである。特定の曲の特定箇所を歌うのではなく、全体的に一緒に歌うのが普通になってきている。歌うためにはリリックを覚えないといけない。私はこれを思ったよりも出来ていない。悔しい。リリックを見ながら繰り返して自分で歌ってみないと覚えるのは難しい。聴くのとリリックを覚えるのとでは別モノ。聴いているだけでは曖昧になってしまう。分からないときは適当に自分で歌詞を作って歌ってしまえばいいとオフ会でほんま・かいなさんは言っていた。実際、リリックを多少間違えたところで浮かない自由な雰囲気かこのフロアにはある。一糸乱れないマス・ゲーム的な合唱ではなく、それぞれの内なるパッションを解き放ち、それが合致した結果の合唱。肩組み。ジャンプ。終演後には私も周囲の紳士たちも汗をかき、顔は上気し、肩で息をしている。最高だぜ。回を重ねるごとに最高を更新していくBLUEGOATSのコンサート。その一部になれる幸せ。とはいえ、やっぱりリリックに確信を持って歌った方が大きな声が出せる。感情もより強く発露できる。そこはこれから上達していきたい。

特典会。2枚買って、一枚はチェキ、もう一枚はiPhone SE (2nd generation)で林田さん(株式会社TEAF副社長)に撮ってもらった。私のiPhone SE (2nd generation)背面に挟んであるNHK撃退ステッカーに興味を示すチャンチーさん。チェキにはNHKをぶっ壊すにかけて「ライブぶっ壊す!!!」とうまいことを書き込んでくれた。ライブでウチらをぶっ壊してほしい。NHKをぶっ壊してる場合じゃなよ、とチャンチーさん。会場を出る前にバー・カウンターでラム・トニックを作ってもらい、会場の外に持ち出す。外気を浴びながらラム・トニックをちびちびやる。これが夕食代わり。余韻に浸る。また近いうちにこの集団を観に来てその一部になりたいが、今のところ11月16日(土)まで入る予定がない。

2024年10月26日土曜日

駆け抜けて青春ツアー/PACHI PACHI 20 (2024-10-06)

私が初めてBLUEGOATSを観に行った2024年2月18日(日)の時点で、三年間という時間制限のうち二年以上が経過していた。もうその時点で現実的ではないのが明らかだった。入場無料の投げ銭公演でこの小さなライブ・ハウス(和製英語)がようやく埋まるかどうか。何がどう転んだらあと10ヶ月やそこらで横浜アリーナを埋められるようになるのか。チケットを捌けるかどうかの以前に、もう会場の予約をしておかないと間に合わない時期なのでは。大体フル・サイズのセット・リストを組めるだけの持ち曲がないじゃないか。メンバーさんも運営さんもファンも分かっていないはずがない。誰もハッキリと言わないだけで年末になったら解散するのが規定路線なのだろうか。スッキリしなかった。

BLUEGOATSは3年以内に横浜アリーナを埋めるのを目指して立ち上げられた集団である。過去のYouTube動画を見てもメンバーさんたちは度々その目標を口にしていた。そうである以上、三年が経った時点で、あるいは三年が間近になった時点で、何かしらの振り返りが必要になる。ゴールが達成できたのか、できそうなのか、無理そうなのか。それを受けてこの集団はどうしていくのか。活動を続けるのか、終えるのか。続ける場合、目標は据え置くのか、修正するのか。終える場合、個々のメンバーさんは別の形で芸能の世界に残るのか、業界から足を洗ってカタギになるのか。

前にチャンチーさんがインスタグラムの配信で、観に行きたいけどなかなか予定が合わない的なコメントに対し、会いに来られるうちに会いに来てほしい。ウチらは一応、期限つきでやっているから…というようなことを言っていた。やっぱり三年を区切りに終わってしまうんだろうか。私は薄々そう思いつつも、その不安からは目を逸らして、BLUEGOATSのある生活を楽しんでいた。1月16日(火)にBLUEGOATSの存在を知って以来、私はSpotifyにBLUEGOATSの曲をすべて集めたプレイ・リストを作成し、毎日のように聴くようになった。2月18日(日)から9月14日(土)の間にコンサートに7回入った。YouTubeのアオヤギ・チャンネルは生活に欠かせない。同じ動画を何度も繰り返して視聴している。

彼女たちの公演に足を運べば運ぶほど、曲を聴けば聴くほど、動画を観れば観るほど、横浜アリーナに行けませんでした。はい解散、で済ませるべき集団ではないと思うようになった。そんなつまらないことで終わらせるべき集団ではない。何せ日を追う毎にどんどん面白くなっていく。2月18日(日)時点ではフロアの熱狂がゼロだった。今となっては手がつけられないくらいにコンサートが盛り上がる。地下アイドルや地上アイドルのテンプレートに頼らない、BLUEGOATSなりの熱狂を作り出すという難題にこの短期間で答えを出した。これは驚くべきことだ。一体どこまで進んでいくんだ。もっと長く見ていたい。この先を見たい。デカい花火を一発打てたら成功、打てなかったら失敗、なんていう問題ではない。この集団の価値はそこではない。

目的が手段になり、手段が目的になること。その美しさをBLUEGOATSは教えてくれる。そしてその道のりを一緒に楽しませてくれる。記録よりも記憶。結果よりも過程。それこそがBLUEGOATSが言う青春なのではないだろうか。この東名阪ツアーでBLUEGOATSは経済的な事情から車中泊で移動していたのだが、寝ている様子までYouTube配信で映していた。見せすぎなくらい過程を見せてくれていた。今回に限らず、マラソン、24時間ライブ、10時間ライブなど、多くの企画を無料でYouTube配信してくれている。YouTubeの動画も簡潔、端的にまとめるのではなく、そこまで撮って動画にするのかと思うほど色んな場面を見せてくれる。動画の長さは1時間超えが当たり前。一見ムダに見えることや、報われるのかが分からない苦労、普通は見せないような部分まで開示して見せてくれることで、BLUEGOATSと自分が一蓮托生のような気持ちになってくる。実際、集団の公式スローガンが最近「あなたと私でBLUEGOATS」に更新された。我々サイドも歌をそらんじているのを前提に一緒に歌うことを求めてくる。「お前らもっとBLUEGOATSとしての自覚持て!」とコンサート中にチャンチーさんが煽ってくる(10時間ライブのときだったかな?)。

コンサートの終盤、ほんま・かいなさんから集団の今後に関する発表があった。「あたしたち、BLUEGOATS…これからも続きます! 終わらせません! あなたと私でBLUEGOATS! ウチらが終わったら、あなたも終わっちゃうでしょ? あなたを終わらせないために、あたしを終わらせないために、BLUEGOATSを終わらせないために、あなたと私でBLUEGOATSです! これからも、ずっと末永く、よろしくお願いします!」。特典会でチャンチーさんに、集団が存続するのが嬉しい旨をお伝えした。彼女曰く最近メンバーで話し合った結果、全員の意志が一致した。決まったのはこの数ヶ月の話。今の四人になってから。最後だけ(大阪、名古屋、東京の順に回るツアーの東京)でも一緒に過ごせてよかったと言ってくれたのを聞き、名古屋も行けばよかったかな、と思った。でもそうやって心残りになるくらいが丁度いいのでしょう。名古屋に行っていればどうせ大阪にも行っていればよかったと思うんだろう。(と言いつつも、次に機会があれば遠征してもいいかなと思っている。)

開場時間の直前まで会場付近の地上にいたが案内が始まる気配がない。おまいつの姿も見ない。階段を下りてみると既に列が出来ていた。先にグッズを買う。ブルーゴーツとカタカナでプリントされたteeの白と黒。サイズLを購入。JPY3,000/枚。良心的。一般入場列のほぼ一番最後だったので4列目の右端になった。それでも十分にステージから近い。決して悪くはない。そういえば気付いたのが、BLUEGOATSの現場では常に同じおまいつが最前を独占せず、公演によってはあえて真ん中や後ろで見ている。彼らのこの姿勢に私は好感を持っている。なかなか出来ることではない。今日、私の左隣にいたのがよく見るおまいつ氏だった。氏と肩を組んで左右に揺れた。知らない同士でも目配せして肩を組むと一気に互いの警戒が緩み緊張が解れる感じがする。うれしはずかし。現代社会で希薄になった他人との物理的接触。生きている感覚を取り戻せる。特典会の列に並んでいると新規らしき紳士たちが、あの子カワイイよね、ボブの。聖子チャンカットみたいな。チャンチーね。でも人気ありそうだから他の子にしたほうがいいかも(笑)なぞとスゴくオタクっぽい会話をしていて可笑しかった。


目と鼻の先。BLUEGOATSのコンサート会場が渋谷CYCLONE。#KTちゃん のコンサート会場が渋谷WWW。本当に数軒先。読み方の正解が分からない。#KTちゃん は渋谷ダブダブ、客演したDOTAMAさんは渋谷ダブリュー・ダブリューと言っていた。(いま検索したところ渋谷ダブリュー・ダブリュー・ダブリューが正しいようだ。)私が最後の受付で購入したチケットは177番。ほぼ最後。たぶん整理番号は200番まで。入場していく紳士淑女を見る限り、客層はいかつくない。分別のありそうな人たち。177番が呼ばれる頃には入場を待つ人もほぼいなくなっていた。階段を下り、物販列に並ぶ。何日か前に #KTちゃん がTwitterに上げたグッズ写真を見てTeeシャツを買おうと思っていた。売り場で客を捌く、愛想がよい女性たち。右から左に流れるようになっていて、その先になんと #KTちゃん が立っている。初めて見る生#KTちゃん。写真撮るよー、本番前の(メイクが崩れていない)今だから撮りたいみたいなことを言っている。前の人々は撮ってもらっているが、チェキ券とか写メ券のような商品を販売している様子がない。若くてキレイな女性とスマート・フォンで写真を撮ってもらうのにJPY1,000を払わなくていいの? そんなうまい話があるか? これは罠か? 不安になって売り場の淑女に確認しそうになった。teeシャツのサイズL(後で分かったが一般的なLよりも大きかった)JPY4,000を購入。撮影を担当している淑女にiPhone SE (2nd generation) を渡す。左から「こんにちは!」と笑顔で元気のよい先制挨拶をしてくれる #KTちゃん。こんにちはと返す。一言、二言、会話をすることが出来た。「最近知って、初めて来ました」とお伝えすると、そうなんだ、ありがとう的なことを返してくれたと思う。「俺、実家が保土ヶ谷なんですよ。近いですよね。( #KTちゃん が地元と公表している戸塚駅から)二駅」「ちっか…!」

そもそもなんで #KTちゃん が二十歳になった当日に行われるワンマン・ライブ(和製英語)に私が来ているのか。私は #KTちゃん の名前くらいは目にしたことはあったのかもしれないけど、存在をちゃんと知ったのがごく最近で。8月末か9月の頭くらいだったと思う。この数年というもの、私はMCバトルというものからすっかり遠ざかっていた。現場に行くのはもちろん動画を観るのもやめていた。よくも悪くも大衆化が進みどんどんポップな若者文化になっている印象があって、もう自分が観るものではないなと見切りをつけていた。年齢的にもいつまでもこれに夢中になっている場合ではないというのがあって。でも最近またちょっとだけバトル動画をかじるようになって。何でかっていうと、私って二週間に一度、パーソナル・トレーニングを受けてるのね。トレーナーが二十代のムキムキ男性なんだけど、ヒップホップが好きで。MCバトルの話をするときに彼が言ってくる最近の話についていけなくて。まあいい機会だしちょっくら最近のも見てみるかと思い、YouTubeのオススメに出てきたやつを芋づる式に何本か観てみたんだ。そこで #KTちゃん の試合を初めて観、衝撃を受けた。私がしばらく観ないうちにこんな逸材が現れてバトルを引退していたとは。DOTAMAさんとの試合だったかな(最初のやつ。仙台の)。そこから他の試合も観て、彼女のYouTubeチャンネルも観るようになって。漢Kitchenのゲスト回なんかも観て。Spotifyで曲も聴くようになって(私は“choma!”が一番好きだ)。そうなると当然、一回は生で観てみたくなる。ワンマン・ライブ(和製英語)が近々開催されるそうだけど、調べたらどうもチケットの販売が終わっていたようで。諦めていた。でも直前になって最後の販売が始まって。ソッコーで買ったわけ。いま観に行かないんだったらいつ行くんだっていうね。時間的にBLUEGOATSと回せるし。

目を引くのが客演ラッパー陣の豪華さ。サイプレス上野さん、ASOBOiSMさん(不勉強ながら私は存じ上げなかった)、DOTAMAさん、呂布カルマさん、D.O.さん。ワンマン・ライブ(和製英語)とは言っても #KTちゃん はまだそこまで曲を出していない。全部あわせてまだ30分もないくらい? それでどうやってワンマン・ライブ(和製英語)のセット・リストを組むんだろうというのは気になっていた。これだけ豪華かつ多くのラッパーたちを呼んでいるということは実質的に対バンのような形になるのだろうか? #KTちゃん が食われてしまうのではないだろうか(性的な意味ではなく)。それがちょっと心配だった。だがそれは杞憂だった。ゲストが登場し自らの曲をパフォームするときも #KTちゃん は引っ込むのではなく、一緒にステージに立ち、ヴァースをカヴァーしていた。ゲスト陣に花を持たせつつもあくまで#KTちゃん のワンマン・ライブ(和製英語)であるというバランスを維持していた。#KTちゃん 以外の曲を多くやる物足りなさよりも #KTちゃん が他人のラップをカヴァーしているのを聴ける特別感があった。バック・ダンサーとして二曲くらいに登場した若い女性金髪二人組の躍動感と爽やかな色気に目を奪われた。かつて #KTちゃん が披露していたバトルのスタイルにおいても如実だったように、観る人をとことん楽しませるという姿勢が表れたコンサートだった。来年1月13日(月・祝)に#KTちゃん がメジャー・デビューするという発表があった。BLUEGOATSの継続、#KTちゃん のメジャー・デビュー。もちろん私が何かを達成したわけではないが、いい報せが重なり、ハッピーな気分に包まれる一日だった。渋谷WWWからの退場時、全員に不二家ポップ・キャンディ袋20本入りが配布された。

「スーツ姿だから、本当に、お父さんが成人式で迎えに来てくれたみたいな…」( #KTちゃん、DOTAMAさんに向けて)

「意外とオッサンもいるんだよな…」(呂布カルマさん、フロアを一瞥して)

「全部飲むに決まってんだろ!!」(D.O.さん、#KTちゃん に飲ませるためにサプライズでテキーラを持ち込み、グラスを持った #KTちゃん が「全部飲まなくていいですよね?」と確認するのを受けて)

「こいつは紛れもなくKTの、本当のヒップホップだろ。(中略)こんなハッピーなヒップホップがあって俺は、絶対にいいと思ってるし、お前らもそうだろ?」(D.O.さん)

2024年9月29日日曜日

"Challenge" フロアライブ (2024-09-14)

ただでさえ消耗させられるこの蒸し暑さの中、朝っぱらからうるせえ祭りの音。狂気のゾンビ通り(©︎安淳徳さん)。狭い道路を挟んだうちのすぐ目の前に詰め所がある。ここぞとばかりに活き活きしている老人たち。大人の音頭でワッショイを連呼しながら小さな神輿をかつぐ子ども。その喧騒のど真ん中に生卵でも投げつけてみたい欲求が私にはある。遠まきに聞こえてくるならまだしも、さすがに家のすぐ前で滞留して騒ぎ続けられると、やり過ごすのも容易ではない。すぐそこで私は洗濯物を干すんだよ。言うまでもなく、コレは祭りだから許されている。もし祭りに関係なく同じ場所で同じ音量で騒いでいる集団がいれば警官が現れるだろう。祭りだったら話は別。通報するほうが非常識。世の中はこのような二重基準と不公平さで満ちている。たとえば町田ゼルビアの何十秒もかけたロング・スローは当たり前のように許されるのに、他のチームが通常のスロー・インで同じだけの時間をかけたら遅延行為でイエロー・カードの対象になる可能性が高い。それなら勝っているチームは毎回ゆっくりとタオルでボールを拭き拭きしてロング・スローをやっていればイエローを貰わずに時間稼ぎが出来るということになる。

いつもの下北沢MOSAiC。11時半開場、12時開演。変な時間。君たちに昼メシを食わせないぞという運営側からの強い意志を感じる。私の場合、これを理由に申し込みを回避しても不思議ではない。私が休日の昼メシをどれだけ重視して生きているかは熱心な読者の皆さんがご存じのはずだ。しばらく迷った挙げ句、入場前に軽めに食べて、夕方に十条で一杯やることにした。男なら二つはイケる(D氏)でお馴染みのThe Pizza。ミックス・ピザ1pcで我慢。ジン・トニック。私の場合は通常なら二つ、お腹が空いていれば(そしてダイエットを無視すれば)三つ、さらに胃もたれを気にしなければ四つはイケると思う。ケバブ・シェフ(6年前にKと行ったトルコ料理店)も11時からランチをやっていた。興味をひかれたが、時間的にも量的にも今日はサッと軽くで済ませたかったので今回は見送った。最後の方に入場。入場後のドリンクはラム・トニックというのを初めて頼んでみた。存外においしい。次もコレにしよう。

チケットを買った後に、今日の公演がフロア・ライブであることが発表された。初めて聞く言葉だった。和製英語であることは間違いない。そのままfloor liveと言っても英語話者には通じないだろう。検索すると、どうやら演者さんたちがステージではなく客のいるフロアでパフォームする形式を指すらしい。どういう感じになるんだろう。いつもと趣向が異なり面白そう。ごちそうさまでした! と元気よくお姉さんにお礼を言ってラム・トニックのグラスをカウンターに戻し、階段を下りる。ここ数回の公演では新規と招待を無料にすることでフロアの人口を嵩増ししていたが、今日はそれがなく、通常運転。自ずとおまいつ率が高めの少数精鋭、「大体 毎回 いつも同じメンバーと再会」(RIZE, “Why I'm Me”)状態に。フロアの真ん中よりはややステージ寄りの位置に、マイク・スタンドが4本。そこを取り囲む形でヘッズが立っている。私は(通常のステージを前とした場合でいう)後ろ側の二列目。通常の感覚だと最前くらいの緊張感があった。全員が最前と言っても過言ではなかった。ヘッズが入りきっても混んでいない。いい具合にスペースがある。最後の方に入った私でも、え、いいんですか? ココにメンバーさんが来ンの? って戸惑うくらい近くていい位置に立つことが出来た。

ステージにいるのと同じフロアにいるのとでメンバーさんの見え方が違った。皆さんこんなに華奢で小さいのかという驚きがあった。ステージの段差があるとそこまで感じなかった。この小さい身体からあの破天荒で過激なYouTube動画群と、熱量に満ちた歌と叫びとダンスが生まれているのか。特にダイナマイト・マリンさんはなぜか裸足だったのでなおさら小ささを感じた。(Hello! Projectにはレコーディングを裸足で行うのを好むメンバーさんがいたけど、マリンさんも似た理由だろうか?)あと、普段はステージにいるメンバーさんと、それを観ている我々という区分けが物理的にも明確にあるけど、フロア・ライブ(和製英語)だとそれがない分、メンバーさんだけでなく我々も含めて一つのBLUEGOATSであるという感覚があった。Hello! Projectで言うといわゆる降臨がずっと続いている感じ。贅沢な時間、特別な体験だった。またやってほしい。今回のチケット代はJPY2,500だったけど、またやってくれるなら2倍、場合によっては3倍でも払う。買います買います。

買います買いますと書いてはみたものの、私は実際には冷静である。何かが発売されたら脊髄反射的に買うということはしない。BLUEGOATSにせよ何にせよ、依存することは避けたい。適度に楽しむという節度は守りたい。結局のところ、労働生活の虚無さと苦痛を、刺激の強い娯楽で散らして誤魔化す生活を長く続けることは出来ない。それは生きるつらさを酒や麻薬で乗り切ろうとするのと同じだ。応急処置としてならともかく、永続的な解決策にはならない。どこかで破綻する。娯楽の刺激に頼らなくても暮らしていけるように、自分の生活そのものを少しでも良くするために行動する必要がある。
長期的かつ大量にドラッグを使用していると、快楽と苦痛のシーソーは最終的に苦痛の側に偏るようになる。快楽を感じる能力が下がり、苦痛の感じやすさが上がるように支点の位置が変化してしまうのだ。
(アンナ・レンブケ、『ドーパミン中毒』)
40代独身で仕事がクソだと分かりつつ、もう出世欲も、俺が会社を変えてやるという気概(思い上がり)もなく、家族や子どものためという理由もなく、かといっておいそれと辞められない、どう身を振って、労働生活と人生をどう着地させればいいのかも分からない、そしてこうやっている間にも確実に老化していき、心身ともに弱っていき、死なない限りはジジイになるという焦燥感。(これはきっと25歳くらいまで無心に勤め上げてはみたものの次の進路のあてがないアイドルさんたちの心境に似ているのではないだろうか?)

チェキ撮影。隣に立つと左のチャンチーさんが私の眼鏡に手をかけてきて不意を突かれる。それをかけたい的なことを言ってきたので外して渡した。彼女は先日の10時間ぶっ続けライブで喉を傷め、本日は歌唱なし。特典会もささやき声。それはそれで色っぽかった。チャンチーさんは私の眼鏡がとても似合っていた。「すごい度入ってる」「近視と乱視だから」「近視と乱視ってどういう状態?」「遠くが見えなくて、あとこうなる(手振りで乱視の像を示す)」「こうなるんだ(同じ手振りをする)。大変そう」「まあ、眼鏡があれば…」「そっか」「喉、お大事にね」「うん、ありがとう。次は喋れるようにね」的な会話。

2024年9月23日月曜日

10時間ぶっ続けライブ (2024-09-08)

9月3日(火)と4日(水)だったかな。ちょっと気温が下がった。ようやくあの狂った夏も終わったかと、そのときは思った。だいぶ過ごしやすくなった。最高気温は30度あったんだけど、この気温だと外で数分歩いただけでは汗が噴き出さない。数度の差は大きい。でも二日だけだった。すぐにまた35度くらいに戻った。一年のうち約四ヶ月は半袖tee一枚が適した気候。一枚というか、一日に二枚か三枚は要る。汗だくになる。着替えないとやっていられない。異常に蒸し暑い、爽やかさの欠片もない、長すぎる夏。いい加減げんなりする。疲れる。体力が落ちた老後にこれをサヴァイブ出来る自信がない。世の老人たちがどうやってコレを乗り切っているのかが不思議になる。死ぬだろ、こんなの。世の労働者たちが何食わぬ顔で働いているのもなぜなんだ。コヴィッドなんかよりもこの気候がよほど緊急事態。こっちの方が政策的な対応が必要だろ。せめて7月から9月は週休3日をデフォルトとするくらいのことは必要なんじゃないか。なあ、百合子よ。仕事をしろや。クール・ビズだけで満足するな。

D氏とメシをご一緒する予定だったが氏のお仕事の都合でキャンセルになった。このように急に当日になって呼び出されることがあるらしい。日曜日だからといってスイッチを完全にOFFに出来るワケではなく、連絡を受けられる状態にしていなければならない。英国で問題になっていた(今はどうか分からない。何年も前にThe Guardian紙で読んだ)ゼロ・コントラクトという雇用形態を思い出した。D氏とは10月6日(日)にお会いする約束をした。その日の私は渋谷でBLUEGOATSを観てから#KTちゃんを観る。

下北沢駅周辺を歩くと中性的なオバサンみてえな格好をしたオジサン面の推定20代男性たちがこれでもかと登場してくる。D氏が住むべき街ではない。この数年、どいつもこいつも貧相な身体でダボダボな服を着ている。まあ、私が20代だった頃に流行したタイト路線よりはマシだ。駅前の古びたモールを冷やかす。1Fにスーパーマーケット、3Fに三省堂書店。2Fの町中華は一見いい感じに見えたが値段が明らかに高かった。ランチJPY1,400。冷やし中華JPY1,450(甘酢)/JPY1,550(ゴマだれ)。

牛肉が300g入ったサンドウィッチを出す小さな店も気になったが、迷った挙げ句、シモキタザワテラス Panes Houseというカフェに入った。あんまりお腹が空いていなかったので軽めに食えて、時間調整が出来そうな店だったので。ロースト・チキンと卵サラダのサンドウィッチ。レーコー。PayPayの支払い画面でイタリアン・トマト系列の店であることを知る。

JPY2,500の通常チケットとは別に、今日は優先入場チケットってのがJPY5,000で販売されていた。優先の方を買ってみた。会場の建物沿いに優先の列、道路沿いに通常チケットの列が出来ていた。私が並んだのが優先列のほぼ一番後ろだった。20人目くらいだったかな。この紳士がたぶん林田さん(事務所の副社長)なんだろうなと思っていた紳士が林田さんであることが確定した。後ろの方から林田さんと呼ばれてそちらに向かっていた。下北沢MOSAiCの真横は前までは空き地になっていた待機スペースとして便利だったんだけど、今日はそのスペースが囲われて入れなくなっていた。何かを建設するようだ。いいよ、建物を増やさないで。人口はどんどん減っていくんだからさ。

今日の企画は10時間ぶっ続けライブ。といっても我々が入るのは最後の1時間半くらい。メンバーさんたちはAM11からずっとステージで公演をやっている。いや、公演をやっているとは言わないかな? 客を入れていないわけだから。でもYouTubeで配信しているから無観客とはいえ公演とは言えるのかな。その辺の定義はよく分からないが、ともかく彼女たちはずっと歌い続けている。わざわざライブハウス(和製英語)に客を入れないで歌うことに意味があるのかとか、それだったら何部かに分けてチケットを売って客を入れればいいじゃんとか、そういうことを言うのは野暮。私はBLUEGOATSを半年くらい観てきて、だんだん分かってきた。単なる効率や合理性で割り切れない部分にこの集団の面白さがある。2024年中に横浜アリーナを埋めるという今となってはほぼ不可能と言っていいゴールを掲げている(最近はそんなに言わなくなったが)が、意外とそのゴールに捕らわれていないというか。そのゴールに近づくためなら手段を選ばないというよりは、あくまで自分たちのやり方、あり方へのこだわりの方が強いというか。大衆に受けるために媚びていない。そこが私はカッコいいなと思う。

そう、大衆に媚びていない。社会を正としてそれに合わせようとしていない。BLUEGOATSの根底にある姿勢はそれだと私は思っている。それが、私がBLUEGOATSに惹かれる大きな理由なんだと思う。私は今の社会を特徴づける潮流は大きく二つあると考えている。一つは、資本主義の一人勝ちによるユートピアの喪失(参照:木澤佐登志、『闇の精神史』)。もう一つは、人間の自己家畜化(参照:熊代亨、『人間はどこまで家畜か』)。この二つが組み合わさって、生きづらさの源泉となっている。資本主義以外の選択肢がない。資本主義が求める人物像、行動様式が唯一の正解。適応できない人たちの逃げ道がない。社会が規定する正常の範囲がどんどん狭くなっている。求められるスペックを満たさない特徴や能力は個性としては認められない。病名をつけられ、精神医療の対象となる。誰もが品行方正で“まともな”人間であることが求められる社会。誰もが“社会人”であることを求められる社会。外れ値と共生するのではなく、矯正しようとする社会。BLUEGOATSは、社会に適応しようとは言わない。社会がおかしいと言う。私たちが社会を変えて見せると言う。だから私はこの集団が好きだ。こんなことを言ってくれる人って、いないからさ。

Ks Gear Evo2という耳栓を初めて使った。7月17日(水)にアマゾンのセールで買っていた。JPY6,280。通常時はJPY7,480。過去に使ったことのあるコンサート用耳栓に比べて圧倒的によかった。音がこもらない。自分が声を出すときに違和感がないのが驚きだった。耳を守りながらコンサート体験を損なわない。不要で過剰な音だけを削ぎ取ってくれている感覚。音質を犠牲にしている感じがしない。装着したままフィルターを簡単に調整できるので、細かく着けたり外したりをせず、長時間着けたままでいられる。値段は高いがそれだけの価値はある。もうJPY2,000前後の耳栓には戻れない。

特典会でチャンチーさんの列に並んでいたら前の紳士に声をかけられ、歓談。千葉からお越しになったとのこと。誰とでも仲良くなれそうなナイスなお人柄だった。私はこうやって個々の紳士とお話をするのはまったくイヤではない。むしろありがたい。しかし、ファンの集団に入るということはしたくない。その中に私が苦手な人は誰かしら出てくる。私は誰とでも仲良くなれる性格ではない。そうなると、いずれその人と顔を合わせるのがイヤで現場に来たくなくなるだろう。特にBLUEGOATSの場合は客がある程度、固定されている。おまいつ同士は顔見知りである。私はあくまで謎のソロ客でいたい。本当は輪に入れてもらい公演後の飲み会にでも参加させてもらった方が人として健全。それは分かっている。

2024年8月18日日曜日

THE LIVE (2024-07-28)

数年単位で見ると、アイドル全般に対する関心の低下。数ヶ月単位で見ると、雨季と夏の疲れ。活動意欲を削ぐ、異常な蒸し暑さ。さすがに常軌を逸している。休日の午前中に出かけると、昼には汗だく、たまらず帰宅、シャワーを浴び、着替え、空調を効かせた部屋でしばらく横になるのが通例となっている。この気候は何かをするのに向いていない。すべてに向いていない。飯倉大樹さんも先日の町田ゼルビアとの試合後にこう言っていた。「まず暑かったな。こんななかでサッカーやっちゃダメだよ。質落ちるだろ、どう見ても。日本の夏はサッカーしちゃいけない。夜やってんのにこんなにきついんだから、子どもたちとかやばいよな」。私には盆休みもなく、微塵も落ちない労働の強度。それどころか増やされていく負荷。去年のような酷い夏バテにはなっていない。それでも滅入っている。ストレスを感じやすい。気分的なしんどさがある。休日を活動的に過ごすのに必要な気力がない。月曜になると会社の同僚たちとクソを製造してお互いに投げ合いなすり付け合う日々が再開するかと思うとゲンナリする。月曜日にOutlookを開いてモリモリとメールが入ってくるあのおぞましい光景。クソの製造工場が土日で溜まっていたクソを一気に排出しているように私には見える。私は“Bullsh*t Jobs”を読み始めたばかりだが、自分の仕事がブルシット・ジョブである自信がある。
Hell is a collection of individuals who are spending the bulk of their time workig on a task they don't like and are especially not good at(地獄とは自分が好きではなく特にうまく出来るわけでもない任務に時間の大部分を費やしている個人の集まりである)(David Graeber, “Bullsh*t Jobs”)

明日、ヘッド・スパに行くことにした。新規開拓する気満々で1時間ほどお店を調べたが、結局は前に通っていた店に予約を入れた。(最後に行ったのがちょうど去年のこの時期だった。)なんだかんだでココよりも良さげなお店が見つからない。私が同じ飲食店に通い同じモノを食いがちなのもコレに似ている。過去に色々と試して比較した結果としてたどり着いた答えなんだ。また一から考え直しても同じ答えになる可能性は高い。であれば、過去の私が出した答えを再利用したほうが、店を選ぶ時間と手間が省ける。ハズレを引くリスクも回避できる。答えが分かっているんだからそれにすりゃいいじゃんという考え。飲食店をはじめ人生のさまざまな選択において安心安定のオキニをいくつか作って巡回するのは理にかなっている。ただ同じことをやり続けるのは効率がよい反面、精神衛生上はよくない。泉谷閑示さんの著作に書いてあったが、メンタル不調の人は同じことしかしない傾向があるらしい。それは私も実感として分かる。同じモノだけを食べ、同じ場所にだけ行き、同じことだけをする。自分で自分の視野を狭めている。物事において一つの選択肢しか見えなくなる。世界の広さや自分の可能性を認識できなくなる。それで目の前のことで必要以上に悩み、思い詰めてしまう。自分を苦しめているその人が、その状況が、その環境が、世界のすべてになってしまう。“それ”に過剰にとらわれてしまう。だから小さな選択から日々にちょっとした冒険を取り入れてみるのは大事だと私は思う。コンフォート・ゾーンから意図的に自分を少しずらすこと。

下北沢MOSAiC。BLUEGOATSのホーム・スタジアム。私にとっては二回目。ダイナマイト・マリンさんフル・マラソンを走ってからコンサートに合流する企画のとき以来。開場前、人がいっぱいだと驚くおまいつ。前回同様、新規客が無料。VIP→一般・招待→新規という順で入場。決めた。今日は音を直で浴びよう。私を苛むこのうっすらとした憂鬱感と苦しさを吹き飛ばすための、一種のセラピーとして。左ポケットの耳栓(THUNDERPLUGS)には手をつけず。開演直後からやっぱり音が過剰にデカい。習慣的にこの環境に身を置けば確実に耳を悪くする。今日は気にしないことにした。3列目の中央付近。前回が最高に楽しかったから今回はどうなるかと思ったけど、それをさらに超えてきた。フロアとステージの一体感、ノリが前回よりも増長し、確立してきている。初めて観た2月18日(日)の投げ銭公演からの変化が凄まじい。もはや別の集団にすら思える。この急速な変化と発展を目の当たりにすることが出来たという意味で、私はスゴくいいタイミングでBLUEGOATSを知ることが出来たんだと思う。この集団が目指すノリの中核を成す、みんなで一緒に歌うこと。私は前回まであまり乗り気ではなかった。今日、それが変わった。リリックうろ覚えで誤魔化しつつも声を出して歌ってみると、これまでとは違う感情になった。特に『君の唄で生きていたい』では日頃押さえつけている感情が身体から溢れ出て涙が出てきそうになった。自分を大事にしていいんだ、ムカつくことにムカつくって言っていいんだって思える。「非難すべき奴 後ろ指さして」(K DUB SHINE - キングギドラ、『真実の弾丸』)。BLUEGOATSのスタンスは、ここで日頃のストレスを解消してまた明日から仕事を頑張ってね、ではない。そのむかつく奴、一緒に殺そうぜ、なんだよね。癒しとはヴェクトルが異なる。(特にダイナマイト・マリンさんの歌詞や言動からそれを感じる。)自分も歌うことを前提にすると、曲の聴き方が変わる。ヴォーカルを音として聞き流すのでは不十分だ。自ずとリリックを意識するようになる。我々が共に歌うことが特別な意味を持つのも、そのリリックをメンバーさんが書いているからこそ。次に行くときまでにもっとリリックを覚えて、もっとBLUEGOATSの音楽と、BLUEGOATSのリリックと、一つになりたい。終演後、明日ヘッド・スパに行かなくてもいいかもしれないと思えるほど気分が楽になっていた。BLUEGOATSは今の私にとって、効果が一時的であったとしても、間違いなく救いである。

コンサートの後にトーク・ショー。(開始時間が延びた。メンバーが疲れてまだ汗がひかないので、と事務所の紳士が説明し、フロアに笑いが起きた。)豪華な構成。ゲストに中森明夫氏。おそらく大した事前打ち合わせも台本もなくポンとステージに席を設けられ、後はお願いしますという感じだったように見えた。それでも氏はBLUEGOATSのメンバーさんからうまく話を引き出しつつ(アイドルになったきっかけ、これまでの人生で一番怒りを感じたこと、炎上したことなど)、自身の知識や経験も披露し、トーク・ショーを見事に回していた。私は大学一年生か二年生の頃に受けていた授業のゲスト・スピーカーとして氏が登壇していた記憶がある。友人(Y君)が彼のファンで、最後のQ&Aで手を挙げて質問をしていた。もうあれから約20年経つ。BLUEGOATSのヘッズのほとんどは氏のことを知らなさそうだった。そんな彼らも思わず聞き入ってしまうほど聞き応えのあるトーク・ショー。プロの技。BLUEGOATSを一言のキャッチ・コピーで表すと何ですかという三川プロデューサーの不躾な質問に中森氏が鮮やかに返した「怒り萌え」という回答が、私はとても腑に落ちた。中森氏曰く、可愛い感じで笑顔を振りまき、パンチラチックな衣装で踊るという一般的なアイドルとは違って、怒りをぶつける。それによって生まれる可愛さを表現しているのがBLUEGOATS。(たしかに言われてみると怒っている女性が醸し出す色気は存在する。何年か前にハムロックさんという紳士が尾形春水さんを中傷する動画をYouTubeに上げたとき、怒った尾形さんが明らかに顔を上気させながらTwitterの動画で喋っていたのを見、私は彼女に性的魅力を感じた。)
「お金よりも大切なもの」に気づく手段、それは「怒り」でした。自分でも少々驚いたのですが、これ以外に答えがありません。[…]
「怒り」が「損得」を上回った時に、人は、損得を離れて、損得以上に大切なものに目を向けることができます。
(山崎元、『がんになってわかったお金と人生の本質』)

チャンチーさんとチェキ。撮る直前、私の左肩付近にちょこんと頭をくっつけてくださって、ちょっと好きになった。少し前に公開されたこの動画に関する話をした。前から彼女に話したいと思っていた。今日のライブが楽しくてイヤな気分が一掃された旨も伝えた。20時過ぎ、会場を出る。歩いて数分のTHE PIZZAでD氏と合流。閉店時間は21時のはずだが、既に店員の青年が漂わせるすぐにでも店を閉めたいVIBESは満タン。私、マッシュルーム、ペパロニ、ラム・コーク。D氏、マッシュルーム、コロナ。後からG君も合流。彼はマッシュルーム。(飲み物は忘れた。)THE PIZZAを出る。「あー、食った食ったー」とD氏。「食った食ったって一枚しか食べてないでしょ」と呆れる私。いやもう限界っすよ的なことを言っていたD氏が、次に入ったミスター・ドーナッツではドーナツを二つ購入している。「結構食うんすね」「別腹なんで」。下北沢駅前の喫煙所でしばらくチル。そして散る。

2024年8月10日土曜日

台湾の裏で主催しちゃうぞ? (2024-07-27)

LINEを開く。滅多に来ない父親からの連絡。曰く、8月末で引退することにしたという。70歳。定年を迎えた後も再雇用で働いていた。会社員としては昇り詰めたと言っていい。最後の方には役員になっていた。受け取っていた年俸額は今の私の倍。いや、父とそういう話を積極的にしてきたわけじゃないんだけどさ。引っ越しのとき保証人になってもらっていて。年収額を申告する必要があって。そのときに聞いて知るわけさ。もちろん大事なのはどれだけ稼いだか、どれだけ出世したかではない。とにもかくにも家庭を作り上げ、二人の子供たちを育て、支えてきたこと。そのために人生を懸けてきたこと。心から尊敬する。自分よりも家族のために生きること。それが社会的に成熟するということなのだろう。数ヶ月前には会社で目眩を起こし倒れ、救急搬送されていた。幸い、大事には至らなかったが。母親も徐々に歩く能力が落ちてきている。先日、家の前の急ではない階段で転び、頭を強打した。私は母が転んだことよりも、受け身を取れず直で頭をぶつけてしまったことが心配になった。いつまでも昔の元気で時には恐かったお父さん、お母さんではない。その日は一日一日、近づいてきている。それは意識せざるを得ないし、意識しないといけない。当然ながら私もそこに向かっている。毎日毎分毎秒、老化と死への道を進んでいる。それは本日、入場特典として全員に配られた無料写メ券(太っ腹!)で撮った大江れなさんとの写メを見ても実感する。私は確実に歳をとっている。老人になった自分の姿を視覚化できる。0か1かのデジタルである瞬間に突然、老人になるわけではない。もしかすると一気に加速するタイミングがどこかであるのかもしれないが、基本的には常にちょっとずつ老化していく。だから私には既に老人の要素、面影がある。段階を踏んでいる。

私はこれからどうしていくんだろうか。単純化して言うと、ストレスで得たお金でストレスを発散させる。ストレスで得たお金で、ストレスで傷んだ心身のケアをする。月~金のストレスを土日で癒す生活、それを52回繰り返して1年。それをあと何十回か耐え抜いた先に何が残るのか。自分は何になるのか。一週間を、一ヶ月を、一年を乗り切っている生活をループしているように見えても、自分は確実に老化していく。このまま老人になったとする。それで何の意味があるんだろうか。意味がないと言っているわけではない。自分でも答えが分かっていない。生き抜くこと、食いつなぐこと、それ自体が尊いんだろうか。他人を応援し、彼らが何かを成し遂げる姿に入れ込むことで、自分も何かを達成したように錯覚すること、それが幸せで、生きてきた意味があるのだろうか。それは対象がたとえばアスリートやアイドルさんといった赤の他人だからよくなくて、自分の子供だったらそれでいいんだろうか。分からない。一つ言えるのは、人生の目標というほど大袈裟なものではないにせよ、何らかの現実的な着地点を設定する必要があるということだ。死を明確に意識するようになるお年頃の方々が行うといういわゆる終活の、もっと手前のヴァージョンをやる必要がある。学校だったら勝手に向こうの方から年数を決めてくれて、試験があったり、卒業があったりと、こっちの意思に関係なくイヴェントが発生する。働き始めてからはそういうのを自分で決めていかないといけない。それにちゃんと気付いていない人って自分を含めて結構いるんじゃないか。でも、気付かなくてもいいんだよね。子供が生まれれば。子供が生まれた瞬間、自分の人生の主役が子供に移行するわけだ。自分が何を成すべきなのかとか、何のためにこんな苦しい仕事をしているんだとか、そういった疑問を持つ意味がなくなるわけ。答えは一言、子供のためだから。子供は人生の多くの悩みに対して万能の答えを与えてくれるんだ。私は子供が出来たことがないけど、たぶんそうなんだ。子供のため、家族のためという答えを持たない我々にとって、人生の問題がすべて自分の問題になり、直で向き合わないといけなくなる。なぜ働くのか。もっとハッキリ言えば、なぜイヤなのに苦しい労働を続けるのか。「お金のためです。それ以外に理由はありません」。養う家族がいた上でのその回答なら自ずと利他的で崇高な意味を帯びる。かたや我々がお金のために働くと答えたら、利己的な響きを内包する。だから我々は、お金のためという単純な答えでは自分のことを納得させることが出来ない。実際のところ、私にとって働く理由はお金以外にない。もし一生暮らすのに困らないお金がポンと入ったら今の会社なんかすぐに辞める。だが辞めたとして毎日何をやって生きていくんだ? と考えたときに、サッカーを観て、コンサートを観て、という風に消費者としての自分しか残らない。私は少なくとも会社員という現実的な枠組みの中では、職選びを間違えてはいないと思う。そして具体的な業務レヴェルで見れば目の前の困難や課題を乗り越えていくことに面白味を感じることもある。だけど大枠ではやりたいことをやっていない。就職してこの方、やりたいことなんてやったことがない。労働の枠内でやりたいことなんて、ない。というか、やりたいことって何? コレが18年間働いた上での結論だ。大学生の頃の自分よ、これを聞いて悲しいか? もっと悲しいのは食いつなぐため、つまり自分一人を養うためだけにもコレをあと何十年も続けないといけないということだ。

何のために生きるのか、何のためにイヤな仕事をするのか、何のためにクソな生活に耐えるのか。そういった疑問への回答を、家族を持たない我々にも与えたのがアイドル文化だ。子供(家族)のためです、の替わりに、推しのためですという答えが用意されたのである。それがどれだけ社会一般に通用するかは別にして、少なくとも当人にとってはある程度の救いとなる。私もそうやって騙し騙しやってきた面がある。しかし、そこまで幼稚ではいられなくなってしまった。今でも一応はアイドルというジャンルに属する女のコたちを観てはいるけれども、Hello! Projectにどっぷり浸かっていたころとは感情が異なる。アイドル的なものに対してちょっと醒めている。何と言うか、ニコニコと愛想を振りまく可愛い美少女たちにデレデレする、公演で名前を叫び、レスがどうのとか認知がどうのとかで興奮して夢中になる、というのが自分の中で難しくなってきている。それはカッコつければ精神的な成熟なのかもしれないし、身も蓋もない言い方をすれば性欲の減退なのかもしれない。夢も希望もないが、そもそも夢と希望とは、性欲を原動力にした狂いではないだろうか。だから夢と希望を持てるのは若者の特権である。夢を与える仕事。かつて小野瑞歩さんはアイドル稼業をそう言っていた。本来は繁殖、子育てに向けられていたはずのエネルギー。それを別の手段で発散する場がある、相手がいるという(錯覚の)希望。救い。もしアイドルが夢を与える仕事だとすると、それが夢なのではないか。

『「百年の孤独」を代わりに読む』(友田りん)という本を読んで思ったのだが、多くの娯楽はお金を払って何かを代わりにやってもらうことだ。たとえば、今ステージにいるKissBeeのメンバーさんたちが私たちの代わりにやってくれているのは何なのだろうか? 私は考えた挙げ句、しっくり来る一つの答えが見つかった。それは、いま自分がやりたいこと、ではないだろうか。ステージで歌って踊る大江れなさん、吉田琴音さん、鈴木みゆさん、小川みさきさん(藤井優衣チャンをはじめとする他のメンバーさんたちは本日、台湾に出張している)を観ていて確信したのが、彼女たちは自分のやりたいことをやって生きているということだ。もちろん個々の業務内容を見れば苦しいことややりたくないこともあるかもしれないが、大枠としてはやりたいことをやっている。細かく見れば充実する瞬間があるけど大枠ではやりたくないことをやっている私とはまさに逆である。彼女たちは私が出来なかった生き方を、そのリスクも背負って代わりにやってくれているのだ。やりたいことをやるへのアンチ・テーゼが、将来を考えるだ。そんなことをやって5年後、10年後どうするのって。そうやって私たちは将来のためと呪文のように唱えられ続けて育てられてきた。私はそうやって生きてきた結果として、これから自分が何をやりたいのかも分からない大人に育った。私自身の生活を客観的に見た場合、あたかも老人になるまで生き延びることそれ自体をゴールとしているかのように見える。ゴールも設定せずこの生活を続けるだけでは、それ以外に世に何かを残す見込みがないからだ。私の人生は、老人になるまで死なないためにあるのだろうか? ふと途方に暮れる。それを日々の忙しさと娯楽の刺激で誤魔化している。結局のところ、いま自分がやりたいことを追求してみることなしに、5年後も10年後の明るい未来もないのではないだろうか? 長期的に働くことを考えれば労働にはリアリズムも必要だ。一方で、いまやりたいこと、いましか出来ないことをやっている人たちにしか出せない輝きというのは、確実に存在する。もちろん、アイドルさんの生活や未来を美化するつもりもない。あの世界はやりがい搾取と紙一重であり、全人格を懸けた感情労働はメンタル・ブレイクダウンに繋がりかねない。

2024年7月13日土曜日

BOYS WITH RUN (2024-06-23)

ダメ元でD氏をお誘いしてみたら公演に入っていただけることに。後から気付いたが、水戸ホーリーホックの試合と時間が重なっている。愛するクラブの大切な明治安田J2リーグ残留争いをリアル・タイムで追うことよりも私のお誘いを優先してくださることに感謝、恐縮。下北沢でメシをご一緒することは既定路線だった。私が夜にBLUEGOATSを観に行くんで公演前にお会いしようということで。それで今日の公演は新規客が観覧無料、なおかつ新規客を招待した人はチェキ券を1枚もらえるというのがちょっと前に発表されて。タダならD氏も軽い気持ちで入ってくれるチャンスはあるかなと思って。D氏はカルト宗教としてのHello! Projectにどっぷりはまっているお方なので、んなもんタダでも観たくねえよ(笑)という反応が来たとしても不思議ではなかった。あの団体の支持者たちはそれくらい排他的なので。すみませんちょっと言い過ぎました。半分冗談ですよ。いずれにしてもD氏は私の申し出を快く受けてくださった。

横浜F・マリノスがアンデルソン・ロペスさんのペナルティ・キックによる1点で明治安田J1リーグ最下位の北海道コンサドーレ札幌相手に薄氷の勝利を収める試合をDAZNで観、家を出る。実のところ我々も水戸ホーリーホックのことを笑っていられない。今シーズンは明治安田J1リーグの残留争いに参加することが濃厚となっている。17時前に下北沢駅に到着。ゆったりとしたサイジングの厚手白teeを颯爽と着こなすD氏と合流。今日は18時半開場、19時開演。だから約一時間半ある。メシ食って、サテンの流れ。行ってみたかったザ・ピザ。前に下北沢でお会いしたときに通りがかって気になっていた。そういえば前回(行ってみたいって)言ってましたもんね。あの翌日に店に行き召し上がっていたというD氏。この店はピザをピース単位で販売している。1ピースがデカそう。店に向かう道すがら、聞いてみる。

私:二つだと多いですか?
D氏:いや、行けますよ。男なら
私:じゃあ男を証明しますね

結果:私2ピース、D氏1ピース。店にいた若いカップルの女2ピース。私はペパロニ、アンチョビ&ブラック・オリーヴ。ジン・トニック。D氏はミックス・ピザ、コロナ・ビール。ピース単位で頼んでから焼いてくれるので熱々。おいしい。食べ応えもある。満足度高い。私にとって数年ぶりのピザだった。量に関しては、私はもう中年なのでダイエット的な意味で自制心を働かせたけどお腹が空いていたら3枚はイケそう。また来たい。サテンに移動。前回利用した店はドアの外に入店待ちの列が出来ていた。プランBの店は運良く2席だけ空きがあった。アイリッシュ・コーヒーJPY900。18:25くらいに店を出る。今日の会場は下北沢近道。入場列を一瞥するD氏。

D氏:ハロプロよりは楽曲派っぽい人が多いですね
私:そうっすか?
D氏:New Jeansおじさんみたいな人が多いんですか?

ドリンク代JPY600。メニュウを見ていると自家製クラフト・コーラがあるようだ。ノン・アルがいいとおっしゃるD氏にそれを教える。メキシコークというのがそれっぽい。私もD氏もそれを注文。階段を降りてフロアで飲む。これってお酒ですか? とD氏。いや、コーラですと答える私。こういう味のコーラなのかと納得するD氏。今だから言うけどあれは完全にお酒だったね。いいじゃん別に。お酒で。そういえばメキシコークという名前で思い出したけど、この間YouTubeで面白い動画を観た。「世界で最もコカコーラ中毒で人が亡くなる街の闇の実体が恐ろしすぎた」。メキシコ。住民が平均して一人一日2リットルのコーラを飲む。水分補給が水ではなくコーラ。病人だらけ。それでも現地民はコーラは悪くないと思っている。コーラが宗教にも入り込んでいる。このBappaさんのチャンネルは本当に面白い。

D氏:BLUEGOATSでもシコッてるんですか?(でもって何? 前提として何でシコッてるんだ?)

最前はガチ勢が陣取っていたが、2列目、3列目くらいは割と直前まで入り込む余地があった。BLUEGOATSのヘッズは我先にと血眼で前に行きたがる感じではなく、あえてちょっと後ろの方で観たい人がそれなりにいる。開演前だが入場するとステージには既にチャンチーさんとソン・ソナさんがいる。いま、ほんま・かいなさんとダイナマイト・マリンさんが二人三脚でハーフ・マラソンを走っている。出発地点は横浜アリーナ。下北沢近道までの距離がちょうどハーフ・マラソンの距離らしい。その様子がYouTubeで配信されている。ステージのお二人がそれを観ながらトークしている。チャンチーさんの眩しいナマ脚。

D氏:(ソン・ソナさんを見て)小野田紗栞さんを思い起こさせる、リス系の顔立ちですね

私が着ているThe Karate Kidのtee(古着屋JAM公式オンライン・ショップで購入)がいたくお気に入りのD氏。ピザ屋、サテン、コンサート会場(BLUEGOATSは公演中でも静止画撮影可)と3-4回に渡り私を撮影する。

近づく開演時間。三川さん(事務所社長)の呼びかけで全体が左側に圧縮(右側が入口)。私はほぼ左端の何となく二列目にいたが三列目に後退。ほんま・かいなさんとダイナマイト・マリンさんの到着は予定されていた開演時間に間に合わず。ステージで待つチャンチーさんとソン・ソナさん。フロアで待つ我々。走っていた二人は19時半くらいにステージに合流。抱き合うメンバーさんたち。大団円。そこから始まる公演。特にほんま・かいなさんがスペシャルだった。やり切ったばかりの二人三脚ハーフ・マラソンがドーピングのように効いているのが明白。達成感。疲労。そしておそらくは空腹。彼女をちんちんにたとえるなら疲れマラのような状態だったのだろう。のっけから感情マックス。ステージとフロアを飲み込むほんま・かいなさん。今日は彼女の独壇場だったと言っても過言ではない。とにかくカッコよかった。だってさ。ステージに合流して開口一番、予定時間よりも遅くなったことを謝りつつ、ヒーローは遅れてやってくるんでって。これ以上のコメントがあるか? この人が抜けたらこの集団がこの集団たり得ないという存在。BLUEGOATSそしてBLUEGOATSの音楽にとってそれがほんま・かいなさんなのだろう。

魂を感じるコンサートだった。いつものように30-40分で終わるのかと思いきや、終演直後に時間を観たら21時を過ぎていた。アンコール後だけで3曲もやってくれた。そうだよ、私が観たかったのはコレなんだよ。BLUEGOATSを観るのはコレで4回目だけど、初めて心からいいと思った。これまでは正直、まあ言うてもこの程度かというのが頭のどこかにあった。その大きな要因の一つは単純な時間の短さだった。今日は掛け値なしに楽しかったし心を動かされた。公演中、メンバーさんが一人毎にトークをする時間が割り当てられていた。YouTubeとは違って終始シリアス。チャンチーさんが次にやる曲について、かいなチャンが私のために(歌詞を)書いてくれたかのような…と言うと背中を向けていたほんま・かいなさんが振り返り、あんたのために書いたよと言った場面。泣いてしまうチャンチーさん。ほんまさんがトーク中にステージに座り込み、そこから『東京タワー』のアカペラを始め、それをイントロとして同曲が始まる流れはドープだった。

フロアのノリは、私が観るようになったこの数ヶ月で急激に変わりつつある。最初に無銭コンサートを観に来たときはみんなおとなしく見ている感じだったけど、前回くらいからフロアのヘッズ同士で肩を組んだり飛んだり歌ったりと、徐々に我々サイドの能動的な参加の仕方が形になってきている。アイドル現場のノリとは差別化が出来ている。いい感じなんじゃないだろうか。まだ私にとって一緒に歌うのは難易度が高いが。

終演後、いやあめっちゃよかったっすね! と興奮醒めやらぬ私が話しかけるとD氏はやや引き気味で、温度差があった。あれ? 仕方ない。毎日アオヤギ・チャンネル(BLUEGOATSのYouTubeチャンネル)の動画を繰り返し観た結果、第11世代Fire HD 10の一ヶ月のデータ使用量が100GBを超えた私と、特に思い入れもない状態でふらっとコンサートを観てくださったD氏とで熱量が同じワケがない。

チェキ券には二種類あって、青(JPY2,500)が撮影後、それにサインやコメントを入れてもらいながら1分間お話をさせてもらえる。赤(JPY1,000)が撮ったらそれを受け取って終わり。D氏を招待したことでもらえた無料チェキは赤の方だった。D氏に進呈しようとするも頑なに受け取ってくれない。私は青を1枚買ってチャンチーさんと面会。今日スゴく楽しかった、BLUEGOATSを観るのは4回目だけど一番楽しかったとお伝えした。もらった赤でほんま・かいなさんと面会。今日めっちゃカッコ良かったっすとお伝えした。

チャンチーさんはツーケーがいいっすね、との所感を述べるD氏の導きで、かつてNasも訪れた(実際トイレにサイン入りのポスターが飾ってあった)というリトル・ソウル・カフェ。ランバリオン15年XOスパイス・ラム(イングランド)をロックで。店主氏曰くレアとのこと。D氏お気に入りのブロンコ20(横浜)を一口もらったらとてもおいしい。私も二杯目に選択。お酒を出してから店主がボトルを見せてくれる。いい音楽。いいお酒。ボッていない価格。気取りすぎない雰囲気。非常にイケている空間。45trio, “A Little Spice”。Monty Alexander, “Out of Many, One”。Quincy Jones, “Tell Me a Bedtime Story”。DJ Cam Quartet, “Saint Germain”。D氏からフットボールのルール上、ゴール・キックはオフサイドにならないという知識を得る。23時半頃、解散。

2024年6月30日日曜日

「C'mon Everybody !」 新沼希空卒業スッペシャル ~ Ready Go!Now! ~ (2024-06-10)

きそーら最高! パ・パン・パ・パン・パン!
きそーら最高! パ・パン・パ・パン・パン!
きそーら最高! パ・パン・パ・パン・パン!
きそーら最高! パ・パン・パ・パン・パン!

終演直後、沸き起こるチャント。果たしてそうだろうか? コンサート最終盤に噴射され床に落ちた銀テープをかき集める見苦しい中年男性を横目に、首を傾げて向かう出口。私にとっては、最高ではなく、最低でもなく、ほとんど心を動かされることのないコンサートだった。ある時期から私はHello! Projectの現場にいてもこれといった感情が沸いてこない。無の時間。この団体のコンサートを最後に観たのが2023年4月2日(日)。浅倉樹々さんのつばきファクトリー最終出勤。それ以降は、池袋のサンシャイン噴水広場で行われているリリース・パーティを無銭でちょこっと冷やかす程度のことを除けば、Hello! Projectのコンサートやイベントには一度も参加していない。参加したいとも思わない。心残りもない。今の私には別の楽しみがたくさんある。もはやHello! Projectを必要としていない。

1年と2ヶ月ぶりにつばきファクトリーのコンサートを観たら、自分はどう感じるのだろう。それには興味があった。インディー(KissBeeやBLUEGOATS)を観るようになった自分に、久し振りに観るつばきファクトリーはどう映るのか。やっぱりHello! Projectはモノが違う、こっちの方が楽しい、となる可能性もあるんじゃないか。Hello! Projectの世界に出戻りたくなるんじゃないか。もうインディーには戻れなくなるんじゃないか。それが少し恐くもあり、楽しみでもあった。『スカウト目線の現代サッカー事情』で田丸雄己さんが書いていたのだが、あらゆるカテゴリ(1部リーグ、2部リーグ、育成世代等々)の試合を観ることでその国のサッカーを深く理解できる。実際、私もたまに明治安田J2リーグの試合を観ると、横浜F・マリノスに出来ていてJ2のチームに出来ていないことが浮き彫りになって見えてくることがある。J2を観ることでJ1のJ1たる所以が分かる。同様のことはHello! Projectとインディー・アイドルの比較においても言える。メンバーさんの容姿や歌唱力の水準の高さ、長年積み上げてきた楽曲資産など、Hello! Projectが優れている点はたくさんある。イスラム教徒がハラル認証の飲食店を選ぶように、アイドルならHello! Projectを観ておけば大外しはしない。そういうブランドだ。

何でそもそも今日来たかっていうと、5月末をもってファン・クラブを退会するにあたりゴールド・カードに貯まっていたポイントを使い切る必要があった。結構貯まっていた。最後の数ヶ月に駆け込みで小片リサさんのコットン・クラブ公演、今日のつばきファクトリー、数日後のJuice=Juice(植村あかりさんの最終公演)のコンサート・チケットと交換し、いい具合にポイントをほぼ消費することが出来た。小片さんとJuiceのチケットはたまたま知人に譲ることになって、余ったのがつばきのチケット。積極的に買い手を探すのも面倒くさいので、自分で入ることにした。つまり、私は今日のチケットをお金を払って買ったわけではない。

月曜日の18時開演。Hello! Projectでは重要なコンサートを平日に開催するのがすっかり当たり前になっている。つくづくオタクはナメられているが、何の問題もなく人が集まる。今日に関してはチケットの売れ行きが芳しくはなかったようだが、恥ずかしくない程度には客席が埋まっていた。もちろんC'mon Everybodyと銘打ちながらもeverybodyが来ているとは言いがたかったが、ガラガラとか武道半とかの惨状ではなかった。久々に目の当たりにするHello! Projectそしてつばきファクトリー支持者の層の厚さ。圧倒される。日本武道館周辺を賑わす多種多様な異常者たち。異常者の玉手箱。平日のこの時間。数千人。9千円くらいするチケット。このスーツ率の低さ。どういう仕組み? 私はオフィスに出勤してそのままスーツ姿で行ったのだが、開演前に少しお話ししたF君は、スーツだと浮きますよ。関係者だと思われますよと笑っていた。ちなみにネクタイは赤。完全にまおぴんカラーです。セブン・イレブンで調達したプレミアム・エビス ジューシー・エール。甘栗。入場。

アリーナ。いい席。通路席。出禁だかファン・クラブ除名だかになっている某有名新沼支持者を観測。前座、名乗るまで誰だか分からなかった松原ユリヤさん。見違えるほどの成長(スキルがどうとかじゃなくて生物としての発育という意味で)。感じる月日の経過。リル・キャメ勢も大人への階段を着実に上がっている。八木栞さんが漂わせるいいオンナ感。処女でなくなった可能性がある。性的になった豫風瑠乃さんのからだつき。彼女たちの成長に合わせたかのようにダンスに取り入れられる、杭打ち騎乗位のような動き。少し見ない間にこんなに大人になって……という発想が既にジジイ。この1-2年は彼女たちにとっては少しの期間ではないのだろう。時間の尺度が異なる。

コンサートのほぼすべての時間を、私は無言で過ごした。私はいま喉の調子が良くない。大きな声を出すのも継続的に喋るのも少し難しい。そして、そもそも感情が高ぶらない。だが、新沼希空さんと谷本安美さんに特別ゲストの山岸理子さん、岸本ゆめのさん、小片リサさん、浅倉樹々さんを迎えてのオリジナル6による『気高く咲き誇れ!』、そこに小野田紗栞さん、小野瑞歩さん、秋山眞緒さん通称さにこ(なんだそれ? と思って数日前に検索したら太陽のようだからSunnyなのと3人という二つの意味を掛け合わせているらしい。イク!つばで命名されたとのこと。いやいや、太陽のようなというか、日が没しているだろう)を加えての『初恋サンライズ』で突如として感情を取り戻した。ちょっと泣きそうになった。小片リサさんと浅倉樹々さんが同じステージで曲をパフォームする奇跡のような時間に立ち会えるとは! 小片さんと浅倉さんが曲中に向き合って目を合わせる場面では武道館がどよめいた。オリジナル6と、さにこ(なんだそれ?)を加えた9人。この編成によるパフォーマンスを観られる機会は、おそらくもう二度とないだろう。本日をもって新沼希空さんは芸能界を引退するからだ。この2曲だけで、私にとっては仕事を早く上がってここまで観に来た価値があった。それ以外の時間はすべて私には無価値だった。山岸さん、岸本さん、小片さん、浅倉さんが抜け、現体制によるコンサートが再開したとき、私は夢から醒めたような気持ちになった。名称こそ引き継がれているが、私が追っていたのとは完全に別の集団になったんだなと改めて実感した。あの幻のような2曲。あのわずかな時間。浅倉さんと小片さんの共演。これで私の中でつばきファクトリーという集団が成仏し、正式に解散した。もちろん実際にはまだ集団が存続しているのは言うまでもない。しかし私にとってはあのオリジナル6、9、8の時代、あの面子がつばきファクトリーなのである。フットボール・クラブのように選手は入れ替わってもチームを愛し続けるというわけにはいかない。私にとってつばきファクトリーはそういうものではない。これだけメンバーが入れ替わると、つばきファクトリーと言われても、もはや別の集団がカヴァーしているのと変わらないのだ。もちろん、今のつばきファクトリーが好きな人々のことを否定するつもりは一切ない。あくまで私にとってはということに過ぎない。

2時間半、みっちりとコンサートをやり切るのはHello! Projectのスゴさ。当たり前のようにやっているけど、コレはインディーには望めない。インディー界は必死に営業をかけて客を集めようとする割に肝心のコンサートが拍子抜けするくらいの分量しかないことが多い。同じ2時間半を使うにしても、配分がコンサート30分で、特典会2時間みたいな。コンサートをしっかりと作り上げることに対しての愚直さ、実直さにかけてはHello! Projectは本当に素晴らしい。一方で、インディーの規模に慣れてしまうと、武道館のアリーナでもずいぶんと遠いなと思ってしまった。会場が大きくてステージとの距離が遠いのを補うほどの表現力や演出効果の迫力は感じなかったのが正直なところだ。

興味を失い、しばらく離れた今となっては、私はもうHello! Projectに前のような情熱を注ぐことは想像すら難しい。ファン・クラブを辞めるとき、事務所から届いた書類には脱会という言葉が使われていた。辞書的には間違ってはいないのだろうけど、普通、退会じゃない? 私の感覚では、脱会ってカルト宗教を脱出するときによく使う言葉だ。Hello! Projectはまさにカルト宗教であり、自足自給の村だったんだと今になって私は思う。村の中だけを見て、外を見ないことが幸せになるための秘訣。他の陣営や娯楽と比較、相対化したら終わり。目が醒めてしまう。閉じた世界。それが悪いとは言わない。きそーら最高! と叫んでいた紳士たちにしても、世の中のあらゆるアイドルと新沼さんを比較した上で、彼女こそが最高だという結論を出しているわけではない。たまたま好きになったから最高。自分が愛するのは彼女だと決めたから彼女が最高。それでいいのだ。おそらく幸せというのはそういうものだろう。

2024年6月22日土曜日

『私のもとへ還っておいで』上映会&コンサート (2024-05-24)

チケットが全然売れていない。まだ半分くらい。ちょっと前にInstagramの配信でめいめいがこぼしていた。彼女はInstagram配信の予告をしない。アーカイヴも残さない。偶然Instagramを開いたタイミングと重ならないと視聴する機会がない。たしかこの回では引っ越すにあたりモノを減らすため紙の本をすべて処分(NPO法人か何かに送付する)してKindleに移行するという話をしていたような気がする。(この話をしていたのは違う回だったかもしれない。)チケットの売れ行き(この時点ではファンクラブ先行受付の段階だったと思う)が芳しくないのはなぜだろうか? 開演時間が金曜日の14時と18時半。9時から18時くらいの一般的な就業時間であれば、半休なり全休なりフレックス・タイムで早く上がるなり、とにかく何かをしないと片方でも観に来るのは難しい。

Hello! Projectの現場なら曜日時間帯に関係なく人が集まる。それは観に来る人たちが狂っているからだ。狂っている人(異常者)がたくさんいないと平日昼間の興業なんて成り立たない。いまのめいめいに狂ったファンはそんなにいない。狂っていないから正常な判断をする。正常な判断をする人が多いから、平日の昼間には申し込みが少ないという正常な結果になる。接触で売っているかどうか。そこが分岐点だと思う。色恋的な意味で好きにさせるとか、レスを送るとか、そういった世界。そこにめいめいは住んでいない。魂を込めた作品を作って、表現を届ける。極めて誠実で真っ当な姿勢。素晴らしい。だがその活動スタンスに引き寄せられるファンたちが平日に何らかの無理をして現場に来るかというと……。もちろん来る人もいるけど、アイドル現場のようにはいかない。まともな人が多いから来るかどうかの判断もまともになる。酔っているか、素面かの違い。もうひとつ考えられる理由として、上映会&コンサートという、いまひとつピンと来ない演目。何をやるのか。どれくらいの時間やるのか。それも多少はあったと思うが、あくまで副次的だと思う。

実際どんな感じだったかというと、観に来ていたのは70-80人。フロアに配置されたパイプ椅子。A, B, C, D, E, F, G列までテープで席番号が貼ってある。その後ろにも1列ある。当日券用か、関係者席か。1列が10席。8列全部座って80人。前後左右に空間がある、余裕のある配置。コヴィッド騒ぎの最中にあった、ひとつ飛ばしの席配置という茶番。アレを思い出した。おそらく開催する側としてはもっとチケットを売って詰めた並びにしたかったのだろう。観る側としては見やすくて助かった。めいめいが昼公演の上映会で、客席側のキャスティングの選抜メンバーみが強い、私のことをスゴく好きでいてくれるコアな人たち、的な言い方で我々に触れてくれた。めいめいのことをとても好きな人たちが集まっているのは間違いないが、ここでいう好きとは分別を伴う好きであって、所謂ガチ恋的な感情を抱いている人はほぼ皆無であろう。めいめい自身が育ててきたファン層であり、それで活動が成り立っているのは素晴らしいことである。

ひとつの公演が二部に別れており、一部は『私のもとへ還っておいで』本編の上映会。これが70分程度。休憩を挟んでコンサートが50分程度。たっぷりと時間を取った豪華な内容だった。上映会は、ステージの横の方に座っているめいめいと一緒にみんなで映像を観ながら、めいめいの話を聞くという感じ。場面ごとにめいめいが教えてくれる裏話が面白かった。たとえばめいめい演じるショウ・パブの女が冒頭で客のことをおっさんと言うのだが、その言葉を使うことに葛藤があったという。なぜなら客席にはおっさんがたくさんいるから。でもそこでおっさんたちがたくさん笑ってくれて緊張が解けた。あと、ある場面では体感的にはもっと笑いがあったので編集で笑いを足したとか。最初の衣装は歌舞伎町にマネージャーの清水さんと二人で買いに行ったとか。劇中に女が殺害予告を受ける場面で、観に来ていた甥っ子がめいめいが本当に殺されると思って泣き出したとか。椎名林檎『本能』を入れたのはただナース服を着たかったから。ラムちゃんの曲を入れたのもあの衣装を着たかったから。最近コスプレに興味がある。綾波レイのコスプレ(本格的なやつ)をしてコミケに行ってみたい。(囲まれちゃうよ!という客席からの声。)囲まれたい。予算の制約が厳しく、マリリン・モンローのカツラもアマゾンで安いのを買ってメイクさんに加工してもらった。裏話以外にも、めいめいの創作に対する考え方を聞けたのがよかった。私が最も印象に残ったのが、『私のもとへ還っておいで』を通して伝えたいことは何ですかとインタビューで聞かれて困るという話。伝えたいことはない。一人芝居コンサートというフォーマットをどうやって成立させるかを考えて作った。(これは本当にそうだよな、と思う。映画にしても小説にしても劇にしても、すべての物語に何かしらの教訓やメッセージが秘められていると思っているタイプの人たちっているよね。あとは登場人物に共感できないからこの作品が好きじゃないとか。たとえば主人公の言動に不快感を覚えるなら、そのイヤな感覚を味わうことを含めて作品を楽しむということなのに。表現において大事なのは伝えたいことよりも表現したいこと。この二つをごっちゃにすべきではない。)

コンサートのセットリストは昼と夜で同じだった。
1.『舞台』
2.『優しい夢だけを見て』:今日来ているのはコアな人が多いからコアな曲を…。人前で歌うのは二回目、前回歌ったのは『めいめい白書』で今日と同じ会場とめいめいは言っていた(まったく記憶になかったが私はどうやらその公演を観ていたらしい)。ただ、私が知る限り名古屋のリリース・パーティでも歌っていたはず。森川さんのブログで読んだ記憶がある。なので少なくとも三回目である。事務所の社長が好きな曲とのこと。昼公演には来ていなかったが夜公演は観に来ていた様子。
3.『オシャレ』:Hello! Project時代にひなフェス2014でパシフィコ横浜でソロで歌った曲。自分で選んだ候補曲は『モーニングカレー』と『負けるなわっしょい』だったがつんくさんに却下された。当時はそれが不満でメンバーにも愚痴っていた。当時はファンからがなる歌い方が求められていたので先述の二曲なら喜んでもらえると思っていた。『オシャレ』じゃ普通じゃん!と思っていた。でも今となっては普通で等身大なのが一番可愛いと分かる。つんくさんには感謝している。
4.『夢やぶれて』:劇中に歌う候補のひとつだったが落選した曲。“I Have Nothing”の場面。
5.『無花果』:コロナの時期でリリ・イベがキャンセルになって皆さんの前で披露する機会を逸した曲。
6.“Over the Rainbow”
7.“MAY”:自分の名前がめいで、5月なので入れた。

私にとってのハイライトは『優しい夢だけを見て』と『オシャレ』の二曲だった。『オシャレ』は前半がジャジーなアレンジで、2014年の映像を改めて観てみると表現力の圧倒的成長を感じられた。来年、再来年あたりにはゼップ・ツアーをやりたいとめいめいは言っていた。このヴィジョンを示してくれたのは嬉しかった。というのが最近のめいめいは体調が万全ではない時期があったのもあり、イケイケドンドンという感じではなく、どこに向かっているのかがいまひとつ見えにくかったからだ。こうやって一年、二年先の具体的な計画を話してくれると、こっちもそれを糧にファンを続けることが出来る。ファンクラブが私に与えた席は昼公演がE列、夜公演はA列。もちろん昼のE列でも十分に楽しめたが、特に夜公演は最前でめいめいの姿を拝み、生演奏と共に彼女の歌に浸ることが出来、幸せな時間だった。

2024年6月8日土曜日

吉田琴音生誕祭2024 (2024-05-12)

AFCアジア・チャンピオンズ・リーグ決勝戦、1stレグの翌日。土曜日に試合、日曜日にこのコンサート。身が入るわけがない。集中できるわけがない。あらかじめ分かっていた。試合がどんな結果になろうとも、私は他のことを考えることが出来なくなっているに違いない。5月11日(土)の試合が終わってもまだ2ndレグがある。2試合目が終わるまでは気が気でないはずだ。吉田琴音さんのお誕生日? それがどうした。KissBee? それがどうした。藤井優衣チャン? それがどうした。アイドル? それがどうした。そういう精神状態になることは、この公演を申し込む前に分かっていた。横浜F・マリノスが蔚山現代を破って決勝進出を決めたのが4月24日(水)。今日のチケット販売が始まったのが4月29日(月)。コンサートに足を運んだとして、私のモチベーションが低いのは既に見えている。行かないのも手。というか賢明。しかし5月末が使用期限の特典券が2枚残っている。コレを逃すともう今月はKissBee現場に来ることはない。ということでチケットを購入。

アル・アインとの試合は、16時から横浜駅近くで整体を受け、そのまま先生と一緒に観に行った。試合前に瀬戸うどんにでも入るつもりだったが先生がお酒を飲みたがるので新横浜駅とスタジアムの間にある適当な居酒屋に入った。(居酒屋北海道という店。調理含めすべてを大学生アルバイトで回しているかのような居酒屋。安いようでいて結局まあまあ行く金額。二度と利用しない。)先生曰く中国の地元では毎日のように何かにかこつけた集まりがある。誰かの誕生日とかで。その度にお金を払わないといけない。自分がそういったパーティをやらなくても他人のには顔を出さないといけない。イヤでも一回目は出て、二回目から断るというような配慮をしないと人付き合いに影響が出る。給料では足りないくらいにお金が出て行く。自分も会を開いてお金を徴収しないとやっていけない。複数人で食事に行ったときはその中で稼ぎがいい人が全額を払わないといけない。それが当たり前。先生はそういった風習があまり好きではないのだという。

試合前、選手入場時に立ち上がってゴール裏有志が用意してくれた紙(スタジアム全体でトリコロールを表現。私のエリアは白だった)を両手で頭上に掲げながらアジアを勝ち穫ろうのチャントを歌う。物凄い雰囲気だった。ウルッと来てしまった。2022年W杯の日本対スペイン戦で試合終了前に泣いていた男性が中継に抜かれたときに本田圭佑さんが言ったように「まだ早い」のは百も承知。まだ早いどころか試合が始まってすらいない。だが横浜F・マリノスがこの大舞台にたどり着き、私はスタジアムでそれを応援できている。それが本当に幸せだった。2-1でマリノスの勝利。僕が引退した後も思い出す試合になるだろう、と試合後にヤン・マテウスさんは言った。2週間後の2ndレグでは色々あって1-5で負け。合計スコア6-3でアル・アインがアジア・チャンピオンになった。それでも私にとって5月11日(土)のあの経験が特別だったことに変わりはない。

私が生きていて健康なうちに横浜F・マリノスがAFCアジア・チャンピオンズ・リーグで決勝に行くことは、もしかするともうないかもしれない。それくらいの大きな試合。一晩寝て何事もなかったかのようにKissBeeのコンサートに没頭できるわけがない。上の空。無理もない。昨日の試合で使い果たした感情。会場も良くなかった。五反田のG4。見づらい。整理番号38番。チケット発売後1分で決済購入してこの番号。おそらく年間パス(というのがあるっぽい)で最初の20-30人は埋まっている。会場によってはこの番号でももっと見やすい位置に行けると思うけど、G4では私たちのような一般層は残飯のような位置しか得られない。何と言えばいいのか、最前付近以外はすべてカスみてえな作りの会場なんだ。当日券で入っても大差なかった。
The odds are stacked against us like a casino
Think about it, most of the army is black and latino
(Immortal Technique,“Harlem Streets”)
マジでコンサートがほとんど印象に残っていない。ショッピング・モールでやっている知らない集団のリリース・パーティを遠巻きに眺めているのに近い感覚。あー、なんかやってるんだねっていう。入り込めていない。藤井優衣チャンの美貌は相変わらずだった。崩れる瞬間がない。お人形さん。それでもずーっと頭から横浜F・マリノスのことが離れない。昨日の試合のこと、次の試合のこと。マリノスに夢中すぎて、意識にKissBeeが入り込む余地が残されていない。視界の中ではKissBeeのコンサートが開催されている。メンバーさんがステージにいる。好きな曲も流れている。見える。聞こえる。それでも私に今日のコンサートは見えていなかったし、聞こえていなかった。ただそこに居ただけだった。私はこのコンサートの一部ではなかった。終演後、期限切れが近い特典券2枚を使ってツー・ショットの写メを2枚。藤井優衣チャン。実物も写真でも氏が美しすぎて毎度ながら感心する。すぐ隣に立たせてもらって、一緒に写真を撮ってもらう。それに1枚千円を払うのも納得である。

2024年6月2日日曜日

TAKUYA KURODA featuring 9m88 (2024-05-08)

この淑女を一目見るためにJPY9,500の公演チケットを購入した。誰かって言われても何て読むのか分からない。安くないチケット代に加えさらにJPY2,000くらいを払う羽目になる。ブルーノート東京では飲み物か食べ物の注文が必須だからだ。でも何て読むのか分からない。私がSpotifyで2023年によく聴いたアーティストの3位くらいだったと思う。でも何て読むのか分からない。一回読み方を知ったことがある。もう忘れた。何て読むのか分からない。覚えづらいことこの上ない。9m88。どう読むのか分かるか? 正解は、きゅーえむはちはち。ではない。ジョーエムバーバー。分かるか。覚えられるか。もう覚えたけど。

2023年4月5日(金)にブルーノート東京のウェブサイトを眺めていて、何かめぼしい公演はないかなと思ったら9m88さんの名前が目に飛び込んできた。Spotifyでよく聴いているあの歌手! 曲の題名から漢字圏の方なのは分かっていたが、詳しい素性は分からない。おそらく活動拠点は日本ではない。生で観られる機会もそうないだろう。私にとっては最初で最後になるかもしれない。観に行くしかない。すぐにチケットを購入。

私が氏を知ったのがおそらく2023年2月22日(水)にドロップされた黒田卓也さんとの合同曲、『若我告訴你其實我愛的只是你-What If?』。たぶんSpotifyで先に黒田卓也さんをフォローしていた。黒田さんのニュー・リリースとして流れてきたこの曲で初めて9m88さんの歌声に触れた。それで9m88さんのアルバムを聴いたらめっちゃええなんってなった。そういう流れだったと思う。だから黒田卓也さん経由で知ったということになる。黒田卓也さんをフォローした経緯は定かではない。正直ちゃんと聴いたことがない。本当にちょっとしたきっかけで軽くフォローしたんだと思う。アマゾンで気になった本をとりあえずカートに入れるような感覚でさ。黒田卓也さんはトランペット奏者なんだけど、私はそこまでトランペットに興味がなくて、ジャズを聴くときはピアノありきなんだよね。

家を出て、表参道に向かう、せめてその間だけでも黒田さんの最新アルバムを聴こうと思ったんだけど、どうも気乗りしなくて。好きじゃないとかじゃなくて。気分的に。しっくり来ない。Arakezuriっていうインディー・ロック・バンド(BLUEGOATSさんの24時間ライブのチャンチーさんと三川さんのトーク・セッションで話題に挙がっていた)のプレイ・リストに切り替えた。青山のBALATON CAFEで時間調整。ホット・コーヒー。ブルーノート東京にあまり早く入っても開演前に飲み物のグラスを空にしてしまう。音を浴びつつちびちびやりたい。20時15分に入場。20時27分に届く紅菊水(梅酒)。ブルーノート東京とコットン・クラブはお酒をロックで頼むとチェイサーの水をつけてくれる。20時半開演。完璧なタイミング。

カウンター席という席種を初めて買ってみた。一番後ろの壁際。全体を見渡す位置。バスじゃもろ最高部な奴らが好みそうな席。悪くなかった。最大の利点は向かいに人がいないこと。ブルーノート東京の席は基本的に、誰かと一緒に観に来るのを前提につくられている。どの席を選んでも誰かと向かい合うか密接することになる。カウンター席だとその居心地の悪さがほとんどない。壁を背に座る。前に丸いテーブルがある。そのテーブルを二人でシェアする。(単騎で乗り込むかぎり)赤の他人と隣同士にはなるが、向き合うわけではないのでさほど気にならない。そして、見晴らしがいい。アリーナ席よりも一段上にある。ステージからは最も遠い席だが、視界が他のヘッズで遮られることはなかった。反面、前方席と比べるとどうしても臨場感、音の迫力は落ちる。周囲の雰囲気も落ち着いており、何となく声が出しづらい。コンサートを作り上げる当事者というよりは後方彼氏面的なスタンスに誘導される。軽い気持ちで観に来る分には最適な場所だとは思う。他の席と比べると値段が安いし。

バンドは5人編成。黒田卓也さん(トランペット)、Corey Kingさん(トロンボーン、ヴォーカル)、泉川貴広さん(ピアノ、キーボード)、Kyle Milesさん(ベース)、Zach Mullingsさん(ドラムス)。スペシャル・ゲストに9m88さん(ヴォーカル)。今の私では何がどう良かったかを具体的に語るのは難しい。というのが、先述したように私は黒田卓也さんの音楽を十分に(というかほとんど)聴いていない。それに加え、私はピアノがメインではないジャズのコンサートに来たことが一度もない。音源でも少ししか聴いたことがない。だが一つ言えるのは、来てよかったということ。今日のチケットを確保した後に会社のグループ・ディナーの誘いが入ったのだが、そんなものに行っている場合ではなかった。黒田さん曰く昨日のリハーサルを含めると15日連続でコンサートをやっているとのこと。毎日5時間ほどの移動を挟みながら。東京に来る前はアメリカの西海岸でツアーをやっていた。その興奮が醒めやらぬ感じが黒田さんの言葉から伝わってきた。ジョークのノリがアメリカっぽかった。今日も2万人の観衆が…いや、2万人は言い過ぎか(笑)とか、プレミア価格がついている過去作品のヴァイナル盤が物販で買えるから一人10枚買ってほしい、10年後に転売したら何かの足しに出来ますよとか。黒田氏は9m88さんと話すときなど、度々ステージ上で英語を話していたが、当然ながらこなれていた。いちいち日本語に訳さない。青山に吹く、心地よいアメリカの風。

何という曲かは分からないが、結構な長尺で(腕が限界になるくらい)私たちにさまざまなリズムで手拍子をさせる曲があって、それが楽しかった。単に曲に合わせて我々が手を叩くのではなく、我々の刻むリズムが曲に欠かせない構成要素になっていた。途中で男(と自分で思う人)と女(と自分で思う人)で叩くリズムを変えたりして。

私が9m88さんを知るきっかけになった『若我告訴你其實我愛的只是你-What If?』を生で堪能することが出来た。感激した。この曲を実際にステージで共演するのは今日が初めてだったらしい。(私が観たのは2nd setだったので正確には2回目。)9m88さんは本編に3曲、アンコール後に1曲と、たっぷり4曲に出演。彼女を目当てに来る価値が十分にあった。9m88さんを観ながらふと思ったのだが、日本で職業としてのいわゆるアイドルに従事している人々の中にも、やりようによっては9m88さんのような素晴らしいソロ・シンガーになれた人はいたんじゃないだろうか。だがそれは狭すぎる門というか、もはやそんな市場はないのだろう。お金の動くところにしか職はない。本日、黒田さんが披露した新曲の一つに、新幹線をテーマにしたものがあった。発車時刻まで時間があるからと余裕をぶっこいていたら車両が遠く、みんなで走ってギリギリで乗り込んだときのことを曲にしたという。JRに売り込むつもりです。お金のあるところからお金を取らないといけない。ジャズ界は厳しいですから、と冗談混じりに言っていた。

ブルーノート東京が和やかな雰囲気に包まれる中、ある観客が私の目に留まった。彼はまったく楽しそうではない。ステージを見るでもなく、どこか虚空を見つめている。拍手もしない。こわばって変わらない表情。見えない感情。コンサートにまったく入り込めていない。心ここにあらずを形にしたような存在。勝手な決めつけではあるが、私には彼がうつ状態にあるようにしか見えなかった。数年前の自分を思い出した。

2024年5月5日日曜日

Full Power 24 hours (2024-05-04)

BLUEGOATSさんを観に行くのは3月10日(日)以来、約2ヶ月ぶり。4月18日(日)だったかな。その辺に一度、観に行くつもりだったんだけど、見送った。対バンというのがどうにも。それも対バン相手が普通のバンドなのよ。男の。ちょっとね。BLUEGOATSさんを観に行きたいのにBLUEGOATSさん以外に割かれる時間の方が長くなる。そのバンドさんたちにも興味ない。もちろんBLUEGOATSさんの方向性としてコテコテのアイドル路線を拒絶し、音的にも精神性(社長の三川氏が口癖のように使う言葉)的にもロックを体現したい、そっちの土俵に行きたいというのは分かる。だけど私はあくまでBLUEGOATSさんを観たい。そもそも私は単独公演でさえコンサートの時間が短すぎると感じている。いわんや対バンをや、である。私が食べたいのは500gくらいのステーキであって、途中で100gくらいのステーキが申し訳程度に差し挟まれるコースじゃないんだよっていうさ。そんな感じよ。

昨日の20時から始まった24時間ライブ。最初の約20分にコンサートをやって、そこから特典会と休憩。という時間配分は昨日YouTubeの配信を観て知った。それを24回転。あと各メンバーさんと社長(プロデューサー)の三川氏とのトーク・ショウがあったりとか。休憩時間が全部細切れだからメンバーさんたちは寝ることが出来ない。それが許されてもいない。先日のダイナマイト・マリンさんのフル・マラソンと同様、メンバーさんたちが乗り越えないといけない試練を意図して作り出しているようである。娯楽として客を集めるというよりは、メンバーさんや運営側が精神的・肉体的な苦しさを乗り越えることで何かを手に入れる、そういう発想がBLUEGOATSさんの根本にある印象。寝ないとか食べないとかを一定時間続けることで得られる特殊な精神状態ってあると思う。ある種の宗教的な感覚っていうか。そういうのを狙っている感じがする。

第1部から5部まであって、通しチケットがJPY15,000。各部のチケットがJPY3,000。私は今日の9時から13時の部だけを購入。8時半開場。場所は大塚。8時には家を出ないといけない。となると7時起き。連休中にわざわざ。6時台に目が覚めたのはたまたま。洗濯などをしていたら家を出るのがギリギリになった。北池袋駅。プラットフォームのベンチにもたれかかって地面に座り込む、ふくよかなミニスカ茶髪婦人。飲み過ぎたホス狂か? 10メートルくらい離れたところからiPhone SE (2nd generation)で写真を撮っている私を尻目に、スタイルの良い長身ミニスカ美女が自販機で飲み物を買い、ホス狂に与えていた。私は自分が恥ずかしくなった。その場を離れたくなり、プラットフォームの先まで歩いた。池袋駅。山手線。一駅。大塚駅。初めて降りる。昨日YouTubeのオススメに出てきたザ・マミィさんの動画、ぶらり途中発射の旅が大塚駅の回だった。ピンサロがいくつもあるらしい。散策する時間はなく、会場に直行。Hearts+って会場名もちょっとメン・エスっぽく見えてくる。あと数分で開場。入口の階段手前に1-2人はみ出している入場列。感じの良い受付の淑女。JPY600。ラム・コーク。

朝は排泄の時間。人間の身体がそう設計されている。不本意ながら物販奥の洋式便所で用を足す。負い目。罪の意識が自分の脳内に作り出す、コイツさっきうんこしてた奴だという架空の他人の目。だが今から4時間は我慢出来ない。丁寧に手を洗う。いい感じに空いているフロア。お手洗いに行って戻ってきても同じ位置に立てる。みんなが前に行きたがっているわけではないようで、割と人が分散している。通しチケットの購入特典であるロング・ティー・シャツを着ている紳士淑女がパッと見、10名くらい。JPY15,000ってまあまあな値段ですよ。チェキ券はまた別で1枚JPY2,500する。BLUEGOATSの現場に来るのは若い人が多い。そんなにお金を持っているわけではなさそう。チェキをゼロってわけにも行かないだろうから、何枚か買って。控えめに買っても4枚は欲しいよね。JPY10,000でキリがいいし。となると合計JPY25,000。それこそ風俗にでも行ったほうがいいような金額になる。実際、券をアホみたいに買っている人は居なさそうだった。特典会が始まっても並ばずに後ろから見ている人も多く。

私はBLUEGOATSさんに関して、存在を知る、YouTubeが面白い、メンバーさんたちが魅力的、曲がいい、実際に現場に行ってみる、までは順調に進んできた。だが、その先にあるはずのコンサートが楽しくて仕方ないというところまでは到達できていない。まだ距離があるなと感じている。曲は本当にたくさん聴いている。私はSpotifyでBLUEGOATSさんの曲をまとめて一つのプレイ・リストにし、毎日のように聴いている。世界で一番BLUEGOATSさんを聴いているSpotify利用者の可能性すらある。そして私はBLUEGOATSさん現場のフロアの雰囲気が好きだ。とにかく治安がいい。ピンチケがいない。適度に空いている。一人でも疎外感がない。ただ疎外感がないというのは、馴染むことを求められる既存のノリが出来上がっていないということでもある。よく言えば平和、悪く言えば淡白。三川氏がTwitterで明確に書いていたのだが、BLUEGOATSさんとしてはアイドルノリをやりたくない。だからアイドル現場で定番のオタク側による様々な発声やキモい動きがない。代替のノリとして、我々には一緒に歌ってほしいようだ。ただステージ側もフロア側もどうすればいいのか探り探りで、ぎこちなさがあって、あるべきノリを作っている途中という感じ。(さすがに知らない曲を一緒に歌うことを求められるのには驚いた。まだSpotifyにもない新曲。そのリリックを前日とかにソーシャル・メディアに載せて、歌える人は歌ってくれと。何という難易度。)

メンバーさんたちが登壇し9時の回が始まったと思ったらラジオ体操の音が流れ、そこから全員で体操の第一をやった。写真を撮るヘッズ(BLUEGOATSさんの現場は静止画撮影可)を見たほんま・かいなさんが、ちゃんと体操をしろ、撮影するな的に叱っていたが、その後にどこかでツボに入ったらしく笑いを堪えられなくなっていた。チャンチーさんはずっとニコニコ。ダイナマイト・マリンさんとソン・ソナさんも楽しげ。フロアの我々は何の予告もなく始まったラジオ体操を黙ってこなす。シュールで平和な空間。20分ずつの細切れではあったが、BLUEGOATSさんのコンサートを約80分という長い時間、観られたのはよかった。4セットとも2列目で観ることが出来た。小難しいことは抜きにして、若い女が歌って踊るのを近くで観るのはいいものだ。『東京タワー』を3回もやったのには驚いた。ただ、好きな曲なので繰り返し聴けたのは嬉しかった。

人が人をちゃんと覚えるのには3回くらい会う・見る必要があるのかもしれない。もちろん個人差はあるだろうけど。前にKissBeeの優衣チャンが配信で、同じ日に特典会に3回来てくれたら確実にその人のことを覚えると言っていた。私にとってBLUEGOATSの現場はコレで3回目。無銭のときに三川氏かと思った紳士は別の方だった。どの紳士が三川氏なのかも分かった。見分けがつくようになってきた。そして、3月10日(日)の初対面に続き本日チャンチーさんと2回目、3回目の面会を果たし、3回目で完全に覚えてもらった。三川氏から購入したチェキ券2枚は9時~の回と11時~の回に行使した。両方チャンチーさん。3月10日(日)ぶりだったが最初に対面したら存在は覚えていてくれていた。名前を聞かれ、しいてきと答える。聞き返される。しいてきと答える。「どうやって書くの?」「アルファベットで、C-T-E-K-I…」「C…」「それSね」「アッ…(自身の頭を叩く)。えーC…C…(Cを出すのに数秒かかる)」/「近いんだっけ?」「家? 北池袋」「近い!」「デコ・チェキ買ったんだけど、(封筒に)事務所の住所が書いてあるじゃん」「うん」「調べたらうちから徒歩19分だった」「めっちゃ近!」。チャンチーさんは10時~の回に『スーパーヒーロー』でリリックの「君」のところで私を見て指さしてくれた。私はアイドル・オタクを引退済みなのでこういうのは久し振りだった。11時~の回では、チャンチーさんがInstagramのストーリーに上げていた小説などの話をした。「チャンチーさんが読んでた『希望のゆくえ』、読んだよ」「もう読んだ(読み終えた)の?」「うん」「どう思った?」「うーんあんまり記憶に残らないというか。ハッキリした展開がないから…」「たしかにね。でも最後は何となく上向きになるみたいな」「『百年と一日』も昨日読み始めたんだけど、どこかに置いて来ちゃって、なくしちゃった」「笑。うちのあげよっか?」/「何センチ?」「身長?」「うん」「173cmかな」「大きいね」「そう? 何センチ?」「うち?」「うん」「149cm」「そうなんだ。20cm違うんだね」「そう20cm違うよ」(ちなみにキモすぎるからもちろん言わなかったが、この身長の組み合わせだと子供の身長がどうなるのか気になった。インターネットのそういうサイトによると男169.5cm、女156.5cmになるらしい。)

高田馬場。バインミー★サンドイッチ。ココのが一番おいしい。ベトナムハム&レバーペーストJPY680。トッピング青唐辛子JPY50(大正解)。時給JPY1,150-(土日祝時給アップ! まかない付)。

渋谷。IKEA。Plant basedのソフト・クリーム。JPY50。渋谷名物。yumegiwa last girlさんが参加する対バンが開催されていた渋谷Milkywayから出てきた、上京中のE氏と合流。

新大久保。シュベール。アイス・コーヒーJPY550。お代わりアイス・コーヒーJPY250。テジョンデ。(ソルマリに行くことで一旦E氏と同意したが私が無性にテジョンデに行きたくなった。)韓国ざんまいサンナッチ。イイダコ炒め。カキチヂミ&イイダコチジミ。コムタン。私マッコリ。E氏ビール。JPY9,108。

2024年4月28日日曜日

KissBee 新体制お披露目ライブ (2024-04-22)

皆さん、元気ないんじゃないですかー? なんて優衣チャンが公演中に我々を煽っていたけれど、私に関して言えば本当に元気がなく、ただ弱々しい微笑みを浮かべてやり過ごすしかなかった。ここ数週間。抜けない疲労感。昨日、日曜の朝。うわ、仕事に行かないと…あのメールを送らないと…そして早く上がってKissBeeを観に行かないと…そんな追いつめられたような気持ちで目が覚めた。まだ日曜日だと気付いても安堵はなく、しんどさが消えなかった。私が仕事とKissBeeを同列に並べ、こなさなければならないタスクとして認識していることに気付き、自分で驚いた。KissBeeの公演を楽しみに思えていない。むしろ精神的負担になっている。一日が経過し、多少はマシになったが、公演を存分に楽しめる心身の状態ではなかった。なんでこうなったのか。スケジュール帳の3月を見ると答えが書いてあった。3月中旬に会社の行事で某所に強制連行された。3月15日(金)は4時起きで始発電車。そこから日曜の夕方まで拘束され、翌日から普通に働かないといけなかった。ちなみに潰れたその週末には16日(土)にゆいののの公演、16日(土)と17日(日)にはめいめいの秘密倶楽部が開催されていた。会社による強制連行でそれらを観に行くのが物理的に不可能となった。残念である。でもまあ、横浜F・マリノスのホーム・ゲームと被らなかったからよしとする。会社都合で土日が潰れるとしても年に一度か二度。今の私は平日夜にもフットボールを観に行けている。十分に恵まれている。

「白金高輪 ビリヤニ」で検索して出てきたのがサムラートという店。会場に入る前にココで夕食。私は最近、ビリヤニにハマっている。ハマっているというよりは、ビリヤニに対する探求心が芽生えている。私だけなのかもしれないが、ビリヤニに対する受け止め方には店と客とで温度差がある。特に普段ビリヤニを出していない店がたまに作ると、やたらとプッシュしてくるというか、なんだか鼻息が荒い。私にとっては何がそんなにいいのかよく分からない。(作るのが大変なんだろうというのは何となく察している。)その謎を解明したい。良さを理解できるようになりたい。良いビリヤニと悪いビリヤニを識別できるようになりたい。

私は4月6日(土)からこれを書いている4月28日(日)までの3週間強で7つのビリヤニを食した:
  • タイガー(東十条) ビーフ・ビリヤニ
  • キング・ケバブの2階(東十条) マトン・ビリヤニ
  • サディア・カレー&ビリヤニ・ハウス(十条) チキン・ビリヤニ
  • サルシーナ(新大久保) マトン・ビリヤニ
  • ゴレルシャッド(江戸川区。池袋のイベントで購入)
  • サムラート(白金高輪) チキン・ビリヤニ
  • マルハバ(池袋) マトン・ビリヤニ
ビリヤニ初心者の感想ではあるが、サムラートのビリヤニが一番おいしかった。パッと見、量が物足りなく見えるが、中に肉がゴロゴロ入っている。Very hotにしてもらったらガツンとからい。生ビールに合う。レシートについているクーポンで次は生ビール(小)が貰えるらしい。白金高輪にはめいめいを観に5月24日(金)にまた来る(それも今日と同じ会場)ので、そのときに再訪してもイイかもしれない。チキン・ビリヤニと生ビールでJPY1,600。

会場内のバー・カウンターでジン・トニックを注文すると提供されたのは炭酸が抜け、ぬるい、よく分からない代物だった。何だこのゴミはと思いつつ飲み干し、紙コップを捨て、フロアへ。後ろ半分はだいぶ空いていて、ストレスなく過ごすことが出来た。今日の公演について、私が書くことはほとんど何もない。とにかく気力が不足している。感情が高ぶらない。声を出す気になれない。KissBeeNextという下部組織から二名が昇格し、KissBeeは9人になった。増えた人数を生かし、集団を二つに分けてそれぞれが曲を披露する一幕があった。意外にも初めての試みだったらしい。色々と見所はあったはずなのだが、いかんせん私の心身が整っていなさすぎた。鈴木みゆさんが異常に可愛く、優衣チャンを見ているつもりがついつい鈴木さんに目が行ってしまうことが度々あった。今日の特典会では自撮り写メと動画があるとのこと。普通の写メと、折角なので自撮り写メを撮ることにした。(係員の婦人がスゴく感じよく対応してくれた。)優衣チャンが間近に現れたとき、ウワ…って小さく声が出た。直視するのに戸惑うくらい美しかった。私と面会すると優衣チャンは、久し振りだ! と言って驚いたような顔をしていた。係員の婦人に2ショット写メを撮ってもらい、自撮り写メを私が撮ろうとすると、出来る~? と優衣チャンからの懐疑的な声。最初にiPhoneを構えた位置を見るや否や、低すぎ、低すぎ!(笑)と注意され、撮影後も、低かったら盛れないじゃん!(笑)と叱られた。私は満面の笑みを浮かべながらペコペコと平謝りした。今日こんな笑顔になれたのはコレが初めてだな。心がほぐれた。それだけでココに来た意味はあったのかもしれない。
くたびれたスーツを纏う僕は
久しぶりにちゃんと笑ったな
「良く似合うね」と笑う君を前に
ひとつ 途切れたフィルム
(BLUEGOATS、『フィルムカメラ』)

2024年4月5日金曜日

BOYS ON THE RUN (2024-03-10)

最近なにか面白い本は読みましたか? 鍼の先生に聞かれ、咄嗟に答えが浮かばなかった。色々と読んでいるので即答できない。急にボールが来たので(QBK)状態になる。ビートたけしの本をいくつか読んだと答えたが、他にあったはず。先生が私の身体から鍼を抜き終わり、退室した後に、着替えながら思い出した。料金JPY6,000を支払いがてら、私は言った。面白い本、ありましたよ。人間の自己家畜化に関する本を読みました。ジコカチクカって、自分の自己に、動物の家畜に化けるですか? そうです。犬や猫と同じように人間も自分たちのことを家畜化しているんです。ここ数百年の急速な社会変化によって、人間の気質、身体に変化が表れているんです。性格は穏やかになりました。男性らしさ、女性らしさが薄れ、全体的に中性的になりました。世の中から暴力が減り、安全になり、人間は長寿を手に入れました。でもその代わりに人間の自由と動物性が損なわれました。そして社会で成員として認められるための条件が厳しくなりました。適応するのが難しくなりました。昔であれば普通に生きることが出来ていたであろう人でも、特別支援教育や精神医療による矯正の対象になりました。そこにおける人間はもはや資本主義の道具です。今の人間が置かれている環境は、野生よりも動物園にいる動物の環境に近いのです。
[…]典型的中世人が[…]現代にやって来たら[…]その長期的展望を欠いた考え方は思慮が足りないとみなされ、その残酷さや衝動性や荒々しい感情表出はたちまちトラブルの種となり、刑務所に入れられるか、精神疾患として治療を受けなければならなくなるか[…](熊代亨、『人間はどこまで家畜か』)
数百年前なら良い仕事に就き、尊敬され、結婚し、子を残していたであろう人が、現代においては精神疾患に該当し、なかなか良い仕事も見つからず、生きていくことに疲弊していることはしばしばあるように思われるのです(熊代亨、前掲書)
その話は儒教と道教の違いに繋がる、と先生は言った。人間のありのままの動物性や自由を大事にするのが道教で、みんなを同じように型にはめるのが儒教。面白そうな本だ、チェックしてみる、と先生。私が読み上げた書名を手元の紙に書いていた。私は(先生も)本の説明に気を取られ、次の予約をするのを忘れたまま外に出た。

老紳士というカテゴリーの男性たち(2024年現在)は一般的に、公衆の洋式便所で便座を下げたまま立ちションをする。そう、便座に小便がかかる。後から誰かがそこに座る? 彼らは気にしない。彼らの目には罪悪感、背徳感が一切ない。それが普通(normal、正常)だと思っている。最初は例外的な異常者の行動だと思っていたが、どうやらそうではないらしいことに私は気付いた。あの世代の男性たちにとってはごくカジュアルな行為なのだ。(小便で言うと、私が小学生くらいの頃、日本ではその辺のストリートで立ちションをするのは普通のことだった。)便座に小便をかける老紳士たちは私から見ると好きな場所で放尿、脱糞する獣のようだが、自己家畜化の度合いが我々の世代よりも弱いという意味で実際に動物に近いのだろう。しかしながら、私が彼らに向ける白い眼が、動物園で檻の中にいる動物、飼い主によくしつけられたペットの視点だと考えると、本当に自分が正しくて彼らが間違っているのか、迷いが出てくる。

2012年8月19日(土)、私は当時の親友と二人で、秩父の両神山を登った。登山の終盤、熊が全力疾走で上から転げ落ちるように私に向かってきた。人生で最も強く死を意識した瞬間である。が、それはさておき。老淑女が一人で切り盛りする近くの宿に前泊した。宿に着くと出迎えてくれた老淑女は、開口一番、私たちが女なのかと聞いてきた。いや男ですと答えると、男なのか…こんなに優しそうなのに…的なことを言って何やら感心していた。当時は意味が分からなかった。お歳を召されて(具体的には覚えていないが相当なご高齢だった)目がちゃんと見えていないのカナくらいに思っていた。『人間はどこまで家畜か』を読んだ今では意味が分かる。おそらく実際に彼女の目から見て我々は女のように見えたのだ。人間の自己家畜化が進み、見た目からして中性化しているのだ。他人と接点の少ない山奥にお住まいの彼女はなおさらこの変化を感じ取りやすかったのだろう。

『非国民な女たち』(飯田未希)という印象的な本がある。戦時中に奢侈やアメリカかぶれの罪を着せられ国家的なバッシングの対象となったパーマネント。圧力におとなしく従わず、パーマネントを求め続けた女性たち。私はコヴィッド騒ぎの真っ最中(2020年11月)にこの本を読んだのだが、自粛や不要不急といった言葉で特定の業種が槍玉にあげられて叩かれる構図がコヴィッド騒ぎとまったく同じで唖然とした。『非国民な女たち』で描かれている時代、日本で髪にパーマネントをかけていたのはもっぱら女だった。当時の基準からすれば、今日の13時から予約した美容室でヘア・カットのみならずパーマネントをかけた私は女のようだと、女でも思うことだろう。

ポーター・クラシックの高価なデニム・カヴァーオールを纏ったD氏と、下北沢駅前で合流。氏の導きで、洒落たサテン。カフェではなくサテン。こだわりのある個人店にもかかわらず接客に嫌みがない。D氏はブレンド、私レーコー。D氏ブレンドお代わり。この後BLUEGOATSさんを一緒に観ませんかと誘ってみるも、渋い反応。その後、D氏オススメのカムイで夕食。食券制。担々麺とエビ焼売が売りらしく、店名にも記されている。私は麻婆豆腐と米とミニ担々麺のミール、D氏はあんかけかた焼きそばと小さい何かのミール。食いながら眺めるBLUEGOATSさんのYoutube配信。メンバーのダイナマイト・マリンさんがフル・マラソンに挑戦している。朝9時に埼玉の春日部を出発し、下北沢がゴール。そのまま下北沢の会場で公演に出演する。間に合わなかったら氏を欠いたまま公演が始まる。ダイナマイト氏は集団の中でも運動は苦手な方。多少の準備期間があるとはいえ、いきなり42.195kmを走り切るのは難しそう。出来たらスゴい。そう思っていたが、順調なペースで距離を伸ばしていく様子が配信されている。素直にスゴい。私は週に3回くらい5km走っている。これまでの人生で10km以上を続けて走ったことはない。だから仮にマリンさんが完走出来なくとも、20km、30km走れたら十分によくやったと思える。でも、何のために? 何でマラソン? という疑問は残る。D氏に会場前まで案内していただき、別れる。

下北沢MOSAiC。受付で予約時のニック・ネームを告げる。ドリンク・チケットとJPY600を交換。受付の先に座っている紳士二人組に声をかけられる。マリンさんの生誕企画。ペンライトを渡される。バー・カウンターでジン・トニックを注文。(鍼をやった当日はお酒を最後まで飲まないのが望ましいが、一応5時間以上経過したら飲むことは可能と先生に言われている。)容器がプラスティックではなくグラスだった。地下のフロアにグラスを戻す場所はない気がする。その場で飲み干す。19時開演だが17時から開場している。随分と早いのは、フロアでマリンさんのマラソンのパブリック・ヴューイングが開催されているから。入って右がステージ、正面の壁に巨大スクリーン。そこにYouTube配信と同じものが投影されている。私が入った18時過ぎにはだいぶ人で埋まっていて、どこに行ったらいいのか戸惑う。やや気まずい。すいません、すいませんってペコペコしながらスペースに進んでいく感じ。スクリーンに向かって左の後ろから2列目くらいの場所につく。ステージに置かれた椅子にチャンチーさん、ほんま・かいなさん、ソン・ソナさんが座っているが、ヘッズはスクリーンや手元のスマ・フォに集中している。徐々に近づく開演時間。順調にキロ数を刻むマリンさん。下北沢界隈まで到達していることが分かり、生まれる拍手。開演準備のためスクリーンが仕舞われ、メンバーさんたちが捌け、我々は回れ右するような形でステージに向かされる。誰も前に行こうとはせず、押し合いへし合いの混乱もなく、行儀よく。投げ銭公演のときもそうだったが、BLUEGOATSさんのヘッズは整然としていて控えめな印象。

無事に開演までに会場にたどり着くマリンさん。ステージに現れた氏に抱きついて一緒に倒れ込むメンバーさんたち。暖かい拍手に包まれるフロア。マリンさんによる感動のスピーチ。裏方、メンバー、ファンへの感謝。一方で、この企画に対する批判の声。YouTubeでメンバーを攻撃するコメントを投稿するヘイターたち。そのような人々からみんなを自分が守る、自分が戦う、という決意を表明していた。だからみんなは私たちだけを見てほしい、と。正直に言うと、私は彼女の言葉に入り込み切れなかった。私はBLUEGOATSさんの現場に来るのがまだ2回目。存在を知ってから2ヶ月も経っていない。よく知っているわけではない。マリンさんが42.195kmを走りきった後に真っ先に毒づきたくなるほど目の敵にしているその相手が何なのか、過去に具体的に何があったのか、ピンと来ない。その場にいるヘッズがおそらく共有しているであろう何かを私が共有できていないであろうことは分かった。いずれにせよ、フル・マラソンを完走するという偉業を成し遂げた直後、情念のこもったスピーチ、その流れで始まった公演。メンバーさんもヘッズも気持ちが入っていた。異様な雰囲気があった。序盤はマリンさんの息が整っていなくて、歌が乱れていたが、それがまた味になっていた。ただ、コンサートは40分足らず。もちろん今日に関してはマリンさんがフル・マラソンを走った直後という特殊事情がある。あの状態で一曲でも参加できるのはスゴい。ただ、単独公演をやるのであれば、せめて60分はしっかりと魅せてほしい。(前の投げ銭公演も30分くらいだった。)出来れば80-90分の尺で魅せてほしい。私の感覚ではそれがフル・サイズのコンサートだ。

私は別にアイドル・オタクではないが、せっかく現場に来たのだから一度は特典会に参加してみよう。私はBLUEGOATSさんに関しては明確に誰かの支持者ではなかったのだが、あえて言うならチャンチーさんは気になる存在だった。YouTubeでも、現場でも、集団の中で一番目で追いたくなる存在。衣装が一人だけハーフ・パンツで脚を見せてくれているし。ちょっと裾がめくれてエッチだし。終演後、チェキ券の購入列に並ぶ。チェキ券を一枚くださいと言うと、どのチェキ券ですかと係員に聞かれる。チャンチーさんのをと言うと、そうじゃない的な反応。どうやら撮るだけのチェキ券とお話もできるチェキ券の2種類があるらしい。お話も出来る方で。JPY2,500。係の人がチェキのカメラを持っている。てっきりそれで撮るのかと思いきや、列の先頭にいた紳士がご自身のスマ・フォで撮ってもらっている。訳が分からなくなった。後ろの紳士に尋ねたら優しく教えてくれた。曰く、このスマ・フォでと頼んだらそれで撮ってもらうことが可能。フィルム代がかからない分、3枚くらい撮ってくれる。紳士の言う通りにしたら3枚撮ってくれた。事前に何の説明もない。(どこかに書いてあったのだろうか? 仮に書いてあったにせよ現地で説明するのが普通の感覚だと思うが…。)自分で飛び込むなり周りに聞くなりして切り拓かないといけない。KissBeeさんでも感じることだが、地下アイドル界の特典会における説明の不足には本当に痺れる。いきなりポンと単騎で飛び込んでくる私のような存在は基本的に想定されていないのだろうか。

(以下、チャンチーさんとの会話の概要。記憶。正確な書き起こしではない。)

私:初めまして
チャンチーさん:えー! 初めて? ありがとう! (ポーズ)何にしようか…とりあえずピースして(1枚目)
私:スタートュ(YouTube動画のイントロにおける合い言葉)が好きなんで…
チャンチーさん:あ、そうなの?(2枚目、スタートュのポーズ)
チャンチーさん:ハート作って(3枚目)

チャンチーさん:ねえ、それ何なの?(私のiPhoneケース裏に入れてあるNHK撃退ステッカーを指して)
私:あ、これ…NHKの集金人が来たら、ココに電話したら追い払ってくれるの
チャンチーさん:…尖りすぎじゃない?
私:いいかな、って思って…
チャンチーさん:(お、おう…的な反応)

チャンチーさん:動画? 何で知ってくれたの?
私:バキ童コラボで知って、それでアオヤギ・チャンネルにはまって、動画ほぼ全部観て…
チャンチーさん:へえそうなんだ!
私:あー、で、オレ池袋に住んでて
チャンチーさん:えー!
私:あのチャンネルすごい池袋が出てくるでしょ
チャンチーさん:やばい、(場所が)バレちゃう
私:大体分かるよ。動画で、赤札堂で買い物してたでしょ
チャンチーさん:赤札堂(笑)
私:今は違うんだけど、赤札堂の先の辺りに住んでたこともあるし

チャンチーさん:名前なんていうの?
私:しいてき、です
チャンチーさん:どうやって書くの?
私:アルファベットで、c-t-e-k-iって
チャンチー:ああそれでしいてきって。覚える
私:あ、ありがとうございます
チャンチー:ありがとうね(私の右手を握ってくれる)

2024年2月23日金曜日

BLUEGOATS東京公演〜投げ銭ライブ〜 (2024-02-18)

バキ童さんことバキバキ童貞さんことぐんぴぃさん属する春とヒコーキさんとのコラボ動画でBLUEGOATSさんという集団の存在を知ったのが1月16日(火)。面白かったので彼女たちのチャンネル(アオヤギチャンネル)の他の動画も観てみた。2週間で80本くらいの動画を視聴した。カラオケで喘ぎ声だけで歌い機械採点で90点以上を取るまで帰れない、かっぱ寿司に河童姿で行って店のパフェが売り切れるまでパフェだけを食べ続ける、鬼が河童姿になって全国規模の鬼ごっこをする、メンバーさんの一人が一週間のホームレス体験をする、メンバーさんが知らない人にいきなりバケツで水をかけられる、街で声をかけてきたファンがその場で嬉ションを漏らす、メンバーさんが寝ている間に家に合い鍵で忍び込み洗濯機を盗みメルカリに出品する(そして売約する)、目隠しをして知らないオジサンにキスされる、他社のプロデューサーに打ち合わせと称して居酒屋で二人っきりにされ執拗にラブ・ホテルに誘われる等々、素晴らしい完成度の企画が目白押し。最近の動画も本当に面白い。(私がこのチャンネルにハマったのは単純に動画がとても面白いからだが、一つ付け加えるなら池袋で撮影していることが多いからだ。BLUEGOATSさんの事務所は池袋にある。正午から終電の時間までそこに出勤するのが彼女たちの基本的な勤務形態らしい。動画には池袋の風景が頻繁に出てくる。事務所の詳しい住所は公開されていないが動画に出てくる風景で何となくエリアの察しはつく。)笑えない話もある。バキ童さんとのコラボ動画(+もう一つの動画)のURLを誰かがチャンチーさんが在籍していた大学のホームページのお問い合わせフォームに貼り付け、こんな奴と同級生なのはイヤだと書いて投稿した。このスニッチが原因でチャンチーさんは大学を退学させられたらしい。それを曲にしたのが『私は大学を辞めた、友達のせいで』。なんて言われたら興味をそそられる。聴いてみたら意外と(と言ったら失礼だが)エエ曲やん。同曲を含むEPをSpotifyで再生したら3曲ともよくて、そのまま何度も繰り返して聴いてしまった。BLUEGOATSさんの曲はリリックをすべてメンバーさんが自ら書いている。YouTubeでお人柄に親しんだ上で、彼女たちが自作したリリックだと知って聴く曲は鳴りが違う。YouTubeにせよSpotifyにせよこれだけ無料で楽しませてもらっているので一度は現場に行ってみたいし何なら特典会でチェキでも撮ってみたいなと思うようになった。3月10日(日)の下北沢公演のチケットは購入した。この週末(2月17日-18日)には青山と新宿で投げ銭ライブをやるとのこと。これといった予定がなかったので足を運んでみることにした。

昨日の青山は12時開演、今日の新宿は12時半開演。12時だと早すぎる。昼メシを食うタイミングを逃しかねない。新宿で12時半開始なら新大久保で昼メシを食ってから行っても間に合うだろう。そう考え11時半から淘湘記で高菜毛豆肉沫JPY880。歩いて向かう新宿Marble。12時20分頃に着く。入口の階段を下りようとするとこちらを向いて立っている紳士と目が合う。会釈してくるので何となく返す。BLUEGOATSですか? はい。あ、ありがとうございます。そこの階段を下りてドリンク代をお支払いいただきご入場ください。分かりました。あの紳士が事務所(株式会社TEAF)社長の三川氏だろうか? YouTubeで聞き覚えのある声な気がする。一瞬の対面だが人当たりのよい人物に見えた。JPY600。フロアはもう大方埋まっている。中央から右にかけては一番後ろまでほぼ入る余地はない。左側はまだ空間がある。最前の左側に長方形の中にバッテンの形でテープが貼られた場所がある。公式カメラ用の場所だった。その後ろに女性二人組(この二人以外、パッと見て女性客は見当たらなかった)、その女性たちの後ろに私が立つ。この公演はYouTubeで生配信される。昨日の公演も配信されていて、私は夜に観た。撮影担当者の紳士は、後ろにいる我々に向けて、邪魔だったら叩いて知らせてくれ的なことを開演前に言ってきた。腰が低く感じのいい人だった。最前中央付近に目をやると、昨日の配信で見覚えのある帽子を被った紳士がいた。昨日は最前中央、今日は二列目の中央。おそらく毎度、決まった面子が観に来るのだろう。「大体 毎回 いつも同じメンバーと再会」(RIZE, “Why I'm Me”)なのだろう。キャパ150人の会場で開演10分前にふらっと入れる動員能力なんだからそりゃそうなるわな。そういえば、2017年に特典会でファンとラップ越しにキスをして問題になったTHE BANANA MONKEYSという地下アイドルがいた。私は当時Twitterで騒ぎになっていたのを何となく覚えている。その集団が活動休止し、改名したのがBLUEGOATSらしい。もっともラップ越しキスをやっていた当時のメンバーさんは一人も残っていないようだ。今のBLUEGOATSは前身集団の炎上商法は引き継がず、真っ当な路線で売れるのを目標にしている。掲げているのが結成から3年以内の横浜アリーナ公演。その期限が今年いっぱい。(より正確に言うと、2021年8月7日にTHE BANANA MONKEYSが活動休止、2021年11月7日にBLUEGOATSのデビュー公演が行われた。デビュー公演を始点にすると3年後は2024年11月7日になる。)年内に横浜アリーナに立つだの、横浜アリーナを満員にするだのと、折に触れてメンバーさんたちは決意を口にする。私がこの集団を知って一ヶ月しか経っていないし、現場に来たのは今日が初めてだ。彼女たちのことを十分に知っている訳ではない。しかしそれを踏まえた上でも、現在地と横浜アリーナ満員との間には大きな隔たりがあるのは明らかだ。細かいスキルがどうのの前に、この新宿Marbleに集まった百人程度?の客の乗り方、乗せ方も定まっていないように思えた。先述の春とヒコーキさんとのコラボ動画でBLUEGOATSのコンサートではコールやミックスは出来ないと聞いていたが、かといってその代わりとなるノリが明確にあるわけではない。地下アイドル界では定番のオタクによるキモい絶叫がない。オタクからの発声自体がほとんどない。アンコールですら手拍子のみ。初心者でも取っつきやすい反面、熱狂もない。じゃあおとなしく聞き入っていればいいのかというと必ずしもそうではなさそうで、メンバーさんはどうやら盛り上げたがっている。一曲目でチャンチーさんが踊れー!と叫んでいた。それがフロアの雰囲気と何となく噛み合っていない。ウチらはカッコいいグループだから地下アイドル現場のギャーギャー騒ぐノリはノーセンキュー(苦笑)的なスタンスなのかと思ったが、そこに振り切れていない感がある。演者側も、ヘッズ側も、どうしたいのか、どうしたらいいのか、やや迷いがあるように思えた。

一般的な地上アイドルでも地下アイドル(ライヴ・アイドル)でもない何か。BLUEGOATSさんという集団を何の箱に入れればいいのかが私には分からない。アイドルを称してはいるが、私の知っているアイドルとはちょっと違う。掴みどころのなさ。誰か一人を決めて“推す”ような集団なのか? BLUEGOATSさんが参加しているのはその競技でいいのか? 違うような気もする。彼女たち、運営、ファンのそれぞれが何を求めているのか、現時点の私ではピンと来ていない。だが、それが悪いと言いたい訳ではない。それこそがこの集団の面白さ、魅力なのかもしれない。曲は真っ当で興味深い。メンバーさんたちが書いたリリックをミックスやコールでかき消すのはたしかにもったいない。昨日の青山公演を配信で観たときにも思ったが、歌唱面ではダイナマイト・マリンさんとほんま・かいなさんが引っ張っている。他の二人とは差がある。特にソン・ソナさんは音程が取れていなくて音がフラットに近いときがある。ダンスはチャンチーさんが目をひく。身体のしなやかさ、笑顔。チャンチーさんは目で追ってしまう。全員から、ステージで自己を表現することに対する情熱を感じた。その姿は清々しかった。体力的には向上の余地があるように感じた。30数分間のコンサートでだいぶ出し尽くした感、走り切った感が出ていた。コンサートは楽しかったし、また観たいと思った(実際に3月10日に行くことが決まっている)。でも、今年中に横浜アリーナ? 満員? そのヴィジョンには首を傾げてしまう。動員能力的にも、スキル的にも、距離が遠すぎる。単純に楽曲も足りない。Spotifyにある曲をすべて足しても約61分しかない(他にも曲はあるっぽいが)。(ただでさえ曲が少ないのに、昨日と今日で投げ銭がJPY300,000を超えなければ新曲をお蔵入りするという罰を設定していた。誰も得をしない。意味不明だった。結果として目標金額は達成したのでよかった。)実務的な話をすると、今年中に横浜アリーナで公演をする場合、現時点で日程の目星くらいはつけておかないと間に合わないのではないだろうか。それは実際にやっているのだろうか? 夢ではなく、具体的な計画として進めないと間に合わない段階に来ているはず。困惑を隠せない私。もちろんメンバーさんも運営もファンも分かっているはず。その認知的不協和を皆さんはどう解消しているのだろうか? 私の中でずっとそのモヤモヤが残っている。期間を区切って解散させるための口実だとしか思えない。期限を決め、儚い夢を見る。達成できなかったら散る。それはそれで美しいが。終演後、係員の若い女性たちが箱を持ってステージに立つ。来場者は各自が金額を判断し、思い思いの金額を箱に入れる。私はJPY2,000を入れ、会場を後にした。私は知らなかったのだが、どうやらこの後に特典会をやっていたらしい。

2024年2月22日木曜日

篠原ののか生誕祭~ののか20歳だってよ~ (2024-02-05)

鶏もも肉600g程度を適当な大きさに切る。塩とコショウを揉みこんでしばらく放置。フライパンに油を少し敷く。点火。鶏もも肉を並べる。焼き目をつける。皮の方を重点的に。頃合いを見て肉を適当な皿に引き揚げる。フライパンに刻んだニンニク(2片)とほどほどに細かく刻んだタマネギ(中くらいを2個)とスライスしたマッシュルーム(2パック)を入れ、いい色になるまでかき混ぜながら弱火で炒める。さっきの鶏肉とトマト缶を二つ開けてそこに加える。コンソメのキューブを二つ。ローレルの葉っぱを一枚。エルブ・ド・プロバンスとパスタ&ピザのスパイス・ミックス(共にマスコット社)を適量。トマトを崩して全体を混ぜながら、いい感じの質感になるまで火を入れる。塩とコショウで味を調整する。ローレルを出して捨てる。コレでソースが完成。4食分。お好みのスパゲッティ(私の場合は栄養面を考え全粒粉)を茹でてフライパンに移す。そこにソースをかけて、火を入れながら混ぜ合わせる。ソースが麺全体に絡んだら皿に移す。お好みでハバネロ・ソース(マリーシャープス社)をかける。残ったソースは容器に入れ、熱が冷めてから冷蔵庫に保管する。(鶏もも肉を挽き肉に変えればミート・ソースになる。ミート・ソースをもっとおいしく作ろうと思えば他にニンジン、セロリ、赤ワインを使うなどやりようはあるが、かける費用・時間と味のトレード・オフになる。上記の作り方で十分おいしい。ミート・ソースの場合、チリ・パウダーを加えるとか仕上げにどろソースを少量だけ入れるのもいい。)引っ越しの一年半後に導入したガス・コンロで初めて私が作ったのがスパゲッティである。久しぶりすぎて細かい作り方を忘れていた。前回はタマネギが多すぎたので、反省を生かして改良した。うまく出来た。

ついこの間(9日前)ゆいチャンの生誕祭に行ったばかり。今日はののかチャンの生誕祭。正直、まだお腹いっぱいなんですケド。仕事的に月の中でも山場。そんな週の始まりの月曜日。気が重い。思うように進まない業務。膠着状態を明日に繰り越す。在宅業務を早めに切り上げラップトップを閉じる。スパゲッティを食い、洗い物を済ませ、濡れてもいい格好に着替え、家を出る。17時過ぎ。外は大雪。外出意欲を削がれるくらいの。これから積もっていくだろう。普通に考えるとおとなしく家にいるのが正解。しかしこの歳になってアイドルさんの現場に行く人間に普通という尺度は通用しない。行かないという選択肢はない。最寄り駅。当然のようにダイヤグラムは乱れている。渋谷駅着が予定よりも遅れる。Veats Shibuya。18時半開場、19時開演。会場に着いたのが18時40分。(途中のIKEAでソフト・クリームを食べようとしたら休業していた。あのJPY50のソフト・クリームは優れもの。しかもプラント・ベースっていう。)係員の紳士曰く、200番まで呼び出している。私はA170。もう入れる。かじかむ手。livepocketのチケット画面を見せるためにポケットから取り出すiPhone SE (generation 2)を地面に落とす。ストリートの修理業者に直してもらいながらこの電話を使い続けてもう少しで3年半になる。そろそろ機種を新しくしたい。だが、iPhoneに十何万円も出す気はない。

入場時に聞こえてきた係員同士の会話によると、前売り券分の呼び出しは200番で終わっていたようだ。最近の公演規模とチケットの売れ行きを見るに、この200人程度というのがどうやらKissBeeが安定的に集客できる人数のようである。今日のVeats Shibuyaは収容人数がGoogle検索によると700名。でも今日の客数でもスカスカという感じではなかった。仮に700人が本当に入ったら身動きが取れないと思う。適度に空間があって快適にコンサートを楽しむことが出来た。後ろの方でもまあまあよく見えたし、ステージが遠いとは感じなかった。いい具合の規模。小さすぎず、大きすぎず。皆さん、上着やカバンを足下やフロアの端っこに置いている。それが許される大らかさと治安の良さがある。篠原ののかチャンは大きな会場でコンサートをやって、遠すぎて全然見えなかったよと親に言われるのが夢だと涙ながらに語っていた。だが実際のところ、それを本当に成し遂げたいのであれば、もっと大きな事務所で活動をしないと非常に難しいのではないだろうか。小さすぎて見えないの基準をどこに置くかという問題はあるが、私が観客としてそれを感じたのは℃-uteさんの横浜アリーナ公演である。メンバーさんが豆粒のようだった。横浜アリーナの収容人数はGoogle検索によると17,000人。ふだん数百人を集めて興行をやっている会社が、どうやって急に1万人、2万人規模の公演を運営できるというのか。すべてにおいて勝手が違いすぎるだろう。私は業界関係者でも何でもないから内情は知らないけれども、競技が異なるんだと思う。大きけりゃいいっていうモンでもない。規模によってそれぞれの価値がある。(飲食店でたとえてみると私の言いたいことは分かると思う。)

コンサートを短く感じたが実際に短く、60分くらいだった(ゆいチャンのときは約90分だった)。本来起きるはずだったアンコールは、大雪の関係で時間を押すことが出来ないという係員氏の通達でやんわりと制止されてしまった。そこはちょっと残念だった。終演後の特典会。毎度ほんとうに辟易するのが、マジで何の説明もなく始まる。いま何をやっているのか(写メ? チェキ? セッション? それらの複数? あるいは別の何か?)、分からない。ゆいチャンの列で後ろにいた紳士(ゆいチャンのTO的な方)に、すみません、今って写メですか? と聞いてみたところ、たぶんいま時間ないんで、写メとかセッションとか一緒にやっちゃってると思いますと優しく教えてくれた。私は日系企業と外資系企業の両方で勤務経験があるが、特典会まわりの雰囲気や運用はHello! Projectが日系だとするとKissBeeは外資に近い。分からないなりに自分でやってみるなり周りに聞くなりして切り開いていかないと生存していけない。その代わり聞いたら教えてくれる。そしてガチガチに縛られるのではなくある程度の自由がある。時間が来たら終わりだと係員氏に言われるくらいで、会話の内容にいちいち聞き耳を立てられることはない。特典券2枚を使い、ゆいチャンと写メと30秒セッション。写メはNHK撃退シールでNHK党コール・センターの番号を指さしている立花孝志さんのポーズで撮影してもらった。セッションでは、

ゆいチャン:ねえそれ(私のiPhone裏に入れてあるステッカー)何なの?
私:NHK撃退シールって言って、
ゆいチャン:うん
私:NHKの集金人が来たらこの番号に電話したら追い払ってくれるの
ゆいチャン:へえ、そうなんだ。見たことないよ
私:たまに駅前で配ってるよ
ゆいチャン:どんな過激な思想の持ち主やねん

ゆいチャン:ののかみたいに(親から)愛されてみたいよね
私:ね
ゆいチャン:私の親は(生誕祭に)一回も来たことがないんだ
私:え、そうなんだ
ゆいチャン:病院の関係者でね。人がたくさんいるところに行けないとかで
係員氏:時間です

という感じだった。(前半の会話で記憶の容量を使い果たしたため、特に後半は正確な文字起こしではない。だいたいの内容はこんな感じだった。)間近で見るとゆいチャンはステージで見るよりもフィクション的な美しさがあってお人形さんのようだった。白人みたいだなと何となく思っていたが、そういえば今日の氏はカラ・コンを入れていたんだった(出典:氏のInstagramのストーリー)。目が青かった。それに言及できなかったのは悔いが残る。もちろん本日の主役、ののかチャンとも一枚撮りたかったが、氏には長蛇の列が出来ており、数十分はかかりそうだった。勢いを増していく雪。これは早く帰った方がいい。それに明日からの労働に備え、ゆっくり風呂に入って早めに寝たい。遺憾ながらののかチャンの列に並ぶのは回避し、足早に渋谷駅に向かう。ありがたいことに、いつも行っている近所の銭湯が通常通りに営業してくれていた。

2024年2月4日日曜日

藤井優衣生誕祭~デスドライブ~ (2024-01-27)

一平(いっぺい)氏:歌舞伎町すごい好きじゃないんだけどさ、新宿の。歌舞伎町の唯一好きなところはやっぱ大きい声で何か言っても誰も何も気にしないところなんだよな
ぐんぴぃ氏:でもマジでそう
土岡氏:これぐんぴぃも同じこと言ってた。歌舞伎町の
一平氏:えー?
ぐんぴぃ氏:本当にそう。歌舞伎町は(渋谷の)もっと上で、セーックス!って言っても誰も振り向かないの
一平氏:あー
土岡氏:まあもう、そういう街…
ぐんぴぃ氏:歌舞伎町がセックスの街だから、その、セックスって言葉が透明なの
一同:(笑)
(【シャッフル】完全同期のGパンパンダとトーク! 『春とヒコーキのグピ☆グパ☆グポ』、Nov. 14, 2023)

雑にモノで埋められて立入禁止になっている、かつてトー横キッズがたむろしていた一角。それでも付近に居場所を見つけて寝そべる浮浪者たち。パチ屋だかゲーセンだかの入り口で寝ていた浮浪者の腕を両手で掴んで立ち上がらせる警官。TOHOシネマズの上から顔を覗かせるゴジラをスマート・フォンで撮影する観光客たち。渾然と立ち並ぶ水商売の店舗。風俗。覗き部屋。無料案内所。そんな光景の一部にあるビルヂングの三階。新宿DHNoA(デノア)。未成年のメンバーさんもいるアイドル集団が公演を行う場所としては最悪の立地。いや、でもアイドル産業も大きな括りではこっちに属する。白か黒かの違いではない。濃淡の問題だ。アイドルさんにデレデレしながらその一方では水商売や風俗に従事する女性を見下し侮蔑するのは二重基準だ。気付いてくれ。推し、アイドル、特典会、レスといった用語による擬態を剥ぎ取った先にある自己矛盾(adidas履いたままJUST DO IT! by Moment Joonさん)、自己欺瞞。

1月19日(金)。20時半から始まった日本代表のどうでもいい試合に気を取られ、22時からチケットが発売したことを忘れていた。試合後に行った近所の銭湯で思い出した。帰宅後の23時26分に購入。整理番号A154。154人目。出遅れた。キャパをググったら200人。この番号じゃ、人に埋もれてステージもまともに見えない状態で後方彼氏面をするしかなくなるのか。残念。と思ったが、X(旧Twitter)を見ると優衣チャンの熱烈な支持者であられる某氏も購入が遅れ悪い番号になったと知った。氏がそういう状況であれば、私程度が変にいい位置をもらうのは場違いだ。なにせこの公演は優衣チャンの生誕祭である。新参者のライト層である私が出しゃばるべきではない。これくらいの番号がむしろちょうどいい。いや、本当はもうちょっと若い番号がよかったケド。

ジムでトレーニング。正月で二キロ増えた体重は二週間で二キロ戻った。あと三キロ減らす。引っ越しから一年半が経過し満を持して導入したガス・コンロを活用し低脂肪の食事を作っていく。(玄関の照明も購入・設置が完了し、格段に便利になった。)新大久保、淘湘記でランチ定食の高菜毛豆肉沫(高菜と青豆、挽肉炒め)JPY880。健康的でおいしい。おすすめ。大量の青豆。生の唐辛子。慣れないうちは咳き込むくらいからい。今日は15時からの優衣チャン生産祭の前に同じ会場で対バンが開催されている。そっちには行かない。あくまでライト層として、嗜む程度に。節度を持って。距離を取って。

近頃の私はアイドルさんを見ることに対するモチベーションが低下している。その上キャパ200人の会場で整理番号が154番と来た。今日ココに来ることをちょっとめんどくせえなと思っていた。実際にフロアに入ってみると思ったほど埋まっていなかった。中央付近は今からじゃステージがあまり見えないくらい埋まっていたが両端、特に左側はスカスカになっていた。スピーカーのすぐ前、2列目に行くことが出来た。ステージはだいぶ近い。コレで気持ちがちょっと回復した。白髪混じりの紳士に話しかけられる。誕生日記念のメッセージ・カードを集めているらしい。てっきり優衣チャン向けかと思い、話も聞かずにカードを受け取る。Happy 24th Birthdayと書いてある。私もライト層とはいえ優衣チャンがなったのは24歳ではなく23歳なことは把握している。念のためiPhone SE (2nd generation) で検索するがやはり23歳。そしてココに描かれている茶髪女性は優衣チャンではない。れなぱん(大江れなさん)に見える。しかし手元で検索するとれなぱんが24歳になるのは3月10日。まだ先。本当にれなぱんで合っているだろうか? 確信が持てない。結局、誰が正解でも事故にならない汎用的なメッセージを書き込み、紳士に渡した。その紳士に言われるがままに壁際に移動させられ写真を撮られた。いい写真だ、と近くにいたお仲間が言ってた。後から分かったが祝福の対象はれなぱんで正解だった。ごめんネ、れなぱん。なんか適当に書いちゃって。

開演しステージに現れたKissBeeさんの面々。思わず見惚れるメンバーさんたちの可愛さ。目の保養。Hello! Projectとの大きな違いはこうやって間近で公演を見るチャンスが格段に大きいこと。この距離で見るのは全然違う。アイドル・オタクのスイッチが入ってしまう。ただ敢えてぶち上がりはしなかった。スピーカーのすぐ前だったので聴覚の保護を優先し耳栓(THUNDERPLUG)をつけて過ごした。耳栓をつけると周りの声も自分の声も聞きづらくなるため、声を出して騒ぐのは難しくなる。地蔵にならない程度に身体を揺らし、有志の方々にいただいた白のペンライト(優衣チャンのメンバー・カラーは白)を振り、たまに声を出しながら観た。先月のゆいのののときのような異常絶叫はしなかった。1月8日(月・祝)に立川立飛でのリリース・パーティをちょっと冷やかしたのを除けば、KissBeeさん全員をちゃんと観るのは昨年10月16日(月)以来。人数が多けりゃいいってモンでは断じてないけど、メンバーさんが8人いれば8種類の魅力があるわけで、それを一気にギュッと楽しめるのはいいモンだね。私がいたスピーカー付近にいる紳士たちに対しては山崎瑛麻チャンが最も気を配っていた。端っこにいる紳士に向けて、スピーカーをくぐって顔を見せ、何度もレスを与えていた。メンバーさんの衣装が白い特攻服だったんだけど、山崎瑛麻チャンは何度か左側をはだけて中のタンクトップ(黒)と二の腕を見せてくれた。5月末が使用期限の特典券が私の手元に10枚ある。今日何枚か使わないといけない。瑛麻チャンと写メを撮りたいなと思った(結局撮らなかったが)。

かなり楽しいコンサートだった。テーマはDEATHドライブ。優衣チャン以外のメンバーさんはセット・リストをいっさい知らされていなかったらしい。イントロがかかって次の曲がコレだってメンバーさんが初めて把握する。慌ててステージ上の立ち位置を組む。その上トークなしの90分一本勝負。曲と曲の間もほとんどなく、容赦なく畳みかけられるハードな曲。そこに差し込まれる倍速の『どっきんふわっふー』。怒濤の波状攻撃。息を整える暇もないメンバーさんたち。困惑を隠さない。水を飲む時間もない。ついていけず時には音を上げるメンバーさんたちを尻目に、涼しい顔で歌い踊り続ける優衣チャン。優衣ーズ・ブート・キャンプ。メンバーさんたちはへばってグダグダになるんだけどそれがまた楽しくて。KissBeeさんってホントに毎回、趣向を凝らして面白いことをやっているなって感心する。可愛いと楽しいが合体すると中毒性がある。それこそがアイドルのコンサートの醍醐味。終演直後、いや〜楽しかった〜と近くの紳士がお仲間に話していたが、俺もBOY-KENとは同意見である。後半で二曲くらい披露したKissBeeNextさんの一人にonmzの面影を重ねてしまい(笑顔がどことなく似ていた)、しばらくぼーっと眺めてしまった。たぶん野崎来姫さんという方。(もちろん、私が今から氏を支持することはない。それなら本家onmzをまた見ればいいじゃないか。まだ現役なんだから。と言いつつも一回だけ写メくらいは撮って見たいという気持ちも少しだけある。)

特典会では鈴木みゆチャン(14)、篠原ののかチャン(19)、藤井優衣チャン(23)と写メを撮った。私は最近Vladimir Nabokovの“Lolita”を読み始めたのだが、みゆチャンはこの小説で言うところのnymphetsの年齢層にギリギリ収まっている。そんな氏と対面し横に並んで写真を撮り簡単に言葉を交わすのは貴重な経験だった。
Between the age limits of nine and fourteen there occur maidens who to [people] twice of many times older than they, reveal their true nature which is […] nymphic (that is, demoniac); and these chosen creatures I propose to designate as “nymphets” (Vladimir Nabokov, “Lolita”)
私が横に並ぶと(ポーズを)何にする〜?(ハートマークがつく口調)と聞いてきたののかチャンからはいい匂いがした。撮影時にグッと距離を詰めてくれてオジサンはドキッとした。優衣チャン以外のメンバーさんはフロアで、優衣チャン(とKissBeeNextさん)はフロアの外、受付付近で特典会をやっていた。赤いドレスに身を包んだ優衣チャン。ソロ写メ(係員氏がメンバーさん一人だけが写ったソロの撮ってくれる)を終えてから、二人での撮影へ。どんな背景やねんそれ、と優衣チャンが私に言ってくる。何のことかと思ったら私のiPhone SE (Generation 2) の裏に入れてあるNHK撃退シールだった。